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埼玉県小鹿野町/健康長寿の町「おがの」をめざして~花と歌舞伎と名水のまち~

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年8月19日
両神山の写真

日本百名山の「両神山」


埼玉県小鹿野町

2850号(2013年8月19日)  小鹿野町長 福島弘文


町の概要

小鹿野町は埼玉県の西北部に位置し、東は「秩父夜祭り」で知られる秩父市と、西は群馬県の神流町に接しています。 

古くは、江戸と信州を結ぶ重要な街道の宿場町として栄え、埼玉県内では「川越」に次いで2番目に「町」として町制を施行しました。江戸との交流が盛んであったことから、 様々な影響を受けながら独自の文化が育まれ、祭りや伝統芸能が今に引き継がれています。特に、「町じゅうが役者」と言われる農村歌舞伎の「小鹿野歌舞伎」は、2百数十年の伝統をもち、 「歌舞伎のまち・おがの」としても知られています。また、日本百名山のひとつ「両神山」や平成の名水百選の「毘沙門水」、日本の滝百選の「丸神の滝」、と多くの百選があり、 カタクリや日本一の園地を誇るセツブンソウ自生地があるなど四季折々に花咲く、美しく豊かな自然に恵まれた町です。 

平成17年10月に隣接する両神村と合併し、現在に至っていますが、合併後の面積は約171k㎡、人口は13,157人(平成25年4月1日現在)で高齢化率は30,2%、 75歳以上は17,3%という状況です。特に山間の小集落は高い高齢化率を示しており、町内の66行政区のうち、8つの行政区が「限界集落」と言われています。しかし、鉄道も無い、山あいの町ですが、 後期高齢者の一人当たりの医療費は埼玉県内で1番少ない、なかなか元気な町です。これまでに小鹿野町が取り組んできたいくつかの事例から健康長寿の町「おがの」を紹介します。  

丸神の滝の写真

日本の滝百選「丸神の滝」

国保町立小鹿野中央病院

健康づくりの始まりは、昭和28年に町立病院(国保町立小鹿野中央病院)を開設したことから始まったと言えます。当時1万3千人程度の小さな町としては、先駆的とも言えることで、 当初は医師5人、病床38床でスタートし、その後昭和51年に建て替え、平成14年に増築を行いました。約60年が経過した現在は、一般病床45床、療養病床50床の地域のニーズに合った、 そして地域医療の中核病院としてしっかりと根付いています。また、この町立病院は小鹿野町が取り組んでいる「保健・医療・福祉」が一体となって機能する「地域包括ケアシステム」の重要な一翼を担っています。

健康づくりの推進

これまで、町で取り組んできた健康増進、高齢者の福祉に関する事業の一例ですが、先ず減塩運動と食生活の改善があげられます。昭和56年から10年間、 都内にある栄養専門学校の協力を得て、食生活の実態調査を行いました。昔の家庭で作るみそ汁は、塩分が多く、しょっぱかった。 当時の三大疾病の一つであった「脳卒中」の死亡率が町において高かったのは事実です。集落ごとに持ち寄ったみそ汁を塩分測定し、その結果、やはり塩分がものすごく多いことが判明しました。 それから、塩分を減らすように集会所に泊まり込んで指導が行われ、以後、減塩運動と生活習慣病の改善を展開しました。 

次に、町では昭和51年より成人病予防健診(人間ドック)の助成を開始し、予防健診の必要性を啓発しました。また、町内に「成人病モデル地区」を指定して、 健康増進を推進するとともに、町内全地区に地域の健康増進の推進役として「保健補導員」を育成してきました。今年度は231名の方を委嘱しています。 

昭和58年には、予防医療の拠点として厚生省(当時)の医療費削減のためのパイロット事業「ヘルスパイオニアタウン事業」の指定を受け、 輪投げ大会などの軽運動の推進や栄養改善料理教室、行政区ごとに「健康づくり座談会」などを始めました。これらの事業は発展的に形態を変えながら現在も開催しています。 第28回となる町民輪投げ大会は、昨年10月に「健康フェスティバル」とともに行いました。毎年100チーム(1チーム3名)が出場しますが、どのチームも日頃から練習していて、 場所を取らずにできるとても良い運動となっています。  

このほか、要介護者世帯の全戸訪問、70歳以上の健康調査、単身高齢者の全戸訪問などを実施してきました。

輪投げ大会の写真

輪投げ大会

健康まつり(栄養士による料理教室)の写真

健康まつり(栄養士による料理教室)

地域包括ケアシステムの構築

町では、これまで町民の健康増進、高齢者の福祉に努めてきましたが、平成4年にさらに強力に保健福祉の推進を図るため、保健、医療、 福祉のサービスを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築に向けて調査研究を始めました。 

各地の先進事例を調査研究するとともに、既に「地域包括ケアシステム」を構築し、先進事例であった広島県御調町にある「公立みつぎ総合病院」現在の尾道市ですが、 院長の山口先生から指導を受けるなど、小鹿野町に適したシステムの構築をめざしました。そして、平成14年に先述の町立病院の隣りに保健福祉センターを開設しました。このセンターには、 町の行政組織の一つである保健福祉課を置いたほか、在宅支援センターや訪問看護ステーションも併せて設置しました。こうして、保健、福祉、医療、介護サービスの部門が、 ひとつの建物内に集約できたことで、今まで以上に部門間の連携がしやすくなり「地域包括ケアシステム」が大きく前進することとなりました。また、 このセンターに勤務する8人の保健師は全て町の職員で、高齢者、要介護者のお宅を訪問し、生活習慣病などの健康相談に応じ、どのような医者に診てもらうべきかを指導する体制が確立されました。 こうして、町民(高齢者等)が訪問活動等による健康教育や健康相談などを通じて保健師などの専門職の話しを聞いたり、相談する中で無意味な通院をしなくなり、結果として、通院日数を減らす大きな効果となりました。 

また、入院した人は入院する時点で、退院した時のことを考えて、関係者で協議し、例えば、どの程度の状況になったら退院させ、自宅でどのようなサービスをどのように提供し、 支えていくかについて協議する。町立病院や在宅での介護サービスまで町が町営で提供しているところが、小鹿野町の強みであり、特色です。安心して退院できるシステムがあることが、 入院日数の削減につながっているのだと思われます。  

このほか、介護保険制度の開始時から、町が事業主体となって介護サービスを自前で提供するとともに、地域包括ケアシステムの中に介護サービスも取り込んで運用しています。

地域で輝く高齢者

町で行う保健事業は、基本的には、高齢者のみならず、町民全体を対象に行っています。老人クラブ発祥の地といわれる小鹿野町には、20の老人クラブがあります。この老人クラブは、 町の健康づくり運動を支えてきた団体でもあります。老人クラブごとに町の介護予防施設である「いきいき館」に集まり、ステップ体操教室で運動したり、ゲートボール、グラウンドゴルフなどで健康づくりを行っています。 

このステップ体操とは、介護予防、転倒予防、生活習慣病の予防改善、大腰筋の強化を図ることを目的に、ステップ台を用いて行う有酸素運動とストレッチング体操のことです。 この体操を2名の健康運動指導士のもとに行い、こうした教室に参加する高齢者の皆さんを老人クラブごとに自宅付近まで、町のバスで送迎し、一人でも多くの方に安全に参加できる方法を取り入れています。 

このほか、「いきいき館」では、元気な高齢者、自立活動可能者、特定高齢者の支援事業など、高齢者の介護予防事業を中心に「元気はつらつ教室」や「社交ダンス教室」を開催し、 また、「健康づくり教室」では管理栄養士による料理教室やレクリエーション、参加者どうしの楽しいおしゃべりなど、ゆったりとした時間を過ごすなど、高齢者が楽しみながら参加しています。 そして、小鹿野町と言えば「小鹿野歌舞伎」。町民の4人に1人が役者といわれるほどです。この小鹿野歌舞伎を支えているのが、元気はつらつの高齢者の皆さんです。 かなりの高齢者でも役者として演じ、中学生や高校生にも指導・伝承しています。若い世代から頼りにされていることが、皆さんの誇りといきがいにつながり、町にはこうした高齢者がたくさんいるのです。 

ステップ体操の写真

ステップ体操

小鹿野歌舞伎(屋台歌舞伎)の写真

小鹿野歌舞伎(屋台歌舞伎)

また、小鹿野町は花の名所でもあります。冬は町の花であるセツブンソウ、ロウバイ、春はカタクリ、ハナモモ、夏は花ショウブ、秋はダリアと四季折々に咲く花の姿を楽しめます。 なかでも平成21年にオープンした「両神山麓花の郷ダリア園」は小鹿野町の新名所です。16,000㎡の敷地に約300種のダリアが咲き誇る光景はまさに圧巻です。見頃は9月上旬から10月下旬ですが、 昨年は3万人を超える人が訪れました。このダリア園は、地元の高齢者の皆さんが中心となって、地域の人々の手によって作り上げたものです。

セツブンソウの写真

町の花「セツブンソウ」

両神山麓花の郷ダリア園の写真

両神山麓花の郷ダリア園

健康長寿の町をめざして

小鹿野町では、このように行政、医療部門だけでなく地域の皆さんと一緒になってさまざまな事業を実施し、結果として高齢者の医療費が埼玉県内で1番低い町となりました。 これは、今日まで保健、医療、福祉対策を町の重点政策に位置づけ、その基本姿勢が揺るがず努力してきた結果であります。地域の特徴を的確に捉えて実施してきた事業、 それらが有機的に作用し合って、長い年月をかけてできた成果でもあります。 

まだまだ課題もありますが、私たちは、さらに事業を継続し、そして改善しながら「健康長寿の町・おがの」をめざして関係者一同、邁進していきます。