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高知県本山町/西日本で生産されたお米が日本一に  「土佐天空の郷」のブランド化と地域活性化

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年9月3日
天空の郷の写真

心を和ます棚田風景「天空の郷」


高知県本山町

2812号(2012年9月3日)


(本山町の概要)
本山町は、高知県の中央北部、四国山脈の中央部に位置する人口3,916人(平成24年3月末現在)の町です。面積の約91%を森林が占め 、町の東西に日本三大暴れ川・吉野川が流れ、上流には「四国のいのち」早明浦ダム、南岸地域に広がる棚田、吉野川支流の清流汗見川をはじめ、自然豊かで 風光明媚な特徴のある地域を形成しています。

(歴史)
町の歴史は古く約8千年以上前にさかのぼります。西日本屈指の縄文遺跡である「松ノ木遺跡」があり、発掘された遺跡から、ここでの米づくりは、 弥生時代に始まったと言われます。

また、本山町は早くから歴史の舞台として登場します。戦国時代、土佐七人衆とうたわれた豪族の一人・本山氏がこの地に本山城を築き、 支配の拠点とします。四方を囲む山地が自然の要害となるこの地は、築城に格好の場所だったのです。しかしその後長宋我部氏に破れ、配下に置かれます。

山内一豊が土佐に入国してからの藩政時代には、野中兼山がこの地を支配。「本山掟」と呼ばれる厳しい訓戒が存在したとも言われる一方、 兼山は白髪山から伐採した木材を吉野川で運び、借金の返済に充てるなど敏腕を振るいました。これにより本山町は、剣山地北部・嶺北地方の中ではもっとも 早くからひらけた土地であり、今でも農林業、畜産などが行われています。

土佐天空の郷のブランド化と現在までの経緯

四国山系の中央に位置する高峻の地「本山町」で、長い年月をかけ切り開かれた水田は、現在まで農業文化とともに伝承されてきました。 その9割は棚田で形成され、古くから変わらないのどかな風景は見る人の心も和ませます。これまでひとつひとつ不整形な棚田で、農家の弛まぬ努力と お米作りに適した環境に育まれ、美味しく品質の高いお米が生産されてきました。

そして本町のお米が初めて最高の評価を受けたのが、ブランド米「土佐天空の郷」として出品されたお米日本一コンテスト2010 (全国36都道府県・397点)でした。東北を始め東日本の産地が上位を占める中、土佐天空の郷が日本一となる最優秀賞を受賞。西日本初の快挙でした。 この受賞が、本山町で農業に取り組んできた方々に、自信と勇気を与え、その後の米づくりや地域の活性化に積極的に取り組む原動力となっています。

①本山町特産品ブランド化  推進協議会の発足と取り組み

平成20年2月に設置された本山町特産品ブランド化推進協議会(農家・県・町・商工会・農業公社)では、町を知ってもらい、特産品を全国に 売り出していく足掛かりとして、農産物の中で最も困難だと言われるお米のブランド化に着手。

具体的な取り組みとしては、町内外の親子に参加してもらい「田んぼの生き物調査隊」を開催、多種多様な生態系を知ってもらうとともに 安全安心なお米づくりが続けられていることが証明されました。さらに産業文化祭では魚沼産コシヒカリや長野県産ミルキークイーンなど有名産地と 本山町産米の食べ比べを実施し、そのアンケート結果では本山町産が美味しいと答えた方が最も多く、生産者の自信にも繋がる結果となりました。

その後も、専門家の講演会や先進地視察、試験栽培などを重ね、ついに平成21年「土佐天空の郷」は誕生しました。栽培面では、 生産者全員にエコファーマー認定を義務付け、環境保全型農業に取り組んでいます。毎年土壌診断を実施し、お米づくりに適した土づくりを行い、 特別栽培米の基準(科学合成農薬・化学肥料当地比5割減)で生産を行っています。さらに高知県の特色を活かした室戸海洋深層水濃縮ミネラル水稲栽培の 取り組みを進め、お米の甘みを向上させてまいりました。

品質においても、食味分析機による採点、通常より大粒のお米を揃える米選機、着色粒や被害粒を取り除く色彩選別機を行程に取り入れるなど、 厳しい基準で高品質なものへ仕上げています。

また、現在、日本で最も美しい村連合加盟や土佐天空の郷によって全国から注目を集める中、お米などの農産物だけでなく棚田の風景や 環境の良さを十分に消費者へアピールし、地域全体を好きになってもらう「本山町のファンづくり」の取り組みも進めています。

ブランド米「土佐天空の郷」の画像

ブランド米「土佐天空の郷」お米日本一コンテスト2010で最優秀賞を受賞。

大石・吉延地区の棚田風景の写真

大石・吉延地区の棚田風景

大石地区の棚田風景の写真

大石地区の棚田風景

②観光地となった棚田

土佐天空の郷の知名度が高まり、棚田には観光客や写真家、視察など多くの人々が訪れるようになっています。

なかでも吉延地区・大石地区の棚田は吉野川の支流、樫の川両岸に奥深くまで広がり、棚田のパノラマを一望でき、「この風景は、 まさに日本の原風景、人々の心を和ませ魅了する」と絶賛を頂いております。

これまでは耕作条件の悪さから農家の頭を悩ませてきた棚田は今、町の代表的な観光の拠点として注目を集めています。

協議会では、高品質米の生産に取り組むだけでなく、消費者との交流イベントなど様々な活動を行っています。全国から土佐天空の 郷取扱店を招いた産地見学ツアーや水田の果たす役割やその大切さを子どもたちに伝える勉強会なども開催してきました。

さらに、「天空の芸術祭」と題して、観賞用稲を使った田んぼアートの制作、棚田の一画を会場にした棚田コンサート開催など、 農家と消費者とのふれあいで心に残る棚田「土佐天空の郷」の創造を目指し、取り組みを続けています。

今後はこのように米のブランド化に取り組む事により棚田の保全や地域活性化に繋げ、様々な分野への波及効果を期待して取り組んでまいります。

美しい棚田風景の写真

美しい棚田風景

田んぼアート制作をしている写真

田んぼアート制作

田んぼアート「坂本龍馬」の写真

田んぼアート「坂本龍馬」

田んぼアート「土佐天空の郷」の写真

田んぼアート「土佐天空の郷」

その他の取り組みとして汗見川の清流保全と交流体験

町の北部に位置する汗見川は、吉野川に合流しております。流域には、「土佐の名水40選」が二ヶ所あり、ます淵、お釜、おつげ淵などの 景勝地や川にちなんだ伝説・昔話が今も残っています。

流域には三波川帯の地層で、中でも高知県の天然記念物に指定された藍閃石に包まれた枕状溶岩や、県立自然公園「白髪山」にあるヒノキの 白骨林などは、見所の一つです。年間を通じて秋の紅葉、春の川岸にはキシツツジ、夏には流域でのキャンプ、川遊びなど、県内外から多くの交流人口が訪れています。

流域にある6地域では、この清流を保全しようと昭和47年に「汗見川を美しくする会」を設立。毎年4月に住民全員が参加して、 清掃や桜の植樹、道路沿いの支障木の伐採、草刈り作業など環境保全や景観保全活動を進めています。また、交流体験事業にも取り組み、「キシツツジ 体験ツアー」や夏場には、「高知・本山汗見川清流マラソン大会」を開催しています。そして平成20年からは、廃校となった学校施設を宿泊施設として、 地域の活性化団体が主体となり運営を始め、農林業体験や地域食材の提供、交流事業の受入なども進めています。

汗見川清流館の写真

「汗見川清流館」廃校となった小学校を改修し宿泊施設として運営。

日本で最も美しい村連合加盟

平成23年10月に北海道で開催されたNPO法人「日本で最も美しい村」連合の臨時総会で本山町の連合への加盟承認が決定されました。

これは「棚田景観と特別栽培米土佐天空の郷」や「汗見川流域の景観と環境保全、自然や施設などの地域資源を活かした活性化」などを 高く評価いただいたものです。

今後は、町内の豊富な地域資源を活かした取り組みを更に推進しながら、美しい地域づくりを進めてまいります。

汗見川の写真1

四季折々に美しい姿を魅せる汗見川。

汗見川の写真2