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高知県四万十町/シティプロモーションから移住定住へ

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年9月16日更新

沈下橋

沈下橋


高知県四万十町

3094号(2019年9月16日) 四万十町長 中尾 博憲


四万十町の概要

2006(平成18)年3月20日に旧窪川町、旧大正町、旧十和村が合併して誕生した本町は、高知県の西部を東から西へ流れる「日本最後の清流」といわれる四万十川の中流域に位置し、東南部は土佐湾に面しています。町域は東西約43.7km、南北26.5km、総面積642.28㎢であり、そのうち林野が約87%を占めています。

集落の多くは、四万十川とその支流の河川沿いや台地部にあり、一部は土佐湾に面した海岸部にあります。町域の東部に位置する窪川地域は、標高230mの高南台地にあり約2、000haの農地が広がっており、また、中部の大正地域、西部の十和地域は面積のほとんどを山林が占めており、平野は四万十川と梼原川沿いに点在しています。

産業面では、古くから農林水産業を中心として発展してきた本町ですが、2015(平成27)年の国勢調査によると産業別就業者数(15歳以上)は、第一次産業が2、878人(31.8%)、第二次産業が1、465人(16.2%)、第三次産業が4、669人(51.6%)となっており、農業面では、生産量日本一のショウガやお米日本一コンテストで特別最高金賞を受賞した仁井田米をはじめ、ミョウガ・ニラ・ピーマンなど、また、水産業では四万十川流域でアユやウナギ・テナガエビなどが代表的産物となっています。

興津

興津

産業別就業者数の推移(国勢調査・農林業センサス)

産業別就業者数の推移(国勢調査・農林業センサス)

産業別就業者数の割合(国勢調査・農林業センサス)

産業別就業者数の割合(国勢調査・農林業センサス)

四万十町のまちづくり

本町では四万十町まちづくり基本条例のもと、「山・川・海 自然が 人が元気です 四万十町」をまちの将来像とする「第2次総合振興計画」に基づき、総合的かつ計画的なまちづくりを推進していますが、社会経済情勢や自然環境が大きく変化したことや、地方分権社会の進展に伴い、町の責任と役割は一層高まっていることから、町民と行政がまちの課題や将来像を共有し、協力して取り組んでいくことが重要な課題となっています。

本計画は、基本構想・基本計画の2つの柱で構成され、本町が目指す「まちの姿」を描くとともに、その実現のための基本方針を定めたものであり、計画期間は、基本構想が平成29年度から令和8年度までの10年間、基本計画が前期と後期の各5年間となっています。

本町の現状や課題等を踏まえ、まちの将来像を実現していくための方針を3つの視点からまとめ、それぞれの基本方針に基づく政策目標の実現に向けたまちづくりを進めています。各分野において様々な施策を行っていますが、それらの中から移住施策の取り組みについてご紹介いたします。

移住定住促進対策

日本の人口は、2008年の1億2、806万人をピークに減少傾向が続いており、国立社会保障人口問題研究所では、2048年には1億人を割り9、913万人となり、2060年には8、674万人まで減少すると推計しています。

高知県の中山間部に位置する本町においても、全国的な傾向と同様に少子高齢化が年々進み、人口減少は避けられないものとなってきています。

2006(平成18年)年3月の合併時における本町の人口は21、226人でしたが、2015年には17、325人まで減少しており、また、20代と30代の女性の人口は、2010年の1、295人から2015年の1、003人と年々減少しています。本町の合計特殊出生率は1.68と全国平均より高いものの、若年女性数が減少しており、それに伴い出生数も減少傾向にあるのが現状です。

このような状況を受け、本町では平成23年度より移住定住促進を町の重要施策として位置づけ、様々な施策を展開してきました。その結果、平成23年度から平成30年度までの8年間で582人の移住者を受け入れることができました。

移住定住促進対策

四万十町人口ビジョン

四万十町人口ビジョン


~移住施策の主な取り組み~
<移住に関する各種相談対応>

本町では、移住相談員を配置し年々増加傾向にある移住希望者からの相談(電話、メール、来庁、移住相談会等)に対応しています。


<空き家調査・空き家情報の発信>

平成26年度には町内全域で空き家調査を実施し、その結果、活用できる空き家が800件あることが判明しました。現在は所有者との交渉を行いながら、活用できる空き家の確保に努めるとともに、町内不動産業者と連携し、不動産業者の管理する空き家などについても情報共有しながら移住ポータルサイトに掲載し、移住定住希望者に対し空き家情報の提供を行い、受け入れ態勢の充実に努めています。


<お試し滞在施設の整備及び管理運営>

移住希望者にとって、新たな土地へ移り住むことは期待と同時に大きな不安があることから、短中期的に本町を体験してもらうことで、本町の魅力を直接感じてもらうとともに、不安を解消していただくことを目的に、平成24年度から「お試し滞在施設」の整備に着手し、これまでに3棟を整備してきました。これにより、お試し滞在施設の利用が移住に繋がったケースもあり、一定の効果がありました。

■お試し滞在施設の概要

1.入居対象者

 ・将来的に本町への移住を考えている人

 ・入居期間中、周辺の地域住民と交流が持てる人


2.入居期間

 1ヵ月単位(最長3ヵ月)

3.家賃

 月額10、000円(光熱水費は別途必要)

4.設備

 基本的な家具、電化製品、食器類、寝具等


また、自然にふれあいながら田舎暮らしを満喫したいという、移住希望者のニーズに応えるため「滞在型市民農園 クラインガルテン四万十」を整備し、利用者は入居期間中地域住民とふれあい、定住に繋がる有効な施設として活用しています。

クラインガルテン

クラインガルテン

 

■滞在型市民農園の概要

1.宿泊施設付貸し農園:22区画

[利用料金]

 Aタイプ(約280平方メートル)291、600円/1年

 Bタイプ(約300平方メートル)432、000円/1年

2.日帰り型農園:16区画

[利用料金]

 12、340円/1年


<中間管理住宅の整備及び管理運営>

空き家活用及び移住定住希望者の住宅確保の施策として、町が所有者から空き家を12年間借り上げ中間保有する、「中間管理住宅」の整備を平成26年度から行い、これまでに22棟を整備してきました。改修等に要する費用については国費、県費及び過疎対策事業債を活用し、一棟あたり約900万円をかけて改修(耐震含む)しており、利用者が安心して暮らすことのできる施設となっています。

また、町と所有者との契約終了後は改修された住居が所有者に返還されることから、空き家活用の有効な施策として、今後も実施していきたいと考えています。

■中間管理住宅の概要

1.入居対象者

 移住・定住希望者

2.入居期間

 2年間(※入居期間満了後新たな契約を結ぶことは可能)

3.家賃

 月額17、000~30、000円

4.物件数

 22件


<移住支援住宅の整備及び管理運営>

少子高齢化・過疎化が進む地方では、使用しなくなった公共施設の活用についても課題となっています。本町では、こういった施設を活用し移住希望者に提供することのできる移住支援住宅を整備しており、今後も公共施設の活用及び住宅確保の課題解決を促進するために、公共施設の有効活用を考えています。

■移住支援住宅の概要

1.入居対象者

 移住希望者

2.入居期間

 2年間

3.家賃

 2DK:月額23、000円(3戸)

 4LDK:月額38、000円(2戸)

4.物件数

 5件


<移住定住各種補助制度の充実>

「お試し滞在施設」や「中間管理住宅」などの整備を進める一方で、これらの施設を利用した方に本町へ定住していただくための施策として、各種補助金を整備しています。移住者の増加と同様、補助制度を活用する利用者も年々増加し、「移住から定住へ」といった流れが確立されてきました。

・移住促進家賃支援事業補助金

 15、000円×12月

・空き家改修費補助金

 上限3、263、000円 ※耐震化含む

・若者定住支援事業補助金

 上限100万円

・家族支え合い支援事業補助金

 上限100万円

 

移住相談件数等実績

移住相談件数等実績

お試し滞在施設利用実績

お試し滞在施設利用実績


<地域おこし協力隊制度の活用>

少子高齢化の進行が著しいことや、コミュニティの維持が困難となっている本町の課題を解決するために、平成24年度より地域おこし協力隊制度を活用しています。これまでに、46名の協力隊を採用し、任期を終了した30名のうち17名が定住しており、その家族を含めると54名の人口増につながっています。

また、本町においてはミッション型での任務となっており、地域振興や伝統技術継承のほか、観光振興に関わる協力隊は、移住者の目線で本町の多くの魅力を発信し、本町の認知度アップにも貢献しています。

四万十町地域おこし協力隊

四万十町地域おこし協力隊


<四万十町東京オフィスの開設>

平成23年度からの取り組みにより移住者は増加し、人口減少に歯止めをかける取り組みとして一定の効果を上げてきた一方で、移住者が増加することにより住宅が不足するといった課題がでてきました。

そこで、本町ではこれまでIターン者を増やす取り組みを中心に進めてきましたが、Uターン者を増やす施策についても推進していく必要があると考え、首都圏において、本町出身者及び本町に関心のある方のコミュニティの構築を図るとともに、本町に関する情報等を効果的かつ効率的に発信することのできる体制を整備することにより、本町への移住を促し、地域の活性化を図ることを目的として、平成30年6月に東京都千代田区に四万十町東京オフィスを開設しました。

■四万十町東京オフィスでの取り組み概要

・首都圏と本町を結ぶパイプ役

・本町のUターン促進を図るため、関係者同士の連絡補助

・さまざまな地域での成功事例の調査及びフィードバック

・首都圏での移住ニーズの把握及び関連施設との情報共有

・本町が実施するイベント情報などのスピーディーな発信

・将来的なアンテナショップ出店などの調査拠点

・首都圏ニーズのマーケティング拠点

・四万十町応援女子部の活動拠点


これまで述べたとおり、本町では移住定住に関する様々な取り組みを行い、ある一定の効果は出ていると考えています。しかしながら、今後も厳しい状況が続いていくことが予想されるため、これまで行ってきた取り組みの検証を行いながら効果的に施策を展開していきたいと考えています。