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沖縄県伊江村/「夕日とロマンのフラワーアイランド」 ~自主自立の村づくりを目指す島~

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年3月5日
伊江島遠景の写真

伊江島遠景


沖縄県伊江村

2791号(2012年3月5日)  伊江村長 大城 勝正


私の住む伊江村

伊江村は、沖縄本島北部の本部半島の北西9㎞の位置にあり、人口約4900人の住む一島一村の村です。古くからイージマタッチュー(城山)とジーマミ(落花生)で知られています。北東側には伊是名島、伊平屋島が、南西側には遠く慶良間列島が望めます。島の輪郭はほぼ楕円形状で東西8・4㎞、南北3㎞、総面積は22.77平方kmです。北海岸は約60mの断崖絶壁が連なり、南側にかけて緩傾斜の地形となっています。

南海岸は、ほとんど砂浜となっていて、島の中央やや東寄りに標高172mの城山がそびえ村民を温かく見守っています。この山の眺望は、かつて沖縄八景の第1位を誇り、その山ろくから海岸にかけては平地で1250haの耕地が拓け、8つの集落で村を形成しています。そのうち、6集落は城山の南側から東西に密集し、他の2集落は北西と西南端にあります。島の地質は、琉球石灰岩土壌からなる弱アルカリ性に属し、有機物腐食に富まず畑地としての耕作は容易ですが、保水力は乏しい地質です。気候は、亜熱帯性で平均気温23℃の暖かく住みやすい気候となっています。伊江島へは伊江村船舶の2隻のカーフェリーが就航し、利便性が高く、年間13万人余の観光客が訪れる賑わいのある島です。3月には新造船フェリーの運航も開始し、より良い船旅を皆様へ提供できます。

フェリーの写真

伊江村へは、2隻のフェリーが就航

伊江村の産業~農業・漁業・畜産業・特産品~

農業

本村は、農業振興を主軸とした第1次産業を中心に村づくりの展開を図っていて、多様な品目の農産物が生産されています。比較的平坦な地形で、花き栽培(主に輪菊)、葉タバコ、さとうきび、野菜、島らっきょう、果樹等が栽培されています。平成12年に電照菊、平成15年にとうがん、平成19年に島らっきょうが沖縄県から拠点産地の指定を受けています。中でも輪菊の生産は作付面積で3番目、出荷合計額では最も高い品目となっています。沖縄県内でも生産額トップとして重要産地として位置づけられていて花き産地の先導的役割を果たしています。昨年には「伊江村花き選別施設」が建設され、花き農家の労働力軽減につながり生産性の向上や、新規雇用の拡大を含め花き生産の振興に大きく寄与する施設であることから、更なる地域の活性化が期待されます。又、さとうきびの含蜜糖を製造する「伊江村黒糖工場」も建設されました。2004年に農家のさとうきび離れに伴う原料不足から旧製糖工場が閉鎖し、沖縄本島内の工場に海上輸送していました。輸送コストが高く、生産者から村内での工場設置を要望する声があがり建設にいたりました。さとうきびを中心とした循環型農業の再構築と地域経済の発展に大きく期待されます。又、国営かんがい排水事業として地下ダムの工事が進められていて、更なる農業生産の向上が期待されます。

とうがんの写真

H15年とうがんも拠点産地に指定を受けている

伊江村で展開されている地下ダムプロジェクト

本村では、畑作に必要な用水は降雨と既設の溜池に依存せざるを得なく十分な用水手当がなされていないことから農業生産が不安定であり、農業振興の妨げとなってきました。この慢性的な農業用水の不足を解消するため地下ダムの工事が進められています。地下ダムを新設するとともに、揚水機、用水路の整備を実施することにより、安定的なかんがい用水を確保し、農業経営の安定に資することを目的としています。

地下ダムとは

地下水の流路に止水壁を築造し、琉球石灰岩の隙間に水をためる施設です。畑地や、道路下に造成された後は原型復旧されるため、これまで同様の土地利用が可能です。利用法は貯蓄された地下水をポンプでくみ上げ、貯水タンクに貯めておき、必要に応じて確保場まで送水され作物にあわせた散水器具による散水ができます。

地下ダムの役割の画像

地下ダムの役割

漁業

本村は四面海に囲まれ天然の漁礁が広がり恵まれた漁場が点在しており漁業も盛んな島です。しかし、水産業を取り巻く環境は年々厳しくなり、燃油の高騰や魚価の低迷で漁獲量は減少傾向にありますが、ソデイカ漁は比較的安定しているため全体としては微減となっています。今後は、漁船の大型化等が進み安定して漁獲量と漁獲高を目指しています。

ソデイカ漁の写真

ソデイカ漁

畜産業

本村の畜産は肉用牛が最も多く、年々多頭傾向にあります。主に子牛産地として県内外からの評価も高く、セリ市も安定した価格で取引されています。さらに品質系統も沖縄県畜産共進会では常に上位を占め和牛産地「伊江島」として知られ、平成21年には県から拠点産地の指定を受けています。又、伊江村で誕生した種雄牛が歴代最高成績で県認定種雄牛になるなど、肉用牛産地としての沖縄ブランドの普及推進に大きく貢献しています。今後、堆肥センターの整備により耕畜連携による地域資源保全型農業の確立に取り組んでいきます。

牛セリの様子の写真

牛セリの様子

産業から開発される特産品の数

前述の村の産業品を使用し、数々の特産品が生まれました。県内では伊江島と言えばジーマミ(落花生)が有名です。ジーマミを使った数々の特産品。沖縄料理定番のジューシィー(炊き込みご飯)にイカ墨をまぜて作る「イカ墨ジューシィーの素」や、「イカ墨餃子黒ちゃん」伊江島牛を使ったビーフジャーキーや、ハンバーグ。島の北海岸の波打ち際から湧く真水を使用し作った告白炭酸飲料「イエソーダ」等。主要産業からだけでなく天然の資源を利用した特産品を生み出しています。

初の地酒「イエラムサンタマリア」誕生

昨年「伊江島蒸留所」が開所しました。蒸留所では村内で収穫されたさとうきびのしぼり汁のみを使ったラム酒を製造しています。この工場は、元々は企業がさとうきびを原料とした自動車向けバイオエタノールの生産実証実験を行っていたバイオ燃料工場だったものです。実験を終えて村へ譲渡され、有効活用を検討したところ、設備をほぼそのまま転用できることからラム酒の製造を決めました。蒸留器を新設するなど一部改修を施し、新工場を完成させました。村内初の蒸留所として稼働しています。

伊江島の誇るものの一つであるテッポウユリを、ヨーロッパの人達はマリアの花として愛されています。それと、母なる神・聖母マリアの名前から「イエラムサンタマリア」と名付けました。大地から授かった大きな愛に包まれたラム酒です。南国の太陽をめいっぱい浴びた伊江島産のさとうきびのしぼり汁のみを使い、単式蒸留器で仕込み、じっくり熟成させたアグリコールラムです。ラム酒は2種類製造していて、オーク樽でじっくりと熟成させたふくよかな樽の香りの「イエラムサンタマリア・ゴールド」とさわやかなさとうきびの甘い香りが新鮮な「イエラムサンタマリア・クリスタル」の2種類です。ストレートで、オンザロックでいただく他に、こちらもまた大好評の伊江島発の告白飲料『イエソーダ』で割って召し上がっていただくのも格別です。昨年7月の販売開始から約1万本を売上げ、県知事賞を始め数々の賞を受賞するなど高い評価を受けています。

このように、産地の作物や天然資源を使い数々の特産品を村内一丸となって産み出しています。

イエラムサンタマリアの写真

初の地酒「イエラムサンタマリア」誕生

学び創造する未来を目指して~教育・芸能文化~

学校教育の充実

幼稚園2園、小学校2校、中学校1校の学校教育施設があります。

高校を有しない本村では、ほとんどの生徒が中学卒業と同時に親元を離れ本島内の高校へ進学します。将来を担う児童、生徒が心身共に健全で、勉強、スポーツに励むよう小・中学校にパソコンの導入や外国語指導助手の採用など教育環境の整備が整っています。小さな島であるがゆえに横の繋がりも深く、学校、家庭、地域が一体となって基礎学力の向上、社会生活の指導に努めています。

芸能文化の保存・継承

芸能文化のレベルの高い島として知られ、古くから沖縄各地の民謡や本土の芸能を積極的に学び、さらに島独特の個性豊かな芸能として発達しています。

「伊江島の村踊」は国の重要無形民俗文化財に指定され、先人の遺した貴重な文化遺産として、村ぐるみで保存・伝承されています。村踊は、琉球王朝時代に、伊江王子のお供をしていた島の若者が習い覚えてきた「本土風芸能」と沖縄本島や先島から伝承してきた「沖縄芸能」、島で創作された「独自の芸能」に分けることができます。島には、数多い村踊を始め、独特な民謡、琉球古典音楽を取り入れ、沖縄風にアレンジした組踊「忠臣蔵」が県内で唯一、伊江島に保存伝承されています。この「忠臣蔵」は平成22 年に県の組踊りが、ユネスコ無形文化遺産代表一覧表に記載され、地方に伝わる組踊りを代表して、国立劇場おきなわにて公演しました。村踊りは毎年11月に村内8区の自治会による輪番制で開催される伊江村民俗芸能発表会で披露されます。

このような芸能文化は小中学校教育の一環でも取り入れられ、地域の指導者による指導が行われ、学校、家庭、地域が一体となる教育、保存継承がされています。

「忠臣蔵」の一幕の写真

芸能文化組踊り「忠臣蔵」の一幕

社会教育の充実

本村は、社会教育活動が盛んで、多くの団体が結成され、独自の活動を展開しています。青年会や婦人会他、多くの団体があり、学習活動、文化活動、スポーツレクリエーションなど、年間を通して活動が行われています。特にスポーツを通しての地域づくり、健康づくり、体力づくりが盛んであり、沖縄県国頭郡陸上大会においては、2年連続の男子、女子、壮年、優勝の完全優勝、6年連続の総合優勝を達成する等、老若男女問わずスポーツが盛んな村です。

観光地としての伊江島~民泊事業・イベント~

本部港からフェリーで30分という利便性の良さから、これまでは日帰りの観光客が中心でした。このままでは島への経済効果が薄いということから、平成15年度から始まったのが民泊(民家体験泊)です。

島の民家でホームステイを体験し、農家や漁業者の仕事を手伝ったり、沖縄料理を学んだりという内容の修学旅行の受け入れです。畑仕事や漁を手伝いながら受け入れ民家と絆を深めるプログラムは、大きな反響を呼び、今では全国各地、国外を含め年間3万人以上の旅行者が民泊で訪れるようになりました。それに加え民泊生が島でおみやげを買ったり、おやつや飲み物を買ったりしますから、民泊の経済的効果は計り知れません。また、ホームステイですから事業経費もさほどかかりません。食事は普段と同じものですし、バスなどを使って学生たちを観光に連れていってあげる必要もないわけです。

又、村には高校を有しないため、民泊の受け入れ先は本島などに渡って下宿や寮で生活している高校生や大学生を持つ家が中心です。民泊生を実の息子、娘と思い接することで、伊江島の人の心の温かさにふれ島を出発します。民泊生を送り出す際には「さようなら」ではなく「いってらっしゃい」「いつでも戻っておいで」という思いをこめ見送ります。島を離れてからの交流も続き、リピーターとして島に戻ってくる方も数多くいらっしゃいます。  

このように、島の名所や観光地を巡る旅行ではなく、島民と触れ合うことをメインとした旅行プログラムが、島の一大事業に発展し、平成18年度「地域づくり総務大臣賞」を受賞しました。

こういった民泊事業だけではなく、イベント目当てで島を訪れる方も多くいらっしゃいます。4月の第3土曜日からゴールデンウィークにかけてリリーフィールド公園において日本で一番早いゆり祭りが開催されています。フラワーアイランド伊江島へ毎年約3万人の花見客が来村し、86,000平方mの敷地に20万球100万輪のテッポウユリが辺り一面に咲き、伊江島北海岸の自然と調和した景観を楽しめます。ゆり祭りを初め、伊江島一周マラソン、1000種類のハイビスカスが咲き誇る、ハイビスカス祭り等、様々なイベントが開催されています。

沖縄本島から30 分という利便性の高さ、自然資源、人の温かさ、イベト、それらを全て活用することによって、年間13万人余の観光客が訪れる賑わいのある島を持続し、今後はさらに観光人数を増やす目標を掲げています。

民泊見送りの様子の写真

民泊見送りの様子

ゆり祭りの写真

20万球100万輪のテッポウユリが一面に咲く「ゆり祭り」

終わりに

伊江村は沖縄県島嶼町村制度が施工された1908年に発足し、2008年に村制100周年を迎えました。幾多の歴史と村民のたゆまぬ努力によって、一世紀にわたる「一島一村」のゆるぎない自治を確立し、輝かしい歴史を歩んできました。

我々の先達は、貧困や戦禍・米軍統治から本土復帰・急速な本土化と基地問題など様々な課題に直面しながらも、常に前向きに村の発展と子供の教育に力を注ぎ、家族や祖先を大切にしながら今日の礎を築きあげてきました。

村制100周年を経た今後も、村が歩んだ確かな歴史に思いをはせ、自主自立の村づくりを目指すとともに「継承」「調和」「未来」をキーワードに、さらなる飛躍に向かい邁進します。

伊江島の写真

一島一村の伊江島