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高知県大豊町/ゆとりすとカントリーおおとよ~見守りネットワーク事業で高齢者の生活を支援~

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年2月15日更新
高齢者宅へ訪問し見守りを行っている様子の写真

高知県大豊町

2709号(2010年2月15日)  福祉介護班 前田 典彦


町の概要

大豊町(おおとよちょう)は、昭和30年3月31日、東豊永村、西豊永村、大杉村、天坪村の4か村が合併し発足した大豊村から始まります。

全国でも指折りの大村として推移し、現在の行政区画が設けられ、昭和47年4月1日には、高知県下25番目の町として町制を施行し、大豊町と改称し今日に至っています。

高知県東北端四国山地の中央部に位置し、県庁所在地の高知市から約40㎞の距離にあって、東部は香美市(かみし)物部町および香美市香北町、南部は香美市土佐山田町、西部は本山町(もとやまちょう)、北部は愛媛県四国中央市及び徳島県三好市(みよしし)接しており、一級河川吉野川が町のほぼ中央を流れ、東西32㎞、南北28㎞の広がりを持ち、総面積は314.94平方kmを有しています。

地形は、石鎚・剣山両山系が交錯し、隆起した峻嶺に囲まれ、標高200mから1,400m、平均標高450mの急傾斜で複雑な山岳地帯をなしています。平坦地はほとんどなく、耕地は総面積の1.1パーセントに過ぎず、棚田、傾斜畑で形成されています。

国の特別天然記念物「日本一の大杉」の写真
国の特別天然記念物「日本一の大杉」

河川は、本町を縦横に流れる四国三郎吉野川とこれに流れ込む支流が渓谷を成し、水資源には恵まれているといえますが、その反面脆弱な地質構造であり、古来より地すべり地帯として有名であります。

山岳地帯ということもあり、河川の上下、河岸と山腹、地勢等により気象に著しい差異が見られますが、嶺北地域全般に多雨地帯であるため、年間降水量が3,000ミリに達するところもあり、土砂災害等を誘発させやすい気候とも考えられます。

また、年平均気温は14度で寒暖の差が大きく、夏は比較的涼しく、冬には南国高知には珍しく雪化粧を作る気候でもあります。

人口は、国の経済成長に伴う社会変化の中、若年層を中心とする人口流出が続き、国勢調査における人口が昭和30年に20,711人であったのが、平成17年には5,492人と大幅に減少してきました。

また、過疎化とともに高齢化の進行が著しく、平成21年12月31日における住民基本台帳人口は5,075人、そのうち人口全体に占める高齢者(65歳以上)の割合が2,686人(52.9%)と、人口のほぼ2人に1人が高齢者という超高齢社会となっています。特に、町内でも周辺山間部の集落において高齢化が顕著に現れ、高齢単身世帯や高齢者のみの世帯の増加により、集落の維持すら危ぶまれている高齢集落が徐々に増加しています。

本町の主な取り組み

周辺木を伐採、里山環境を整備する様子の写真
「みんなで支える郷づくり事業」で周辺木を伐採、里山環境を整備する

こうした事態に対処するため、IP告知盤を活用した「愛コンタクトサービス」、GPS機能付き携帯電話及びシルバーホンを使用した緊急時における通報装置の導入による見守りネットワーク事業、通院等における高齢者の足を確保するため、町内にある3ハイヤー事業者が運行する乗り合いタクシーへの助成制度、小規模地区を維持するため近隣地区が共同して町道等生活道の草刈り、支障木の伐採および集落周辺の環境整備等を行う事業へ補助する、みんなで支える郷づくり事業など、高齢者や障害者が安全・安心して暮らしやすい地域づくりを目指し様々な福祉事業に取り組んでいます。

また、平成17年7月から地域担当部署を設置し、3名の職員が受け持ち担当地区を決め日々高齢者世帯等を訪問し、住民の心のよりどころとして活動しています。なお、これとは別に全職員を町内7地区にグループ化し、それぞれの担当地区を月1回の訪問や、地区で行われる様々な行事およびイベント等に参加し、常に住民とともに行動する役場づくりを目指しています。

見守りネットワーク事業

本町の主な取組の中で、今回は高齢者および障害者に対する見守りネットワーク事業について紹介します。

取り組みに至る背景

超高齢社会と、多様化する住民ニーズにより、これまでの画一的なサービスでは立ち行かない状況であることから、高齢者に対する支援体制の見直しを図る必要がでてきました。
高齢者施策のうち緊急通報体制整備事業では、サービスの範囲が固定の通報装置の周辺に限られていましたが、近年では高齢者の活動範囲が広がり、外出先での事故も多発したことから、これらへの対応が急務となり、平成19年度から関係部署で検討を実施してきました。
事業見直しに当たりアンケートを実施した結果、「緊急時の対応を望む高齢者」と「孤独感や不安の解消を望む高齢者」、また、「双方を希望する高齢者」が混在する結果であったため、「緊急時に対応するサービス」と「相談・伺い等の見守系のサービス」を区別して行うこととしました。また、「緊急時に対応するサービス」には、GPS機能付き携帯電話機とこれまでと同様の固定式の緊急通報装置のどちらかを選択できることとし、外出時の緊急時にも対応できる仕様としました。

事業内容(目的・目標・方策)

目的

高齢者等に対し、緊急時に家族や消防署等に連絡する機能を備えたGPS機能付き携帯電話または固定式の通報装置を貸与し、緊急時の対応を図ります。また、孤独感や不安を抱える高齢者等に対し、行政連絡放送を行う告知端末とIP電話を活用した安否確認や声がけサービスを行い、高齢者等の孤独感を和らげ、住み慣れた地域の中で自立した生活が引き続きできるよう在宅福祉の増進に資することを目的としました。

方策

携帯電話の貸与については、KDDI㈱セコムに携帯電話利用料およびココセコムEZサービスを月額1,558円で委託し、利用者からは機器保証料の月額315円を徴収することとしています。サービス内容は、携帯電話から緊急通報が送られた場合に㈱セコムが利用者と発信位置を確認するとともに利用者から状況を聞き取り、状況に応じて消防署または家族に連絡を行います。また利用者が携帯電話に出ない場合は、セコムの要請員が現場に急行し、状況に応じた適切な対応を行う内容となっています。

また、固定式緊急通報装置の貸与については、NTTの「シルバーホンあんしんSIII」を無料で貸与しています。サービス内容は、利用者が緊急ボタンを押すとあらかじめ登録した2か所の親族と消防署に順次連絡していくものとなっています。

安否確認及び声がけサービス「愛コンタクトサービス」については、当町の行政放送(ゆとりすと放送)システムで使用している「IP告知端末」から安否確認のメッセージを週2回配信し、利用者が応答ボタンを押すことで安否確認を行い、確認が取れない世帯には、地域担当職員が訪問し安否の確認を行っています。(※図参照)

大豊町見守りネットワーク事業の概要について説明した画像

施策の開始前に想定した事業効果

  1. これまでの緊急通報装置では、固定の通報装置に加えワイヤレスの通報装置も貸与していましたが、微弱電波のため、装置から10mの範囲でしか利用できませんでした。携帯電話を緊急通報装置とすることで、畑仕事や裏山での作業はもとより、国内の携帯電話が利用できる場所ならばサービスが利用できるので、利用者に対する外出の支援がより一層図れることとなります。
  2. ㈱セコムが一般の高齢者を対象として提供するサービスを利用するため、システム開発や保守管理費が不要となるため、財政的負担が軽減できます。

導入にあたり工夫・苦労した点、課題、対処法など

他の自治体で携帯電話を緊急通報装置に利用した事例がなかったことから、当初は、独自のシステムを開発し運営を行うこととしていたので、開発費用や保守管理費等に膨大な費用を要することとなったため、経費の削減に苦慮しました。

事業を見直した結果、発信者の位置を検索できることにより、救急車の要請がスムーズに行えるようになりましたが、本町は山間地のため電波が届かず携帯電話が利用できない地域があることから、こうした地域への対応が課題となっています。

現在の成果・実績、今後の展開など

新規の申し込み者の受付を行うとともに既事業の利用者に対して、制度変更についての周知および申し込みの受付を行い、21年度中に旧事業利用者を本事業に移行することとします。また、今後は、町内のボランティア組織と協働し、声がけサービスを実施する予定であります。

平成21年12月末における各サービスへの加入実績は、シルバーホン94世帯、GPS機能付き携帯電話174人、愛コンタクトサービス31世帯(内シルバーホン3世帯、携帯電話10世帯)となっています。