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秋田県上小阿仁村/現代アートと活力あるむらづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年9月9日
コブ杉の写真

林野庁「森の巨人たち百選」に選ばれた「コブ杉」。


秋田県上小阿仁村

2853号(2013年9月9日)  上小阿仁村長 中田 吉穂


安全・安心な村

上小阿仁村は、秋田県のほぼ中央に位置する南北に長い山あいの村です。太平山に源を発する小阿仁川が村の中央を流れ、途中、支流を合わせて米代川へと流れていきます。 北部は平地で南部は山林が多く、総面積256.82平方㎞の92.7%が山林原野で占められており、うち75%が国有林となっています。かつては、林業が盛んで、天然秋田杉の産地として知られており、 平成12年に「森の巨人たち百選」に選ばれたコブ杉や約720本の天然杉が立ち並ぶ「自然観察教育林」があります。小阿仁川沿いに20の集落が点在し、人口は2,600人余りで、 高齢化率がおよそ45%と県内一の高さとなっています。農業が盛んで、村の特産物である食用ほおずきやズッキーニ、良質なあきたこまちなどが生産されています。 

鉄道はなく、村北部を斜めに走る国道285号のほか、県道214号、37号によるルートがあり、車でのアクセスとなります。 

村全域に光ケーブル網を構築しており、高速通信によるインターネット環境を整備しています。また、光ケーブル網を活用し、 村独自のネットワークによる村内通話料無料のテレビ電話がほぼ全戸に設置されています。テレビ電話機能のほか、画面を配信することができ、 村のイベントや災害時の避難勧告などの行政情報の配信のほか、高齢者世帯や一人暮らし世帯への見守りサービスに活用されており、安全・安心の村づくりの一翼を担っています。 全集落に設置している防災広報無線と連携させているため、無線による放送内容がテレビ電話でも流れ、タイムリーな行政情報が、一度にほぼ全戸へ発信される仕組みとなっています。

大地の芸術祭初の飛び地開催地

上小阿仁村の最奥地にある八木沢集落。国道285号から、県営第1号の萩形ダムへ向かう県道129号をおよそ9㎞進んだ8世帯16人が暮らすこの集落が昨年夏、 「第5回大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012 飛び地開催 KAMIKOANIプロジェクト秋田2012」として、7月29日から9月14日までの55日間、集落内や公民館、 棚田に現代アート作品が展示され、大きな注目を浴びました。 

「大地の芸術祭」は、元々、新潟県十日町市と津南町で3年に1度行われる、国内でも最大級の規模を誇る野外アートイベントであり、出展作家である、 秋田公立美術大学の准教授の方とのつながりにより、昨年夏、大地の芸術祭初の飛び地開催が上小阿仁村八木沢集落で開催されました。 

会期前より、約160人が参加して行われた「清掃ワークショップ」や、「作品制作ワークショップ」、会期中に実施した各種イベントなど、多くの村内外の方々の協力のもと、 事業が進められました。来場者の目標を5,000人としていましたが、およそ2倍となる、延べ9,114人の来場者が集落を訪れ、現代アートと八木沢集落のもつ里山の原風景との融合に共感しました。  

今年度展示している作品の写真

今年度展示している作品

伝統芸能イベントで八木沢番楽を披露する中学生の写真

今年度行われた伝統芸能イベントで八木沢番楽を披露する中学生

地域の方々とのかかわり

初めての開催としては成功であったといえますが、今後の継続へ向けて、たくさんの課題が残りました。その中でも、地域の方々の関わりが非常に重要で、 大きな課題であることに気づかされました。 

前述のとおり、会期前に実施した、会場である八木沢集落の「清掃ワークショップ」には、村内外含め、約160人の方々が参加してくださったものの、 村として初の取り組みとなるアートイベントに、地域の方々は「何かあるのか」「何をしているのか」という不安が大きかったはずです。八木沢集落の方々からも、説明会を実施していても、 これから起こる未知のイベントに対して「たくさんの人が来るはずがない」という声が上がりました。 

また、集落には商店がなく、来場者のため、会期中の土・日・祝日に公民館でカフェを開くことを決定しました。 このカフェの出店者についても村内業者・団体で手を挙げてくれるところがなく、村外の業者で対応し、村内の4つの婦人団体にその手伝いを兼ね、村の特産物や野菜などの販売を依頼しました。

会期が進むにつれ、連日のように地域の新聞で特集が組まれるようになると、来場者数も増え、イベント開催日には、終日の来場者が、およそ1,000人を数える日もありました。 徐々に集落の方々や、地域の方々も事業に対して関わりを深め、活動を行っていただくことが増えてきました。 

会期前に行われた清掃ワークショップ(八木沢公民館)の写真

会期前に行われた清掃ワークショップ(八木沢公民館)

会期前に行われた清掃ワークショップ(旧沖田面小学校)の写真

会期前に行われた清掃ワークショップ(旧沖田面小学校)

8月4日秋田市の竿燈祭でパレードしPRしている写真

8月4日秋田市の竿燈祭でパレードしPR

作品制作ワークショップ(八木沢公民館)の写真

作品制作ワークショップ(八木沢公民館)

KAMIKOANIプロジェクト秋田2013

今年は8月10日から10月14日までの66日間、「KAMIKOANIプロジェクト秋田2013」として開催しています。今年は作家数が増え、15人の作家が八木沢集落内や公民館、 棚田に作品を展示しています。また、新たに、平成18年度に廃校となった旧沖田面小学校を会場に、作家が滞在して作品を制作する「アーティスト・イン・レジデンス」事業を展開しています。 8月末まで5人の作家が村へ滞在し、作品の制作活動を行い、八木沢集落内や、旧沖田面小学校に展示しています。 

会場である八木沢集落までは、村の中心部に位置する「道の駅かみこあに」から旧沖田面小学校を経由し、1日4往復する無料のシャトルバスを土・日・祝日に運行しています。 

今年は、地域の方々の関わりを重要視し、様々な機会を見つけて事業のPRを行ったり、カフェ出店者の公募を行ったりしてきました。しかしながら、まだまだ、課題は多く、 地域の方々から様々な意見をいただくことが多々あります。今後も、地域の方々に事業に関わりを持っていただき、課題を一つひとつクリアしながら取り組んでいきたいと考えています。

滞在する作家3名によるトークショー(旧沖田面小学校)の写真

滞在する作家3名によるトークショー(旧沖田面小学校)

活力あるむらづくりへ

この「KAMIKOANIプロジェクト秋田」は取り組みを始めたばかりですが、秋田県で国民文化祭が行われる来年度までの継続実施が決定しています。 現代アートや芸術の力を活用しながら都市と農村間、世代間の交流人口の増加を図り、自然を生かした活力あるむらづくりを目指してまいりたいと考えています。