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沖縄県北中城村/女性長寿日本一と世界遺産中城城跡の村

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年8月27日

ひまわりまつりin北中城

ひまわりまつりin北中城


沖縄県北中城村

3051号(2018年8月27日)  北中城村長 新垣 邦男


美寿きたなかぐすく

北中城村は、亜熱帯性気候、咲き誇るカラフルな花々、のどかな田園風景に囲まれ、女性の平均寿命89歳、女性長寿日本一の村です。全国平均寿命のランキングが5年に一度、厚生労働省から発表されますが、今回(2018年)も当村が女性長寿日本一に輝きました。15年、3回連続のトップとなり「長寿の村」として全国から注目されています。 

北中城村は、那覇空港から北東へ16km、那覇から車で約40分の沖縄本島中部に位置します。周囲は沖縄市、宜野湾市、北谷町と市街化された市町に隣接する一方で、世界遺産中城城跡を挟んで中城村に隣接しています。面積は11.5haで県内41市町村のうち5番目に小さな村ですが、人口は約17,000人で、今後は米軍跡地の土地区画整理事業が進むと約2,800人の増加が予想されています。

どこの地域にも「ミス◯◯」という地元の若い女性を起用したキャンペーンガールがいますが、当村では80歳以上の健康で明るい女性を「美寿きたなかぐすく」として毎年3人選出し、村の行事やPR事業で活躍してもらっています。時にはPR活動中でも買い物に熱中してしまうなどの愛嬌があり、また周囲もそれすらも笑って許してしまう南国のおおらかさがあります。

南国沖縄では、1月に桜が咲き、同時にヒマワリも咲きます。この時期に沖縄を訪れた方は、沖縄本島北部で「桜まつり」、当村で「ひまわりまつり」と、同時に2つの花まつりが味わえます。

味わうと言えば、アーサ。日本名では「ヒトエグサ」です。旧暦1月から3月の当村の海岸線沿いは、まるで緑の絨毯が敷かれたように鮮やかなグリーンに覆われます。アーサ麺、アーサスープ、アーサふりかけなど多様な加工商品も取り揃えており、アーサ収穫の拠点である熱田漁港内にあるアンテナショップ「しおさい市場」で販売しています。海の空気を吸いたい方は、同ショップにて、アーサの沖縄風天ぷらなどご当地グルメが楽しめます。

美寿きたなかぐすく交代式

美寿きたなかぐすく交代式

世界遺産、文化遺産、城ヨガ

沖縄においても、インバウンドと呼ばれる外国人観光客が急増し、2020年には那覇空港の第二滑走路が開港し航空機の離発着枠が大幅に増えます。また、沖縄本島東海岸の与那原・西原地区に大型MICEが計画され今後は、コンベンションが盛んになります。

当村では近隣の中城湾港にクルーズ船が寄港し、近隣市町村と連携して受入れを行っています。当村の地方総合戦略の柱でもある観光振興を図り、これをいかに仕事へ繋げていくかが今後の村行政の大きな課題です。

観光の目玉のひとつとなる中城城跡は、標高約160mの石灰岩丘陵上に築かれ、2000年には「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として世界文化遺産に登録されました。さらに2020年には、世界遺産登録20周年を迎えることから、文化関係者もイベントに向けて今から準備を進めています。

史跡指定範囲は北中城村と中城村にまたがり、両村共同で管理運営しています。

城の創建年代は不明ですが、近年の発掘調査の成果からは、石積みによる築城は14世紀後半頃からと考えられています。城の郭(城壁などで区画した平場)は、梯子状に連なるように築かれており、1853年にアメリカのぺリー提督率いる艦隊が来琉した際に、その築城技術の高さを賞賛し、当時の城の絵画や測量図を残しています。

その城跡の活用として、石積みの城壁を正面に見据えた芝生の上で、「城ヨガ」を2015年より開催しています。左に太平洋、右に東シナ海が見渡せるロケーションの下、朝日を浴びての朝ヨガ、月夜の明かりで満月ヨガを行っています。これまでに17回開催していますが、毎回100~200人前後の参加者があり好評を得ています。「世界遺産」と「ヨガ」を組み合わせたコンテンツは、県外、外国人観光客からの反応も良く、今年は香港にて海外プロモーションも行いました。

標高約160mの丘の上に広がる中城城跡

標高約160mの丘の上に広がる中城城跡

世界遺産で城ヨガ

世界遺産で城ヨガ

また、毎年夏には、各自治会の若い青年たちを中心とした伝統芸能エイサーの演舞を観ることができる「青年エイサーまつり」も城跡で開催しています。

一方、城周辺の旧城下町には約280年前に建てられ、国指定重要文化財にもなっている上層農家の中村家住宅があります。奇跡的に沖縄戦の戦火を免れたこの住宅は室町時代の日本建築と中国建築様式を併せ持つ貴重な文化財であり、年間約2万6千人が訪れています。

中城城跡、中村家周辺の城下町、大城区は、豊かな水源に恵まれ「平成の名水100選」「歩きたくなる道500選」などに指定されており、のどかな町並みは、琉球王朝時代の雰囲気を残しています。

ゆっくりと歴史に触れたい方は中城城跡を中心に散策いただき、イベント・スポーツ・ショッピング等を楽しみたい方には、アワセゴルフ場跡地に建設された「イオンモール沖縄ライカム」を中心としたエリアをお薦めしています。 

青年エイサーまつり

青年エイサーまつり

「歩きたくなる道500選」大城区

「歩きたくなる道500選」大城区

軍用地跡地にリゾートモール誕生

アワセゴルフ場は、沖縄戦後、米軍に強制的に接収され、米軍のゴルフ場として利用されてきた場所です。2010年に返還され、土地区画整理事業による跡地開発で、イオンモール沖縄ライカムが建設されました。「ライカム」の名は、沖縄戦終結後、在琉米軍の統率・指揮を目的として置かれた「RyukyuCommand(琉球軍司令部)」の略称「Rycom」に由来します。戦後、この名残からライカム交差点(イオンモール沖縄ライカム西の交差点)や、ライカム坂などの俗称を持つ地名が残っています。

当イオンモールはリゾートモールのコンセプトの基、外観は首里城をイメージし、吹き抜けの大空間には、容量100tを超える大水槽を備え、色鮮やな熱帯魚など約25種1,000尾が回遊しています。開業1年で1,300万人の誘客実績を挙げています。

今秋には、イオンモールに隣接した村民体育館と民間スポーツクラブが完成します。文化・芸能・スポーツ・展示会等のイベントを開催して集客できるまちづくりを目指しています。

この他、村内には在日米軍の軍人やその家族のために建設された「外人住宅」をリノベーションした約30店の個性豊かなカフェが点在します。'60年代アメリカの雰囲気を残した外人住宅は、地元客、観光客からも人気があり、観光ガイドブックで「北中城カフェ」特集が組まれるほどです。

また若い女性を中心に、「Instagram」などのSNSで情報が拡散し、北中城村の重要な観光資源として認知されています。  

外人住宅カフェ

外人住宅カフェ

訪れても安心な村に

アワセゴルフ場跡地開発のもう一つの大きな目的は、災害時の大規模避難拠点とすることです。当地区は標高が約100mあり津波の心配はありません。地盤も強固な岩層です。2016年4月には当地に免震構造を有し、ヘリポートと最先端医療設備を備えた中部徳洲会病院が開院しました。当院は一階にトリアージに対応したスペースを確保し、災害時の医療拠点とした設計がされています。道路向かいのイオンモールには、食品・飲料・物資が大量に納品されています。イオンモールは東日本大震災の教訓で天井からの落下物に配慮した設計がされています。4,000台の駐車場は救援部隊の前線基地に十分な広さがあります。

隣接する村民体育館は、ボランティアやDMAT(災害派遣医療チーム)の活動や物資の仕分けに、さらにその横に隣接する民間スポーツクラブではプールの水や浴室が役に立ちます。病院、イオンモール、村民体育館は道路の他に歩道橋も結ぶ複数動線を確保する計画です。これらの施設管理者と村とは基本協定を締結しており、今後は細かい協定内容を詰めていきます。

災害時のエネルギーの確保は、電力会社系列によりLNGサテライト施設が建設され、被災後3日間の燃料が常時備蓄されています。施設の建設と並行しながら、ソフト面である観光危機管理計画の策定、施設完成後は各施設共同での避難訓練なども行っています。  

北中城村が進める災害に強い町づくり

村づくりの方向性

当村では開発により生活の利便を図り、賑わいを創出するエリアと、歴史を大切に保存するエリアに分けています。主に前者はイオンモールを中心としたアワセゴルフ場跡地、後者は中城城跡を中心とした地域です。当村の面積の14.2%を米軍基地が占めているため、返還された跡地をどう活用するかはとても重要な課題となります。

当村のもう一つの柱である農業は、現在生産額も営農者も減少し、耕作放棄地は増加している厳しい状況です。一方で、イオンモールのレストラン街から出る一日約1.5tの生ゴミは村内で処理しきれないことから村外へ費用をかけて搬出しています。村内に生ゴミの堆肥工場を建設し、耕作放棄地へ鋤込むことで農地の復活を図り、農地バンク制度により就農意欲のある者に農業を興してもらうことを検討しています。また、堆肥化に伴うガスでの発電と熱の利用についても調査を進めています。将来的には、安全安心な農作物を加工・販売し、新たな特産品を開発し、観光振興にも繋げたいと考えています。

村おこしには人材が必要で、当村では2016年度より地域おこし協力隊を受入れており、1人が農業振興に、5人が観光振興に活動しています。自治体も地方創生により、持続的発展に向けた競争社会に突入した今、人材の確保が重要となってきています。  

おわりに

当村のように小さな自治体は、余程思い切った施策を打っていかないと埋没してしまうと考えています。よって、これからも積極的に攻めていく方針です。ぜひ注目いただき、機会があれば足を運んでいただけると幸いです。