阿見から霞ケ浦と筑波山を望む
茨城県阿見町
2882号(2014年6月9日) 阿見町長 天田 富司男
阿見町は、茨城県南部に位置し日本第2位の面積を誇る霞ヶ浦の南岸に面し、周辺には緑豊かな環境が残り、積雪も少なく年間を通じて気候が穏やかな地です。
人口は47,707人(平成25年10月1日現在)、そのうち65歳以上の人口は11,242人で高齢化率は23.6%となります。
同時点での国の高齢化率25.1%を下回ってはいますが、着実に高齢化は進んでいます。
こうした中、阿見町には高齢化の進行に危機感を覚え、立ち向かっている地域コミュニティがありますので、今回、その活動をご紹介いたします。
筑見区は、阿見町の西部に位置し、昭和44年から宅地開発が進み、昭和46年より入居が始まり、現在は356世帯が暮らす住宅団地です。
当初、地元の農村集落主体の行政区に含まれていましたが、自治会を設置する機運が高まり、昭和51年4月、自主的に自治会を組織し、その後、 昭和55年10月に行政区「筑見」が定められ「筑見区自治会」となりました。
筑見区は、高度経済成長期に宅地開発が進み、入居が短期間に行われたため、その後の高齢化が一挙に進み、平成25年現在で高齢化率32.9%となっています。
このような状況を踏まえて、ボランティア主体による福祉活動を行っていましたが、筑見区自治会として、今後の福祉のあり方、 あるべき姿を本格的に検討するため「筑見福祉計画策定委員会」を設置、平成23年3月に「筑見福祉計画(ガイドライン)」を策定し、現在は、様々な福祉事業を推進しています。
高齢化に向かう筑見区自治会の最重要課題と位置付け、公募による「筑見福祉計画策定員会」(17名)を設置、自治会会員全員へのアンケート調査や班会議(20班)を開催し、 今後の筑見の福祉のあるべき姿を最終的に取り纏めたのが、筑見福祉計画(ガイドライン)です。
住み慣れた筑見で元気に暮らしていくために!!
高齢者は知恵と経験を!!
元気な世代は支える力を!与えよう!
そして、子どもからは元気をもらおう!
このコンセプトの基に目標・実践する4つの項目を定めました。
~日常生活で困る様なことがあった時、隣・近所を中心に元気な人、動ける人が気軽に支え合っていく。支える、 支えられるというサイクルで安心して暮らせる筑見のセイフティネットを作ろう~
~日頃からみんながふれあい、みんなで協力、みんなで参加できるための場を用意し、みんなが知り合える機会を作ろう~
~高齢になっても元気で筑見で暮らしていきたい。生き甲斐や毎日の生活に張り合いを持ち健康でいたい。体を動かすこと、頭を使うこと、自分を高めること、 このような場を筑見の中に作り、元気で高齢になってもいきいきと暮らせる筑見にしよう~
~子どもから高齢者まで安全・安心に暮らせる筑見を作ろう。他人任せでなく、みんなが参加・協力し合う活動の場を作ろう~
高齢化が急速に進む筑見区筑見自治会では、平成11年に病院や駅などへの足代わりとして、玄関から玄関へ送迎する、高齢者等送迎システム「ふれあい」を発足しました。 毎月の運転者(19名)のスケジュール表を事務局が作成、利用者に配布し、送迎システムの利便性を図っています。また、利用代金は無料とし、賛助会員や個人の寄付により賄っています。
翌年には、高齢者の健康維持を支える活動として「家に引きこもらない。外に出かける機会を作り、人と交わり、刺激、楽しみ、感動し、 生活に張りをもって貰う。」このような交流の場を目標に「筑見いきいき」を開始しています。
健康維持活動を支援する「筑見いきいき」
活動の内容は、支援者(34名)と地域内の看護師、リハビリ指導士の協力で血圧測定や問診、シルバーリハビリ体操、歌、ミュージックベルの演奏、 ゲーム等を毎月第3日曜日に行っています。
また、策定された「筑見福祉計画(ガイドライン)」をベースにして、平成24年から高齢者、身体障害者を支援するため、タウンページ方式による「つくみ支え合い」を始めました。
タウンページ「つくみ支え合い」
この事業は、支援を受けたい高齢者などが支援内容と支援者を掲載した冊子「つくみタウンページ」を見て、直接、支援者(延べ数626名)に依頼する仕組みです。
支援の内容は、蛍光灯の取替え・自転車のパンク修理・草取り・ゴミ出しなど日常生活の中で手助けが必要な29項目を掲載しています。料金は基本的に無料ですが、 支援内容によっては実費負担となっています。
一方、阿見町にはデマンドタクシー「あみまるくん」がありますが、土、日曜日・祝日には運休となることから、筑見区自治会(運転者15名)では、土、日曜・祝日に、 買い物の足を確保する「つくみ乗り合い」事業を実施しています。いつでも高齢者がスーパーマーケットやドラッグストアーなどへの買い物を気軽にできるようサポートしています。
買い物の足を確保する「つくみ乗り合い」
高齢者などの楽しさと憩いの場「筑見ふれあい館」は、高齢者、身体障害者などが「みんなと交流したい。そんな場所が身近にあれば。」との意見からスタートしました。
たのしさと憩い場「筑見ふれあい館」
防災倉庫の内部を改装して開設する提案のもとに、防災倉庫改装委員会(7名)が発足し、目的、改装内容、費用などを検討した結果、改装費用が高額になることから、改装内容、 費用などを事前に会員に周知し、自治会定期総会にて承認を求めましたが、説明資料の不足などが指摘され、継続審議案件となりました。
しかしその後、資料を再作成し臨時自治会総会に臨み、質疑応答の後に無事決議され「筑見ふれあい館」が開設する運びとなり、平成24年11月にオープンしました。
「筑見ふれあい館」はコーヒーなどの飲める場所やこども図書室、多目的室(卓球や催物などに利用)などがあり四季おりおりに飾りつけなどを行い、来館者の目を楽しませるとともに、 居心地の良い空間を提供しています。ボランティアのマスター(30名)により月曜日~土曜日に運営しています。
また、「安否確認システム」は、自主防災組織が本格的な防災訓練を毎年行っている中で、要援護者の確認方法を如何に行うかを検討した結果、確立したものです。
災害時における要援護者の「安否確認システム」
災害時要援護者(一人暮らしの70歳以上の方や障害者:68世帯)に対し地震等の災害発生時に近所に住む人(確認者)が安否確認を行い、 自主防災組織に報告し安否を確認するシステムとして平成21年から実施しています。先の「東日本大震災」時には、このシステムが十分に機能し、短時間で要援護者の安否確認ができました。
このほか、「筑見ふれあい交流会」は、筑見区自治会館で「ふれあい文化講座」を開催しています。郷土作家(阿見町出身)として大正から昭和にかけ活躍した、 童謡・小説作家の下村千秋を知る文学講座や河童の芋銭と言われた小川芋銭の河童についての探訪や講座を実施しています。その他、DVDによる「ふれあい名画座」では、 往年の邦画や洋画などの名画の鑑賞会を開催しています。その他に「歌声の集い」など、様々な催しを通じて、高齢者から子供たちまで幅広い自治会会員間の親睦や交流を深めています。(年間延べ120回開催)
親睦や交流を深める「筑見ふれあい交流会」
これらの活動が評価され、平成25年1月に常陽新聞厚生文化事業団の「福祉・文化顕彰」を受賞いたしました。さらに平成26年2月には、筑見区自治会の地域を支え合う様々な取り組み、 住民間の相互扶助体制によって福祉活動を実施し、大きな成果をあげていることが、自治会の手本ともなるべき取組みと評価され「地域づくり総務大臣賞」を受賞することが出来ました。
「地域づくり総務大臣表彰」で受賞した表彰状と楯
急激に高齢化が進む中で、筑見区に住む人々が、この住み慣れた地域で安全・安心に暮らしていけるよう、今後も地域に根付いた「共助の精神」を大切にし、 現在行っている福祉活動を継続していくとともに、筑見福祉計画(ガイドライン)」で策定された内容に基づき、筑見区自治会福祉部を中心に、「ひとりじゃない筑見がある」をキャッチフレーズとして、 高齢者の認知症サポート・徘徊対策の検討、地域貢献活動の一環とした防犯パトロール活動を推進し、また、健康づくりのため耕作放棄地などを利用した共同菜園作りなど、 様々な機会を通じて福祉施策・支援の拡大を実現していきたいと考えています。
地域における人と人とのつながりが段々と希薄化していく昨今、このように人のつながりを深め、地域コミュニティが活性化していくことは、 今後の町づくりにおいて非常に大事なことだと思っています。
阿見町は、今後も町民が主体的に町づくりへ参加する「みんなが主役のまちづくり」を進めてまいります。