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和歌山県九度山町/幸村を観光の新たな柱に~町民とともに日本一元気な町を目指して~

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年3月7日
真田幸村公の赤備え甲冑(複製)の写真

戦国随一の人気を誇る真田幸村公の赤備え甲冑(複製)


和歌山県九度山町

2952号(2016年3月7日)  九度山町 企画公室


九度山町の概要

九度山町は和歌山県の北東部(伊都地域)に位置し、県庁所在地和歌山市に車で約1時間、大阪都市部へは電車で約1時間とアクセスもよく、南は真言宗の開祖弘法大師が開いた高野山を有する高野町と接する人口約4千6百人、面積44.15k㎡の非常に小さな町です。

町内に在る弘法大師ゆかりの慈尊院(じそんいん)や丹生官省符(にうかんしょうふ)神社、高野山町石道(こうやさんちょういしみち)は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に含まれています。また、日本一(ひのもといち)の兵(つわもの)と呼ばれた真田幸村公が、大坂の陣に出立するまでの14年間、人生で一番長い歳月を過ごした地でもあります。その縁により長野県上田市とは昭和52年5月より(当時は長野県真田町)姉妹都市として交流を重ねています。秋には日本一の品質を誇る特産品「富有柿」が京阪神を中心に好評をいただいております。しかしながら、平成の合併も不調に終わり単独での町行政を進める必要があった本町においても、例外なく少子高齢化の波が急速に訪れました。農業も後継者不足となり、特産品「富有柿」についても存亡が危ぶまれる状況となっています。

新たな観光を産業に

そのような状況のなか、平成18年より農業に次ぐ新たな産業の柱として「観光」を位置づけ、まちづくりを進めてきました。世界遺産に含まれる各史跡は信仰の対象として多くの観光客が訪れていましたが、一方で、中心市街地は真田幸村公の屋敷跡である真田庵(寺院)以外の見どころが無く閑散としていました。そこで戦国武将随一の人気を誇る「真田幸村」を新たな観光の柱と位置づけ、埋もれた観光資源を掘り起こし、磨き上げることで新たな観光周遊ルートの整備に取りかかりました。

まず世界的に有名な日本画家平山郁夫先生(故人)ゆかりの館を平成19年5月に「松山常次郎記念館」として、また、日本の障害者福祉の母と呼ばれる大石順教尼ゆかりの屋敷を平成22年1月「大石順教尼の記念館」としてそれぞれ開館。真田庵に加え2施設を整備することができました。

このような町の取組に連動し、町民有志の方々が自らまちづくりに立ち上がってくれました。まちなか休憩所は町内のおばちゃんグループ「真田いこい茶屋」が平成21年6月から運営し、営利目的でない心温まるおもてなしで観光客を迎え入れています。また、九度山町住民クラブも同年より春に約一ヶ月間「町家の人形めぐり」を開催。商店街の家を中心に約60軒の家々が人形を飾り、九度山を訪れる方々を楽しませています。また、両団体ともそれぞれ県内で表彰を受けるなど取組が認められ、より一層励みとなって活き活きと活動されています。

古民家を利用した「まちなか休憩所」の様子の写真

古民家を利用した「まちなか休憩所」観光客だけでなく町民の憩いの場となっている。

真田幸村を取り持つ縁で

同時に観光地には「食」が必要と考えました。そこで、真田幸村公が本町に閑居となった際に伝えたとされる信州そばを現代に復活させ「紀州九度山真田そば」を開発。真田庵の隣に町の第三セクターで運営するそば処「幸村庵」を平成22年11月にオープンしました。現在本町にはそば文化はなく、ゼロからのスタートでしたが姉妹都市長野県上田市母袋市長の全面的なバックアップのもと、職人を上田市に派遣し、一から研修を受けそば作りを学びました。町職員も連日試食に参加し、試行錯誤を重ね、約二年半かけて「幸村庵」開業にこぎ着けました。本場の信州そばを味わえると大変好評をいただいております。

「そば処幸村庵」の外観の写真

「そば処幸村庵」本格的な信州そばが味わえます。

また、町職員の発案で本町の特産品「富有柿」をテーマとした「大収穫祭IN九度山」を平成19年11月より開催。職員総出でイベント準備・運営に携わっています。真田氏を偲んで開催している春の「真田まつり」が唯一の大きなイベントだった本町にとって、秋の大イベントが出来上がりました。現在では2日間で約2万人の来場者が訪れる大イベントとなり、皆さん本町の秋の味覚を楽しんでくれています。

「大収穫祭IN九度山」で特産品「富有柿」を販売している様子の写真

「大収穫祭IN九度山」特産品「富有柿」の特売も実施

イベント開催に対して、柿収穫の最盛期と重なるため当初は消極的であった農家の皆さんも、消費者の方々と直接対話し自慢の柿を喜んで購入してくれる姿を見て次第に生産意欲を増すなどの相乗効果も生まれました。

前述した住民による自発的な「まちおこし」を含め、これらの取り組みは、真田幸村公が取り持つ縁で姉妹都市長野県上田市と様々な交流が生み出してくれたもので、本当に実りある有意義な姉妹都市交流をさせていただいていると自負しております。

真田まつりの様子の写真

真田昌幸・幸村父子を偲んで「真田まつり」を開催。武者行列は勇壮。

住民と観光客のための「道の駅」オープン

このような官民一体となった様々な取組により観光客は着実に増加して参りました。一方で、観光情報の発信基地及びトイレの付随した大型駐車場等町の不足している機能も浮き上がってきました。

そこで次に、町の基幹施設として道の駅の建設計画(当初は地域振興交流施設)を実行に移しました。建設予定場所は町の中心街と世界遺産の史跡が集積する地域のちょうど真ん中に位置し、町内で唯一といって良いほどまとまった平坦地。それゆえに単なる観光客向けではなく、町民にとっても利用できる有意義な施設を目指しました。具体的には、本町のみならず世界遺産で結ばれた近隣町の観光情報を発信する高野地域世界遺産情報センター、町民の買い物対策として日常の買い物が出来る直売所施設、地域食材を活用したベーカリーカフェ、子どもの遊び場としての大型遊具、そしてイベント会場兼ドクターヘリの離発着場を兼ね備えた防災広場。それらの機能を有する道の駅「柿の郷くどやま」を構想から約6年の歳月を要し平成26年4月オープンさせました。

道の駅「柿の郷くどやま」の外観の写真

さまざまな機能を有する本町の拠点施設「道の駅 柿の郷くどやま」

直売所は町による直営も検討しましたが、柿以外の農産物が乏しい本町では、町民の買い物の場とするためには年間の品揃えが難しいと判断し、県内の産直施設を手がける企業にテナント貸しとしました。企業側には町民のため日用品の陳列をお願いし、快諾をいただいたのが非常に嬉しかったです。その結果、年中和歌山県内産の農産物やお土産品がふんだんに陳列され、観光客のみならず町民の買い物の場として連日賑わいをみせています。このような様々な取組の成果として平成18年約14万8千人であった観光客は平成26年には約63万6千人まで増加する結果となっています。この間、長野県上田市をはじめ大坂の陣の舞台である大阪城など真田ゆかりの関係各所にご協力を仰ぎながら、町単独でも首都圏・名古屋・京阪神を中心に地道な観光・特産品PR活動も続けて参りました。今から思えばそれら全てが形となって現れてきたように思います。

特産品「富有柿」の写真

日本一の品質を誇る特産品「富有柿」

大河ドラマ「真田丸」決定

道の駅のオープンよりほどなく、平成28年のNHK大河ドラマ主人公が本町ゆかりの真田幸村公に決定しました。この背景には約5年間の年月をかけて全国の真田氏ゆかりの自治体が連携し署名活動を行うなど誘致活動を行ってきた努力の賜であります。うれしさと同時に、80万人を超える署名に協力して下さった真田ファンの皆様へ感謝の気持ちで一杯になりました。しかしながら喜びも束の間です、大河ドラマ放送までの準備期間は2年もありません。早急な対応に迫られました。真田幸村公が人生で一番長く生活をした地ではありますが、屋敷跡と呼ばれる真田庵(寺院)はあるものの、閑居の地である本町に、現存する資料等は残っていないのです。

九度山・真田ミュージアムの建設へ

そのような本町だからこそ、逆転の発想として九度山での暮らしぶりに思いを巡らせ、自由なイメージの下に映像やパネル展示を行い、単に見学する資料館に止まることのない、体感していただける施設として「九度山・真田ミュージアム」を建設することにしました。大河ドラマ放送でいらっしゃる多くの観光客に「九度山の真田」を楽しんでいただくよう準備を進めています(平成28年3月13日オープン)。

同時に大河ドラマ展を開催し、ドラマで使用した衣装や小道具類を展示し、大河ドラマの魅力を存分に紹介します。

本町としては真田氏をテーマとしたまちづくりの集大成と位置づけており、大河ドラマ終了後も「真田氏ゆかりの地 九度山」の情報発信拠点として恒久的に開館して参ります。また、近隣自治体はもとより民間事業者にも幅広く協力していただき、大河イヤーを本町のみならず伊都地域の交流人口増加や経済効果、知名度向上に繋げて参りたいと考えています。

九度山真田ミュージアムの内部イメージ画像

九度山真田ミュージアム(内部イメージ図)

九度山真田ミュージアムの完成イメージ画像

九度山真田ミュージアム(完成イメージ図)

今後の課題と展望について

端的に言えば大河ドラマが生み出す効果をいかに持続させるかが課題となります。幸い戦国武将随一の人気を誇る真田幸村公ですので、ドラマ終了後もその人気は持続するものと考えていますが、これを機会に幸村ファンの来訪者の皆様にも九度山ファンになってもらい、リピーターを増やすと共に、移住・定住の地として九度山町を選んでいただけるよう、前述した住民のグループと共に官民一体となった「魅力あるまちづくり」が必要だと考えています。もちろん長野県上田市をはじめ今までのご縁を大切にしていくことも忘れてはなりません。観光面だけでなく、農業の後継者問題、住みよいまち・子育てしやすい環境づくり等々取り組む課題は多岐にわたりますが、真田氏を町のシンボルとして住民が結束し、小さくても「日本一元気な町九度山」を目指し努力して参りたいと考えています。