利根川河川敷(関東の富士見百景)
茨城県境町
2985号(2017年1月9日) 境町長 橋本 正裕
境町は関東平野のほぼ中央、首都50㎞圏内にあり、茨城県の南西部、県都水戸市まで約70㎞に位置している緑豊かな田園都市です。町の南西部を利根川が流れ、その利根川をはさみ千葉県に面し、周囲は古河市、坂東市、五霞町、千葉県野田市に隣接しています。
人口は約25,000人、基幹産業は農業で、さしま茶、レタス、ねぎ、トマト、梅山豚などが特産です。
境町は利根川と江戸川の分岐点に位置していることから、古くは江戸と奥州を結ぶ交通の要衝として栄え、坂東太郎といわれる利根川と栄枯盛衰をともにしてきた「河岸のまち」です。
関東の富士見百景に選ばれた利根川河川敷の境河岸は、春にはたくさんの菜の花で覆われるなど、自然に恵まれた、水と緑の豊かな住みよい町です。
平成27年3月には、圏央道境古河ICが開通し、都市や中部、関西方面へのアクセスも容易となり、大幅な時間短縮や大規模な物流移動が可能となりました。
このような中、地方創生により観光施策子育て施策などに注力した結果、交流人口が増加し、さらには、近年減り続けていた定住人口も、ようやく増加に転じ、昨年4月からは4か月連続で社会増となっています。
境町では、自主財源を確保するため昨年度から「ふるさと納税」に本格的に取り組み、ふるさとを応援いただく皆様の気持ちにお答えするべく、日々お礼の品の充実に努めています。その結果、平成27年度は茨城県内で1位となる8億6,000万円の寄付をいただくことができました。
そして、昨年4月に発生した熊本地震に際しましては、全国に先駆けて、ふるさと納税の代理受付を行い、被災地への新たな支援方法としてマスコミ等から大きく取り上げられました。
また、境町はサイクリングを活用したまちづくりを進めており、茨城県が国の地方創生加速化交付金を活用し、県内市町と連携して進めている「水郷筑波・サイクリングによるまちづくりプロジェクト」にも参加し、地域住民の健康増進を県と一体となって推進しています。
そして、今回、人気TVアニメ「弱虫ペダル」とコラボレーションしたまちづくりの取組についてご紹介させていただきます。
境町では、利根川河川敷を新たなテーマパークとして位置づけ、昨年7月にリバーサイドパークをオープンしました。パークでは現代風に復元した高瀬舟リバークルーズ、セグウェイオフロードツアー、各種アトラクション、さらには手ぶらで楽しめる本格アメリカンスタイルバーベキュー施設等を用意し、民間業者と連携して集客を図っています。
また、アメリカンスタイルバーベキューを運営する民間業者が、「道の駅さかい」の敷地内にサイクリストの休憩所として、自転車(ロードバイク)の貸し出しやシャワー設備も備える、サイクリングステーション・サイクリングカフェ「CORG'S」をオープンしました。
レンタサイクルやシャワー設備を備えたカフェ「CORG’S」
CORG'Sメニューも充実
「道の駅さかい」に隣接する河川敷の堤防には、全長約27㎞の利根渡良瀬サイクリングコースが整備されています。晴れた日には富士山が見え、田園風景と雄大な利根川を眺めながら楽しんでいる多くのサイクリストで賑わいを見せています。
境町では以前から、このサイクリストを「道の駅さかい」や「リバーサイドパーク」に集客し、さらには街中に呼び込み、地域の活性化を図るための方法を模索していました。
セグウェイで自然を楽しみます
神奈川箱根町や茨城県大洗町がアニメによる聖地化によって、観光客の誘致や地名度の向上に成功している事例を参考に、境町では人気アニメとコラボレーションを行うことで、地域住民がアニメファンを受け入れ、町のPRと集客につながるものと考えました。
境町は国内有数のサイクリングロードに隣接し、サイクリングステーション・サイクリングカフェもオープンしたばかりです。そこで、これらと親和性のあるコンテンツとして、コミック売上1,400万部を超え、アニメ化や映画化もされている、大人気自転車漫画「弱虫ペダル」(渡辺航原作、出版元・秋田書店、アニメ制作・トムスエンタテインメント)を候補としてあげ、民間業者と連携しコラボレーションの折衝やライセンス契約を進めることにしました。
「弱虫ペダル」と町のコラボスムージー
第1期:2016年5月21日(土)~6月19日(日)、第2期:7月25日(月)~8月31日(水)の2期に分けて、「弱虫ペダル」とのコラボレーションを実施しました。
内容としては、「境町」を自転車に模したオリジナルロゴを作成し、「弱虫ペダル」×「境町」のコラボレーショングッズやサイクリスト向けのコラボレーションスムージーを作成し、アニメ制作会社・秋田書店の監修を受け、期間限定にてサイクリングカフェ「CORG'S」で販売いたしました。
また、第2期では、グッズのバリエーションを増やすとともに、現役プロ競輪選手と元プロ競輪選手を招聘し、ワットバイク(プロアスリートも使用するトレーニングマシン)を使った初心者、経験者との交流イベント、自転車の乗り方(ライディングポジション)講座などを実施しました。
みんなでワットバイクにチャレンジ
全長約27㎞の利根渡良瀬サイクリングコースには、地点ごとに「弱虫ペダル」のキャラクター看板を設置し、参加者がサイクリングロードを楽しみながら走れるような施策や、スタート及びゴール地点では記念撮影のできるキャラクターの顔出しパネルを設置しました。
サイクリングコースのスタート地点(左)
サイクリングロード15㎞地点(中央)
サイクリングコースのゴール地点(右)
さらに、記念写真をSNSで拡散した人には、「CORG'S」でドリンクをプレゼントするといった取組を行いました。
メディアへの効果としては、秋田書店が発行する「週刊少年チャンピオン」に本コラボレーションが掲載されたことや、各種新聞、ウェブメディアへの掲載など大きな反響がありました。
大人気の「弱虫ペダル」コラボグッズ
特に土日のサイクリストの利用率が増加し、コラボレーション実施後は、「境町」でのツイッター発言回数が8倍になるといった波及効果がありました。
今後の課題としては、元プロ競輪選手の監修による、より安全で利用しやすいサイクリングロードの環境整備や、SNS、雑誌、テレビ等を活用した広報戦略でサイクリストや一般客等のさらなる集客と、前橋市~境町~葛西までの複数の市町を横断する関東一のサイクリングロードの設置を目指していきます。
おわりに、著名なコンテンツとの第2、第3段のコラボレーションも検討し、新たな発想や施設等の整備によって、境町が皆様に喜んでいただける魅力的な場所となっていけるよう、まちづくりに全力で取り組んでまいりたいと考えています。