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福島県棚倉町/地域資源を活かした地方創生

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年5月23日
棚倉城跡の写真

棚倉城跡


福島県棚倉町

2960号(2016年5月23日)  棚倉町長 湯座 一平


棚倉町の概要

棚倉町は、福島県中通りの南部に位置する城下町です。

町内を南北に国道118号線、東西に289号線が走り、面積は東西に19㎞、南北に17.4㎞、159.93k㎡あり、人口は、約15,000人の町です。また、栃木県、茨城県に接する本町は、 気候も関東地方に似ており、一年を通して積雪の少ない、住みやすいまちです。

面積の約7割を森林が占める本町は、茨城県を経て、太平洋に注ぐ「久慈川」の源流域で、八溝山をはじめ、豊かな自然が残ります。環境省の重要里地里山500選にも名を連ね、春は、桜、新緑が町内を彩ります。農業も盛んで、米、イチゴ、ブルーベリーなど、季節ごとに美味しい農産物が採れます。

棚倉町の歴史は古く、1万年以上前の生活を今に伝える遺跡が残り、江戸時代には城下町として栄えました。

平安時代の史跡では、東北地方では珍しい山林寺院跡「流廃寺跡」が発見されています。平成26年3月に、国指定史跡となった流廃寺跡からは、全国でも珍しい、金銀の装飾(象嵌)を施した鉄剣が出土し、話題となりました。

戦国時代には、伊達氏、佐竹氏、白川結城氏が勢力を競い合ったこの地域には、山城の赤館城跡が残ります。

江戸時代には、「棚倉藩」として、立花宗茂公を初代藩主に、9家17代の藩主がこの地を治めました。2代藩主丹羽長重公が築いた「棚倉城」は、戊辰戦争で焼失しましたが、現在も町の中心部に堀や土塁の城跡が残り、桜、紅葉の名所として親しまれています。

明治の廃藩置県、昭和30年の1町3ヶ村の合併を経て、現在の棚倉町となりました。

赤館城跡より望む町の風景の写真

花咲く街(まち)赤館城跡より望む町の風景

東北の小京都 棚倉

多くの文化財、史跡が残る本町では、昨年10月、全国の自治体等で構成する全国京都会議に加入し、東北の小京都としてPRしています。

本町には、棚倉城跡、赤館城跡のほかにも、歴史ある寺社仏閣が残ります。

八槻都々古別神社の写真

都々古別三社の1つ、八槻都々古別神社

特に、神社については、格式の高い神社である一ノ宮が町内に二社あり、馬場都々古別神社(陸奥一ノ宮)、八槻都々古別神社(奥州一ノ宮)は、文化財としても注目されています。馬場都々古別神社は、平成26年10月、本殿が国の重要文化財に指定されました。馬場都々古別神社の本殿は東北地方では珍しい、桃山期の建築を今に伝えます。八槻都々古別神社には、鎌倉時代から伝わる「御田植祭」が継承されており、国重要無形民俗文化財に指定されています。

秋色の馬場都々古別神社の様子の写真

秋色の馬場都々古別神社

御田植祭の様子の写真

御田植祭

また、寺院には、弘法大師が東北行脚の途中に護摩壇を築き、八溝山系に住む悪鬼を調伏祈願したと言われる山本不動尊があり、春は山桜やシャクナゲ、秋は紅葉の名所となっています。

このほかにも、寺社仏閣、城下町らしい街並み、茶の文化に欠かせない「お菓子」屋が残る街並みは風情があり、散策するのも面白いです。

山本不動尊の写真

山本不動尊

歴史資源を観光産業に

緩やかに人口減少が続く本町では、豊富な歴史資源を活かした観光産業を活性化させる取組を行い、交流人口の拡大を図っています。

一つ目として、「棚倉ふるさと講座」の実施です。住民の方に町の魅力や歴史を知ってもらい、棚倉町を好きになってもらうとともに、町外からの観光客の方への「おもてなし」の気持ちを醸成することを目的に、講習会やフィールドワークを開催し、多くの町民の方に参加いただいています。また、平成27年度からは、小学生を対象とした「子どもガイド育成講座」も開催しています。

二つ目として、ふるさと検定の実施とふるさとガイドの育成です。ふるさと検定には、「棚倉ふるさと講座」を受講した方だけでなく、町内外から多くの方に受験していただいており、ふるさと検定の1級の合格者の皆さんには、ふるさとガイドとして、祭りなどのイベント開催時に、観光客の方へ町の見どころを伝えていただいています。

三つ目の取組として、全国京都会議への加入です。現在、町では、新しく観光施設を作るのではなく、街並み、寺社仏閣、史跡、伝統、文化等の「古(いにしえ)」からある歴史資源を活用し、町の観光の活性化に取り組んでいます。

リゾートスポーツプラザ ルネサンス棚倉

平成2年にオープンした、「リゾートスポーツプラザ ルネサンス棚倉」は、30面のテニスコートやプール、ジム、乗馬等のスポーツ設備、温泉、会議室、 宴会場などを備えたリゾート型多目的宿泊施設です。

これまで学生合宿や事業所の研修など団体の方を中心に利用いただいていましたが、平成23年の東日本大震災に伴う、東京電力福島第1原発の事故による風評被害により、来客数が大幅に落ち込んでいます。

放射能への不安はいまだ払しょくされておらず、一度離れてしまったお客様に戻って来てもらうことは並大抵のことではなく、事故以前に比べて来客数が4割程度しか回復していない状況が続いています。しかし、実際にお越しいただいたお客様には、ここ「棚倉」が安心であることを理解していただいています。今後も引き続き地道な活動を積み重ねていきたいと考えています。

この様な状況の中で、平成27年度より地方創生関連事業で、地域資源であるルネサンス棚倉を核としたヘルスツーリズムとヘルスケア産業の創出に取り組んでいます。

スポーツ・リゾート施設「ルネサンス棚倉」の外観写真

スポーツ・リゾート施設「ルネサンス棚倉」

棚倉町の地方創生

本町では、昨年4月に、国の地方創生人材支援制度を活用して、福島大学の准教授を地方創生アドバイザーに任命しました。地方創生アドバイザーには、「棚倉町まち・ひと・しごと創生総合戦略」策定に向けた助言をいただくとともに、町民一人ひとりが主体的に健康づくりに取り組み、生涯を通し快適で充実した暮らしができる「健康自治のまちづくり」の中核を担っていただいています。

地方創生アドバイザーをきっかけに、産学官の連携を強化していくことを目的に福島大学と相互友好協定を締結し、地域産業の振興や健康づくり、教育といった分野での連携を進めています。

また、昨年10月に策定した「棚倉町まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中では、高齢者の健康づくりを重点的に推進し、元気な高齢者を育成し、高齢者が活躍できる地域づくりを進めることとしています。

健康づくり事業を通して、健康関連事業に関わる人材を育成し、さらには、ヘルスケア産業の創出やヘルスツーリズムへつなげていく戦略を打ち出しています。

①地方創生にむけた健康づくり事業

本町ではこれまで、町内の商店街で使用が出来るポイントカードの「たなちゃんポイント」を活用し、健康づくり事業や健診事業を受診した際にポイントを付与しています。また、住民と協働で健康づくり等の事業を行っていくために、高齢者サポーターや認知症サポーターを養成してきました。

今回の地方創生関連事業でも、高齢者が生涯活躍できる地域をつくるため、「認知症機能低下予防」について、大々的に取り組んでいます。

一例を挙げますと、ルネサンス棚倉を利用した「いきいき健康脳活教室」を実施しています。この教室には多くの高齢者の方々に参加いただき、参加者の方の認知機能の改善の効果がみられています。 

また、この教室を今後、自立的に運営し、ヘルスケア分野での雇用や産業の創出に結びつけていくことを目的として、サポーターやトレーナーの養成に取り組んでいきたいと考えています。特に、サポーターについては、昨年度から「いきいき脳活サポーター養成講座」を開催し、145名のサポーターを養成しています。

今後は、健康づくり事業でサポーターの方が主体的に活躍できる環境づくりを行い、住民との協働による健康自治のまちを構築していきます。

②ルネサンス棚倉を核としたヘルスツーリズム事業

本町では、地域の活性化とルネサンス棚倉の再興を目的に、昨年度からヘルスツーリズム事業に取り組んでいます。

具体的には、ルネサンス棚倉を利用し、健康関連企業と連携して最良の「健康」、「食」、「睡眠」を提供するもので、脳と体のアンチエイジングを目的したヘルスツーリズムのプログラムを構築し、ツアーを実施しています。今後アンチエイジングだけでなく、認知機能低下予防や生活習慣病改善のプロクラムを追加し、「ヘルスツーリズム」を町の成長産業の一つに位置付け、育成を図っていきます。

ヘルスツーリズムの様子の写真

ヘルスツーリズムの様子

いきいき健康脳活教室の様子の写真

いきいき健康脳活教室

終わりに

本格的な地方創生への取組みは、平成27年度から始まったばかりです。

歴史資源を活かした観光事業やヘルスツーリズムにより交流人口を増やすとともに、今後は二地域居住や定住事業に取組み、町の人口減少の抑制に向けた戦略を進めていく予定です。

最後に、町では、自立と協働によるまちづくりを行っています。地方創生においても、地域住民とともに協働による地域づくりを推進し、地方創生の実現に向けて各種施策に取り組んでいきます。