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香川県まんのう町/農業の町からものづくりの町へ~ひまわりオイル事業で地域活性化~

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年4月1日

ひまわり畑

ひまわり畑


香川県まんのう町

3075号(2019年4月1日) まんのう町長  栗田 隆義


まんのう町の概況

まんのう町は、香川県の中西部に位置し、讃岐山脈の山並を背景に水と自然にあふれた「癒しの町」です。町名の由来となっている日本最大級のかんがい用ため池「満濃池」は、讃岐の水瓶とも言われ、弘法大師空海が改修・監修し古くからこの地に多くの恵みをもたらし、その歴史的価値が評価され、世界かんがい施設遺産として認定されたところです。また最近は「ひまわりのまち」として県内でも有名となり、花を愛でる観光は勿論のこと、収穫した種からオイルをつくるなど、ひまわりを使った地域活性化に取り組んでいます。


●あらまし及び地勢

まんのう町は、平成18年3月20日に琴南町と満濃町、仲南町の3町が合併して誕生した町です。面積は194.45㎢、県下で3番目の広さを有しています。

町の北部、満濃地域と仲南地域北部には平野が広がっており、金毘羅山や、讃岐富士と呼ばれる飯野山を背景に、田畑や住宅地が点在する讃岐らしい景観を形成しています。一方、町の南部、琴南地域と仲南地域南部は、標高200~1,000mの讃岐山脈の山地帯で、県下で唯一の一級河川土器川や財田川の本支流に沿う谷あいに農村集落が形成され、中山間地農業が展開されています。町には「満濃池」をはじめ大小約1,000ものため池が点在しています。

弘法大師空海が修築したとされる「満濃池」

弘法大師空海が修築したとされる「満濃池」

1, 200年前に作られた中寺廃寺跡から眺める讃岐平野

1, 200年前に作られた中寺廃寺跡から眺める讃岐平野

●交通

公共交通機関は、民間バス路線が2線、鉄道はJR土讃線と、高松琴平電気鉄道琴平線の2路線が通っています。また本町と徳島県を結ぶ国道も、32号線と438号線の2線が、さらに県西部に向かっては377号線が町内を通っています。


●現況

まんのう町の人口は平成31年1月1日現在18,660人です。合併時の平成18年4月1日の人口が20,780人で、合併してから約2,100人減少している状況です。高齢化率は約36%で、年々高くなってきています。

町の基幹産業は、水稲や野菜栽培などの農業が中心ですが、兼業農家が多く規模も零細です。また琴南、仲南地域は山林が大半を占めており、担い手の確保と農地の集約化という課題を抱えています。

町内には、四国で唯一の国営公園「国営讃岐まんのう公園」があり、モンスターバッシュといわれる夏の音楽祭をはじめ、四季を通じて多くのイベントがあり、年間約50万人もの人が来園しています。また、県営の満濃池森林公園もあり、平成29年度には全国育樹祭が開催されました。さらに、県内でも人気の「うどん店」が数多くあり、一年を通して県内外から多くの人が訪れています。

以降、ひまわりを使った地域振興、取組について紹介します。
国営讃岐まんのう公園

国営讃岐まんのう公園

5月頃に見頃を迎えるルピナス

5月頃に見頃を迎えるルピナス

ひまわりの取組の動機、経緯

まんのう町は「ひまわり」を使った地域振興に取り組んでいます。始まりは、平成元年に遡りますが、合併前の旧仲南町帆山地区において、休耕地の転作作物として、観賞用ひまわりを20a栽培したのがきっかけです。当初は鑑賞用ということでしたが、鑑賞で楽しむだけでなく、何か商品にならないかという地元農家の方の発想などから、平成4年に搾油用の種に替え、収穫した種を業者に委託して搾り、道の駅などで販売しました。平成10年からは簡単な搾油機械を導入して、ひまわり油を自主生産し始めました。

平成12年に地元主体の「ひまわり祭り」が開催されたことを機に、多くの方が町内外から訪れるようになりました。その後、平成24年からは高オレイン酸の種類のひまわりに転換し、ひまわり油の加工や商品化、ひまわり祭りなどが評価され、平成25年に「豊かなむらづくり表彰事業」で農林水産大臣賞を受賞しました。

ひまわり祭りの様子

ひまわり祭りの様子

ひまわりオイル事業化へ

まんのう町のひまわり油製造は、当初から香川県の農業改良普及センターやJAなどとも協力して取り組んでいました。旧仲南町時代にも、この「ひまわり油」を特産品の一つとしていましたが、広報活動や販売促進という点からは、町での十分なPRも出来ておらず、認知度も低かったように思われます。

ひまわり油については、全国的にみると、北海道名寄市や北竜町、兵庫県佐用町などが有名です。平成28年には兵庫県佐用町や島根県出雲市などとともに、第1回ひまわりオイルサミットを開催し、輸入が国内供給の大部分を占めている現状で、まんのう町が希少な国産ひまわり油の産地であることを宣言しました。そういった中、国の地方創生の流れを受けて、特産品として中途半端な状態で、生産者の高齢化が進み、後継者の慢性的な不足に陥っているひまわりやかりん、薬草などの品目を中心に六次産業化を進めるなど、町では農林業の振興を中心に、次の3点から積極的に事業展開していくことにしました。

1点目が、拠点の整備です。合併後に廃校となった小学校の校舎をリノベーションして、ひまわり油の加工から瓶詰めまでを行う、作業効率を高めたプラント施設として整備しました。併せて、かりんや薬草の加工などの拠点整備も行い、すべて含めた形で「ものづくりセンター」として平成30年に稼働し始めました。

ものづくりセンター

ものづくりセンター

さらにこの施設は、原料の保冷保管から二次・三次加工、袋詰めや瓶詰め、販売用の在庫管理などを行うことが出来るよう整備しており、将来的には展示販売も行えればと思います。

2点目はブランディング化です。平成28年度から地元香川県の㈱百十四銀行と連携協定を提携し、行員で映画監督をしている香西志帆さんをアドバイザーとして迎え、「ひまわりのブランディング化」を進めています。ブランディング化にあたって、まずはひまわりの花畑が観光資源となっている点に着目して、「ひまわりならまんのう町」、「まんのうひまわり」というワードを広めることをコンセプトに「まんのう町のひまわりちゃん」という朝ドラ風ネットドラマを撮影し、昨年の春に上映会を開催しました。

また、ひまわり油も今までのボトルやラベルを一新し、名称も「ひまわりオイル」という呼び方に変えたところ、ネットドラマの影響もあり、各種メディアに度々とりあげられるようになりました。さらに「ひまわりオイル」は、平成30年度の香川県産品コンクールでは努力の甲斐あって、最優秀の県知事賞を受賞することができました。

3点目は人です。今までは地元農家の方が交代でひまわり油の搾油から瓶詰までを細々と行っていました。しかし、栽培面積も拡大し、収量も増え、搾油量も増えたにもかかわらず、依然として後継者不足は改善されていませんでした。そこで、平成27年に総務省の地域おこし協力隊の制度を活用して、やる気のある人材を採用し、新たな風を起こそうとしました。播種から収穫、搾油、ブランド化までを地元農家の方と一緒に行うことを目指していましたが、地方創生による拠点整備やブランディング化などの流れを受けて、当初予想していた規模以上のものとなり、運営方針の違いから、最初の隊員は2年で退任してしまいました。現在は新たに隊員を募り、3名体制でひまわりオイルの製造や販売に取り組んでいます。


まんのう町のひまわりちゃん ひまわりオイル

まんのう町のひまわりちゃん(左)とひまわりオイル(右)

地域おこし協力隊

地域おこし協力隊

現状と今後の課題

さて、以上のように、町ではひまわりを中心としたものづくりの事業が進んでいますが、特にひまわりの振興については、多くの課題を抱えています。

まずは、栽培農家と取りまとめをしている方々の高齢化です。実際に転作作物として栽培を始めたひまわりも、一定の収入が見込めることを前提に事業として取り組んでいますが、特定の高齢者の方が農作業の合間に苦労して各生産者の収量を取りまとめているという現状です。残念ながら次を担う後継者の育成ができていないこともあり、人材の確保は今まさに現場で必要とされている喫緊の課題となっています。

次に、ひまわりオイルの製造販売です。当初は農業生産法人で取り組んでいましたが、組織の高齢化など自主運営が難しくなり、現在は第三セクターが替って運営を行っています。しかし、販売ルートが確立しておらず、経済的な基盤が不安定なまま進んでいるような状況です。町をあげての特産品化、ブランド化ということもあり、行政が携わる部分も多い中、製造販売においてもどこまでが民間でどこまでを行政が受け持つのかといった、半官半民事業特有の責任の所在が不明確となっているところもあり、今後事業を推進していく上で、リスク分担を明確にしていくことが必要となってきます。

最後がひまわり関連商品の開発です。現在、関連商品として、刷新されたひまわりオイルは勿論のこと、ドレッシングやひまわり牛のコロッケなどがあります。過去にはひまわりオイルを使った石鹸などもありました。また、搾油した後に出る油粕を飼料にして牛に一定量を与えることでうまれた「ひまわり牛」もあり、県内のスーパーでも美味しいと好評です。油粕は田畑の肥料としても利用価値があり、無駄にするものがほとんどない仕組みづくりができつつあります。しかしながら、販売戦略上、オイル単体での勝負はなかなか厳しい面もあることから、新しいドレッシングの開発や、オイルを使ったお菓子や料理、さらにはひまわり畑やひまわりの花自体を観光資源として活用するため、JR四国などの企業ともコラボした企画を検討し、売れる商品開発に向けて力を入れているところです。

地元の農家あっての地域活性化というところではありますが、様々な業種の企業や地域住民とコラボすることで新たな発想が生まれ、みんなでひまわりをブランド化することに取り組んでいます。毎年7月には100万本のひまわりの花を咲かせて皆様をお待ちしていますので、是非ともまんのう町へお越し下さい。