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宮城県蔵王町/春夏秋冬、蔵王町は自然の宝庫!~利便性の向上が定住化のカギとなる~

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年1月11日
御釜の写真

展望台付近から見える火口湖の「御釜」(おかま)


宮城県蔵王町

2945号(2016年1月11日)  蔵王町長 村上 英人


「町の紹介」

蔵王町(ざおうまち)は宮城県の南西部に位置し、昭和30(1955)年、旧宮村と旧円田村が合併し町制に移行して、昨年4月1日に満60歳の還暦を迎えました。これまでの間、 ふるさとのためにご尽力いただいた先輩方に深く感謝し、次の世代に語り継ぐべきことを大切にしながら、未来への扉を開いていきたいと考えています。 

四季の恵みが豊かな蔵王では、標高20mから1,800mを超す丘陵地帯に農地が点在しているため、かつてより稲作単作経営より立地条件を生かした畑作や果樹(モモやナシ、リンゴ)、 畜産の複合経営が行われてきました。特に本町の農業の特徴は、「果樹面積率」の高さで、県全体の約20%を占める県内随一の果樹産地となっており、 付加価値を高めるため農産物の蔵王ブランド化の確立を目指し、「環境保全米」や「蔵王なし」など認定基準を設けて推進してきました。 

蔵王の梨の写真

初出荷から100年の歴史がある「蔵王の梨」

当町は宮城県でも仙台、松島に次ぐ観光地として年間約180万人の観光客が県内、県外はもとより海外からも訪れており、飲食店や宿泊施設での地元農産物の消費拡大や地産地消推進を図りながら、 農業と観光の効果的連携を目指しています。  

蔵王の象徴となっている「御釜(おかま)」は、蔵王五色岳にある火口湖で、気候などの条件によってエメラルドグリーンや瑠璃色に湖面の色が変わり、豊かな表情を見せてくれる蔵王のシンボルです。 蔵王刈田岳・熊野岳・五色岳の3峰に抱かれ、円型のお釜状のため「御釜」という名前がついています。 

春は雪の回廊、夏には高山植物を愛でながら高原のドライブが楽しめ、秋には全国的にも有名な紅葉狩りのポイントに、そして冬の「樹氷」は蔵王のほか、限られた地域でしか見ることができません。 雪上車「ワイルドモンスター号」で、世界的にも希少な自然現象の芸術品「樹氷」を観賞するツアーもあり大変好評を博しています。 

樹氷の写真

雪と氷が織りなす造形美「樹氷」

また、蔵王は温泉の宝庫で別荘分譲地から車で約5分のところにある遠刈田温泉街には公衆浴場もあり、誰でも気軽に温泉を楽しむことができます。また、 少し足を伸ばせば青根温泉や峩々温泉などの名湯めぐりも楽しめます。

「定住化促進に向けて」取り組みの動機

定住化維持するために

国が公表した2060年までの将来推計人口において、今後50年間で日本の総人口が約4,000万人減少(現在の約3割減)すると言われています。 このような日本社会の潮流とも言うべき人口減少にどのように歯止めをかけるのかが全国的に課題となっています。 

少子高齢化が進行する中、蔵王町においても人口は、平成13年の13,918人から、平成23年の13,071人と、10年間で847人、約6%の減少となっています。また、 町内の高齢者(65歳以上)は平成27年6月末現在で4,049人で、高齢化率も約32%となっております。人口の減少は、町民生活の活力低下を招くばかりでなく、地域経済や町の財政基盤に大きな影響を及ぼすとともに、 地域の存立基盤にも関わる深刻な問題です。  

地元や周辺地域に就職して蔵王町に住みたい、豊かな自然のある蔵王町で子どもを産み育てたい、蔵王町に帰って生活したい、田舎暮らしを楽しみたい等のニーズに対応した事業を展開することにより、 人口の流出や減少を抑制し、定住化を促進することが急務となっています。 

ざおうさまの写真

蔵王町のゆるキャラ「ざおうさま」

定住化が進む別荘

蔵王町は東北地方で最大規模の別荘地となっています。昭和37年に宮城県と山形県を結ぶ山岳道路「蔵王エコーライン」が開通し、昭和50年に東北自動車道が宮城県まで全通すると、 首都圏からも観光客が訪れるようになりました。 

こうした自然観光と温泉地の魅力を生かそうと、主に遠刈田地区で温泉付別荘地の開発が1970年代後半から開始されました。高度経済成長の中、好景気と観光ブームに乗って、 区画整備された分譲別荘は人気を博して、その都度、整備拡張され、現在では8つの管理組合が運営しており、東北地方の中で最大規模の別荘区画数を有しています。現在の総区画数は3,321区画が分譲され、 約半数程度が建築済みであります。 

好調だった景気も1990年代前半のバブル経済崩壊によって、景気が後退し不景気が長期化すると、経済的事情で普段生活していない別荘を保有することが困難になり、 不動産を売りに出されるケースもありました。 

避暑地などの利用が減り、最近では「静かに暮らしたい」「趣味のため」「森林浴の中で心身の健康回復・増進を図りたい」というように、目的があって購入する人が増えています。 近い将来に定住を考えている50歳代の方や若い方は田舎暮らしをしてみたいと定住目的で購入する方もおり、新築で別荘を建てる方もいますが、良質な中古物件にも注目が集まっています。 

少子高齢化で生き残りをかけて定住化促進をうたう自治体が増える中、蔵王町独自の定住化を促進することが急務となっています。  

山道の写真

紅葉の時期は特に人気のドライブコース

「定住化促進に向けて」 取り組みの内容

公共交通機関の利便性の維持・向上

学生や高齢者が住みやすい居住環境として公共交通機関の利便性を向上させることは、定住化推進に向けて重要な要素のひとつです。 

自家用車の普及や少子高齢化、過疎化の進行により現在の路線バスは、地方を中心にかなり苦しい運営状況に置かれており、路線バスを運営する会社のほとんどが赤字です。 一方、地域の路線バスはマイカーを使わない高齢者や学生などの生活には欠かせません。路線が減れば利便性が悪くなってさらに人口が減り、地域の衰退に拍車がかかることが懸念されています。  

鉄道などが町の一部しか通っていない蔵王町においても、路線バスは貴重な公共交通機関です。一度廃止してしまうと復活させることは大変厳しく、赤字路線として発走本数自体は減りましたが、 バス路線を維持するため、近隣市町と共同で運行費の一部を補助して、維持に努めています。 

また、平成17年12月にJR仙台駅・県庁と蔵王町・遠刈田温泉とを結ぶ高速バスの運行が始まり、現在は1日10往復となっています。これにより、仙台圏への通学や通勤、 別荘などからも容易に買い物などで利用できるようになり、利便性が格段に良くなりました。仙台や関東圏からの観光客にも遠刈田温泉や観光地へのアクセス手段として利用され、 運行によりさまざまな波及効果が現れました。 

高速バスの写真

町の宣伝も兼ねた「高速バス」

別荘で定住化促進

国道、県道などの道路整備のほか、公共交通機関の利便性の向上によって、団塊の世代などがセカンドライフを「自然に囲まれた環境でゆっくり過ごしたい」という思惑で、 別荘での定住が改めて注目を浴びています。 

新たな顧客の確保と情報発信の一本化を目指して、町内の別荘地を管理する開発業者や管理組合が共同して町の活性化を目的に「みやぎ蔵王別荘協議会」を平成22年に立ち上げました。 大規模災害時の被災者の受入れ事業や別荘宿泊体験、空き別荘の販売促進など町と情報共有しながら蔵王町に対する定住促進の取組に努めています。 

地域に根ざす様々な交流

定住人口が減少傾向にある地方で、観光客や別荘所有者などの交流人口を拡大させることで、人口減少の影響を緩和し、地域の活力を取り戻そうとする動きが広がっています。 

観光の潮流が従来は集団型、通過型でしたが、最近は個人型、体験学習型、交流型の観光と新たなる形態が形成される中、蔵王町においても、 農業施設での体験学習や農業体験など様々な交流の機会を設けてきました。 

新たな観光客の開拓として、スポーツを通して交流人口の促進に努めてきました。 5月に雪の壁を激走する蔵王エコーラインを舞台とした自転車競技「日本の蔵王ヒルクライム・エコ」を平成24年に開催しました。町外はもとより県外からも多くのサイクリストを呼び込み、 蔵王の新たな魅力を発信しました。

ヒルクライムの写真

蔵王に春の訪れを告げる「ヒルクライム」

平成24年に全国健康福祉祭(ねんりんぴっく)ゲートボール交流大会が蔵王町で開催されたことをきっかけに、芸能界のゲートボール愛好者として知られている、 三遊亭円楽さん率いる円楽チームを招いて、毎年ゲートボール大会を開催し、広く蔵王町の活力を全国に発信する事業も開催しています。

「最後に」

御嶽山が平成26年9月に噴火し多くの死者・行方不明者が出ました。これを受けて、現在活動している活火山の警戒態勢の強化が図られる中、 宮城・山形県境の蔵王山(蔵王連峰)で小規模な水蒸気噴火の可能性があるとして、昨年4月13日に火山周辺警報(火山周辺危険)が気象庁から発表されました。

その後、6月16日に噴火の兆候が見られなくなったとして、約2カ月ぶりに火口周辺警報が解除されましたが、テレビや報道などによる風評被害は大きく、 蔵王町においても観光客の減少や旅館・ホテルなどの宿泊キャンセルなど、現在もなおその影響が大きく残っています。 

観光で交流人口を増やし、定住化促進に向けて積極的に取り組むことはもちろんのこと、災害から町民や観光客の尊い生命と財産を守るため、 防災・減災に関した対策をより万全に講じて参りたいと意を新たにしております。

蔵王町の写真

蔵王町にはたくさんの観光スポットがあります