ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村の取組 > 佐賀県江北町/空き家・空き店舗等再生による地域活性化~人が変わることで社会が変わっていく仕組づくり~

佐賀県江北町/空き家・空き店舗等再生による地域活性化~人が変わることで社会が変わっていく仕組づくり~

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年10月28日
白木パノラマ孔園からの眺望の写真

白木パノラマ孔園からの眺望(有明海、雲仙普賢岳まで望める)


佐賀県江北町

2858号(2013年10月28日)  江北町長 田中源一


町の概要

江北町は、佐賀県のほぼ中央部に位置しています。地勢は、東西に走る旧長崎街道を境に、北部は緩やかな南斜面をなした中山間山麓地帯で、一連の山並みが東西に走っています。 また、南部は平坦地で、その大部分を農地で占めており、穀倉白石平野の一角を担っています。 

さらに、本町は、JR長崎本線・佐世保線の分岐駅として特急電車が停車する肥前山口駅を有していることや、道路網においても国道34号・207号の分岐点となっていることから、 県南西部への玄関口として重要な役割を果たしており、交通の要衝としても知られています。 

歴史的には、昭和16年に町制を施行。昭和18年に杵島炭砿5坑が開坑し、戦後の石炭産業の発展により炭鉱の町として繁栄してきました。 当時の人口は16,379人(昭和35年国勢調査)でしたが、昭和30年代後半からのエネルギー革命に伴い、石炭産業が衰退していくとともに人口も10,546(昭和45年国勢調査)まで減少していきました。  

その後も人口流出が続くものの、いち早く町の活性化を図るべく、交通・通信網の整備、企業誘致の推進、農・産業基盤の整備、下水道の整備に努め、 快適で住みよい豊かなまちづくりを進めていくことで、人口減少に歯止めがかかり、平成2年以降はほぼ横ばいの9,800人前後で推移しています。

取組の動機

本町の上小田地区は、町の総人口9,766人の21.4%にあたる2,092人が生活しています。(平成24年4月現在) 

この地区は、炭鉱の最盛期には映画館などの娯楽施設や商店も数多く立地し、賑わいを見せていましたが、少子高齢化の進展による人口減少、独居老人の増加、 高齢者の活動の場の減少、地域コミュニティの希薄化、放課後児童の居場所不足、保護者の交流の場の減少、買い物弱者の増加、空き家や空き店舗の増加などといった地域課題が顕著となりつつありました。 

このような中、一見、この地区にとってマイナス要素として見られがちな空き家や空き店舗なども、その間取りや利用条件を変えることによって、 それらが地区の活動拠点として生まれ変わる可能性が出てくるものと考え、空き家や空き店舗を活用した複合拠点整備と多様な住民サービスの提供を今年度から実践しています。 

この取組には、総務省の過疎集落等自立活性化推進交付金(過疎集落等自立再生緊急対策事業)を活用しています。

取組の内容

空き店舗を改修した地区住民の 交流スペース

交流スペース空き店舗(旧金物屋)を改修して、地区住民の交流スペースとして活用しています。 

若者の知恵と行動力を地域活性化に活かすために、町と佐賀農業高等学校食品科学科の生徒40名が協議を重ね、 このスペースで県内初となる高校生ケーキカフェ「サノ・ボヌール」(サノ=佐農、ボヌール=フランス語で幸福という意味:高校生がネーミング)を今年7月から毎月1回(土曜日)開催しています。 カフェ開催日は2時間半でケーキ(4種類:100食)が完売するほどの盛況ぶりです。  

また、このスペースでは、平日の月・水・金曜日には地区住民の協力を得て、昔懐かしいお店を再現。かき氷、駄菓子、くじ、ところてん、アップルパイ、ラムネを販売。 子どもや高齢者、地区住民の憩いのスペースとして活用することができました。(1日平均50人が利用) 

今後も季節に応じたサービス提供ができるよう協議を重ねているところです。 

高校生ケーキカフェ「サノ・ボヌール」の写真

高校生ケーキカフェ「サノ・ボヌール」

交流スペース「おだ・ぷら~ざ」の写真

交流スペース「おだ・ぷら~ざ」

空き家を活用した子育て支援と 定住促進

本町では、空き家や空き店舗を活用した複合拠点整備と多様な住民サービスの提供を実践していくために、総務省の「地域おこし協力隊制度」を導入し、 福岡県北九州市と宮城県仙台市から2名の隊員を採用しています。隊員の企画・運営により空き家を利用して「放課後こどもクラブ」(子どもの居場所づくり)を実施しています。さらに、 この場所を子育てママさんのサロン(未就園児保護者の交流・相談の場)としても利用していく予定です。

また、移住希望への情報提供のために「空き家バンク」の整備、地域おこし協力隊員の企画による「空き家暮らし体験ツアー」なども現在、検討中です。

遊ぶ前にみんなで宿題をしている写真

遊ぶ前にみんなで宿題

みんなでお好み焼き会の準備をしている写真

みんなでお好み焼き会の準備

空き店舗を改修した高齢者の居 場所づくりと活動の場の提供 

本町では、空き家や空き店舗を活用した複合拠点整備と多様な住民サービスの提供の一環として、3月に西九州大学短期大学部生活福祉学科の教授及び学生の協力を得て、 高齢者サロンを開設するための事業検証(食育・健康などの講演、卓上ゲーム、iPadを活用した交流、買い物代行など)を実施しました。その後、 4月からは地域おこし協力隊員が各地区の老人会で「出前講座」を実施して高齢者の方々からの意見などを集約。10月に空き店舗(旧雑貨屋)を改修し、 高齢者にやさしい安全な高齢者サロンとして活用したいと思っています。 

また、今回の上小田地区をフィールドとした高齢者支援及び子育て支援などのソフト事業は、町(地域おこし協力隊員含む)、西九州大学短期大学部、 地区住民とが連携した企画・運営を推進していくことで、地域政策課題の現状把握に努めるともに、その対応策を探っていきたいと考えています。

iPadを活用した高齢者と大学生の交流の写真

iPadを活用した高齢者と大学生の交流

地域おこし協力隊による出前講座の写真

地域おこし協力隊による出前講座

古民家を活用したまちづくり座 談会 

上小田地区には、町外から移住された家具職人の夫婦が、自分たちでできる部分は自分たちで改修された築70年の古民家があります。ここでは、 空き家や空き店舗を活用した上小田地区の活性化につながるソフト事業を企画・実践していくために、月に1回「まちづくり座談会」を開催しています。また、この座談会の立案で、 休止されていた「長崎街道・小田宿まつり」が3年ぶりにリニューアルして(手作りパン屋オープン、高校生ケーキカフェ開店、学生による露店運営、ものづくりワークショップなど)開催することで、 地域の活性化に貢献できたと思います。 

さらに、セルフビルドによる空き家再生と生活スタイルを紹介・PRするために、こちらの離れを利用させていただき「空き家再生塾」(参加自由)も開催しています。 

この座談会のメンバー構成は、家具職人、手作りパン屋起業家、陶芸家、デザイナー、カメラマン、新聞記者、テレビ局社員、NPO代表、住職兼保育園園長、県職員、 町職員など町内外も問わず多岐にわたっています。地域には、本当にステキな人がたくさん居ます。ただそれが見えてなかったり、繋がってなかったり。 この座談会が開催されたことで、「人」というとても意味のある「地域資源」の存在に気付かされたことに感謝しています。 

まちづくり座談会の写真

まちづくり座談会

空き家再生塾の写真

空き家再生塾

今後の課題

本町では、今年度から空き家や空き店舗を活用した複合拠点整備と多様な住民サービスの提供をスタートさせました。紹介した取組は地域活性化のための仕組づくりであり、 今年度はこの地域社会における空き家・空き店舗を活用した住民サービスの仕組を確実なものとし、地区住民が気軽に安心して利用できるものにしていく必要があると思っています。 

また、この取組を一過性のものではなく、今までの事業の補填でもない未来につながっていくものとするためには、地域の人に理解してもらい、 地域全体で取り組むことのできるものでなくてはなりません。そのためには、この取組の趣旨を十分に理解し、先頭に立って実践できるリーダーと組織が必要となってくると考えていますので、 今後は、人材・組織育成面の充実を図っていく必要があります。 

今年度に種をまいた今回の仕組(取組)を地区住民に知ってもらい、「自らの地域を良くしたい」という気持ちが共有できれば、 空き家・空き店舗再生のモデルケースとして町内の他地区にも浸透していくのではないかと思っています。