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愛知県東栄町/Iターンの若者たちが受け継ぐ地域文化と新たな地域創造への挑戦

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年12月8日
花祭の写真

愛知県奥三河地域に約7百年以上前から伝承される伝統芸能「花祭」。
生まれ清まりと無病息災、五穀豊穣を願い、ほぼ一昼夜かけて行われるこの祭りは、
昭和51年に国の重要無形民俗文化財に指定されています。


愛知県東栄町

2901号(2014年12月8日)  東栄町役場 企画課


東栄町の概要

東栄町は、愛知県の東部、静岡県と県境を接する山間地に位置し、町域の約90%が山林原野で、標高700m~1000m の山々が峰を連ねています。人口は3,656人(平成26年10月末現在)で、 合併により本町が誕生した昭和31年当時の11,651人と比べ約31%にまで減少、現在も毎年90人程度の人口減少が続いており、過疎地域自立促進特別措置法による過疎地域の指定も受けています。主な産業には、 林業、農業がありますが、木材価格の低迷や担い手の高齢化等により衰退傾向にあります。 

一方、本町は、年間18万人の来場者がある天然療養泉「とうえい温泉」の他、振草渓谷が織りなす渓谷美、鮎が躍る清流、満天の星空など豊かな自然に恵まれています。また、 700年以上の歴史を持つ、国の重要無形民俗文化財「花祭」が11 か所の集落で保存伝承されています。この祭りは、住民の連帯感を高める上で欠かすことのできない存在であり、 県内外からも多くの観覧者が訪れます。 

今回、紹介させていただくNPO法人てほへは、地域づくり活動はもとより、町内外住民の交流や花祭の保存伝承など、行政と連携・協働しながら、 小さな町の活性化に重要な役割を果たしています。その活動が評価され、平成25年10月には過疎地域自立活性化優良事例総務大臣賞を受賞しました。

Iターンの若者がふるさと奥三河応援隊(NPO法人てほへ)を設立

NPO法人てほへは、25年前に奥三河・東栄の地に移り住んだ和太鼓集団「志多ら」の若者たちが、ふるさと奥三河を元気に盛り上げようと、 地域の支援者達とともに2010年(平成22年)に立ち上げました。法人名「てほへ」は、地域に伝承されている「花祭」の「テーホヘテホヘ」というかけ声から、 奥三河が元気に盛り上がることを願い名付けたものです。 

NPO法人てほへとしての活動は、4年目を迎えたところですが、母体である「志多ら」は、1990年(平成2年)より本町の廃校(旧東薗目小学校)を借りて、 演奏活動の傍ら地域での活動をスタートしていました。その過程で、地区住民から「太鼓を毎日叩いているなら花祭を手伝ってくれ」との声がかかり、700年以上続く伝統芸能との関わりが生まれ、 次第に地元住民として認められる存在となっていきました。現在では、志多ら18名(全員てほへスタッフとしても活動)、てほへ専属スタッフ2名、 本年愛知県から受託している「遊休建物を活用した交流居住モデル事業」において雇用したスタッフ4名が中心となって活動しています。和太鼓集団からスタートした活動が、映像カメラマン、 NPOスタッフへと幅が広まり、専門性のあるプロ集団となっています。 

奥三河に共生し、奥三河のありのままの魅力を情報発信したり、町民と町外の方との交流体験事業など様々な取組を企画・実施することで、交流人口の増加を目指すなど、 地域に元気と勇気を与えています。その地に実際に根を下ろし、若さと行動力をもって住民と一体となって地域を盛り上げ、また、新たな応援者を呼び込もうとする活動は、 本町の目指す将来像「交流創造の郷」を実現する上で重要な役割を担っています。それでは、彼らの活動について、順次紹介をしていきます。

NPO法人てほへの活動

① 木造校舎を利活用した交流体験の夢創造空間(のき山学校プロジェクト)

町内外住民の集い・交流の場として、てほへ交流会を年に1回実施しており、今年で19回目を迎えます。15回目からは、NPO法人てほへの交流会(2日間)「のき山市」として実施しています。 廃校となった旧東部小学校で行う交流会には、町内や都市部から1日平均200~300名の方が参加しています。のき山学校は、旧東部小学校の所在地名から命名したもので、 地元住民が都市からの参加者と一緒に奥三河の魅力を体感することで、地元住民に改めて地域の価値を感じてもらえています。地元の旅館で行う懇親会では、地元と都市双方の住民のより強い絆が生まれ、 花祭など奥三河で行われる行事への参加につながっています。 地元住民からも自分たちのできることで自分たちの学校を生まれ変わらせようとの声が上がっており、「学校ピカピカ大作戦(草刈りなど)」を地元の方たちと共同で行っています。 

また、旧東部小学校は、本年愛知県から受託した「遊休建物を活用した交流居住モデル事業」の舞台ともなっており、本町・愛知県と連携・協力しながら、毎月1回以上、 地域の資源を活用した様々な体験・交流イベントを実施しています。さらに、本町では、この旧東部小学校を、木造校舎という特徴を活かした交流の拠点とすべく、国の支援も得ながら、 NPO法人てほへとも連携して、カフェの整備といった改修を行うこととしています。

奥三河のき山学校の写真

遊休施設である木造校舎を活用した都市住民と地元町民との交流体験の場。奥三河のき山学校として「のき山市」などで体験プログラムを実施。

② 古民家や里山の畑(自然農)、山林(間伐材)、水資源(エネルギー)等を活用したふるさと暮らし塾(蒼の森)

「蒼の森~ふるさと暮らし塾~」は、志多ら・てほへの拠点「奥三河」の本町東薗目地区において「昔ながらの自然な暮らしを創造しよう!」とスタートしました。かつて、 山に暮らす人々は、祭りを中心に集い、生活の中から文化が生まれました。そこには大地と共に暮らす知恵や思いやりが受け継がれてきています。この「蒼の森~ふるさと暮らし塾~」は、 先人の知恵を現代に再生する場として位置付けています。

活動拠点の写真

活動拠点、東薗目集落の空き家と土地を借り、間伐材を利用し山小屋などを自らで建築。現在は、緊急時用間伐ハウスのキット化に取り組む。

本町では、行政と山林所有者が連携し、間伐材の搬出による有効利用と搬出量に応じ地域内通貨を交付することにより経済活性化を図る「とうえい木の駅プロジェクト」を進めています。 東薗目地区の不在地主の山や廃屋を借りて、このプロジェクトに出材したり、交流拠点となる山小屋を大工さんの指導の下で建築したりしています。また、 耕作放棄地を借りて自然農栽培の畑や茶畑をはじめています。さらに、コンポストトイレづくりといった企画を実施しています。こうした企画に全国から参加者が集うことで、 地区住民との新たな交流も始まっています。都市部に移り住んだ地区の出身者の皆さんから山や畑、古民家を借りることで、途切れそうになったふるさと地区出身者との繋がりが戻ってきています。 

この他、町内を中心に「地域暮らしお助け隊」事業として、草刈り、畑の手伝い、ペットの散歩、部屋の片付け、ペンキ塗り等、地域のお年寄り等の暮らしお助け隊として活動しています。 

また、奥三河の玄関口新城市で毎月行われている「しんしろ軽トラ市のんほいルロット」にブースを出展しています。蒼の森で生産した農作物や物産などの販売、 志多らや奥三河などの情報発信を行っています。 

間伐放置材を薪などに有効活用するために、木の駅などに出材している写真

間伐放置材を薪などに有効活用するために、木の駅などに出材。志多らメンバーと共に作業を行い、きれいになった山の中で演奏会などを実施。

トイレをつくるワークショップの写真

簡易コンポストに改造を加え、緊急時に使用できるトイレをつくるワークショップを実施。

③情報発信事業(奥三河のき山放送局)

奥三河で元気に活躍する人たちや、伝統芸能などをNPO法人てほへが取材し、自主製作した映像を「奥三河のき山放送局」として、インターネットで配信しています。 コンセプトは、「奥三河で活動する元鬼(元気)な人たちをご紹介」、現在は、東三河地域の豊橋ケーブルネットワーク(ティーズ)とCCnet豊川局でも放送されています。 奥三河出身の方の多くは豊橋など東三河地域に住んでおり、当該地域のケーブルテレビでの放映は、多くの方に喜ばれており、奥三河に暮らすスタッフが取材し、 生きた情報と生の声が番組になることで活動にも弾みがついています。 

地元のケーブルテレビの画像

奥三河のイベント、自然、人にスポットをあてた番組で、地元のケーブルテレビにて放映。てほへ独自の情報発信事業。

④和太鼓集団「志多ら」

2012年4月に奥三河観光協議会(新城市、設楽町、東栄町、豊根村)から「奥三河ふるさと観光大使」を拝命した志多らは、 花祭りをテーマにした「蒼の大地~今、ひとつになりて、行かん~」全国ツアーを2012年5月よりスタートし、3年間をかけて全国50公演を展開しています。NPO法人てほへは、 これらすべての公演会場に奥三河ブースを設け、奥三河の情報発信を行っています。こうした志多らの公演から志多らの拠点である奥三河に興味を持ってもらい、現地まで来てくれる方が増えており、 志多らをきっかけに生まれた繋がりが奥三河との繋がりに発展し、NPO法人てほへが企画するイベント等への参加者となり、交流人口の増加に繋がっています。 

展示の写真

NPO法人てほへの母体である、志多らの全国ツアーで奥三河ふるさと観光大使としての活動をサポート。

今後の展望

過疎地域における村おこしには「よそ者」「若者」「馬鹿者」が欠かせないと言われていますが、まさにその姿が志多ら、NPO法人てほへの活動に当てはまります。 過疎地域の中で起業して地域の伝統芸能である花祭と融合しながら創造活動を行い、日本のトッププロ和太鼓集団として活躍、その中で地域再生に向けたNPO法人を立ち上げ、 地元住民と一緒に様々な取り組みを行っています。 

さらにメンバーは、地元住民と結婚するなどして家族を持ち、多くの子供たちが生まれ、村人として700年以上続いている国の重要無形民俗文化財「花祭」の舞子などを受け継いでいます。 Iターンで住み着いた者が、集落活動や地域の伝統芸能を維持し、継承していく重要な役割を担っており、親の世代となった彼らの地域への思いが、この地域がふるさとになる子供たちへと受け継がれています。 地域での活動を通じて多くの方と出会い、交流して、ますますNPO法人てほへの存在価値は高まっています。 

NPO法人てほへは、東栄町内にとどまらず、奥三河全体、さらには県を越えた三遠南信地域(愛知県東三河地域、静岡県遠州地域、長野県南信州地域)を舞台に活動しています。 各地域で活動する元気な住民とのコネクションを発展させることで、行政の枠を越えた大きなネットワークを構築してきています。彼らの今後の活動に地元町としても大いに期待するところでありますし、 彼らと協働しながら、地域の活性化に向けて邁進してまいりたいと思っています。  

花祭の様子の写真

Iターン者の子どもたちが、村人として約700年以上続く花祭を維持・継承しています。