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宮崎県日之影町/郷土の誇りと魅力を生み出す地域の宝~日之影神楽の継承と森林セラピー事業~

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年1月21日
宮崎県日之影町伝統文化の写真

宮崎県日之影町

2626号(2008年1月21日)
町長 津隈 一成


町の概要

日之影町は、宮崎県北部の西臼杵郡に位置し、西に高千穂町、東は延岡市、北は大分県に接している。

町土は、277平方キロと広大で、その内、山林原野が92%を占め、傾山、五葉岳、丹助岳、見立渓谷、鹿川渓谷の自然資源にも恵まれている。

大人歌舞伎
大人歌舞伎

平成18年に九州で最初となる森林セラピー基地に認定されるなど、五ヶ瀬川のせせらぎが癒しと安らぎを与えてくれる橋と渓谷と緑豊かな人口5千人の山村の町である。

青雲橋、龍天橋、天翔大橋といった日本有数の長大橋や、日之影神楽、大人歌舞伎、宮水浄瑠璃、深角団七踊りなど素晴らしい伝統芸能が今も残っている。

町の宝・伝統文化

「一地区・一資源・一宝づくり」構想、これは、地域にある様々な資源や住民の誇るものを地域自らの知恵と工夫により守り育んでいこうという町の基本方針である。

具体的には、住民の自発的・独創的な地域づくり活動を支援し、ヒト・モノ・資源等が有機的に結びつき、経済の好環境が生まれる事を目指すものである。

現代の名工廣島一夫氏の竹細工は、国内は元よりアメリカ合衆国、英国博物館に展示されていて、日本の職人文化を伝えるものと絶賛をうけている。町内には、神楽面・わら細工・陶芸・竹細工・木工芸の職人も多く、地域に伝わる無形文化財の保存継承と加味し、貴重な町の宝となっている。

町勢要覧

日之影町に伝わる無形文化財の1つに日之影神楽がある。

日之影神楽とは、町内で受け継がれ各集落で舞われる神楽の総称。

その流れは大きく分けて深角・岩井川・岩戸・四ヶ惣神楽の4つからなり、22の集落にある神社にて奉納されている。元来、神楽は、冬場の決まった時期に、今年の実りに感謝と五穀豊穣を祈願し、守護の神々を招き、三十三番の夜神楽を地域総ぐるみの祭りとして受け継いできたものだ。

現在夜神楽として舞い継がれているのは、鹿川・大菅・大人の3地区だけとなったが、ほかの集落では、日神楽と形態を代えながらも集落維持の要と位置づけ「年中行事」として守られてきた。

神楽史をたどると、明治の始めに岩戸神楽の伝承を受け、現在までに約4代の世代交代が行われ、人口の減少、後継者不足、産業形態の変化といった危機を乗り越え現在にいたっている。

その要因を考えてみると、この地域の住民性に1つの要因があると思われる。人心は純粋にして質素で倹約的、義理堅く、森羅万象に神性・霊性を見いだし自然と交感してきた風土こそ、地域の結束を何よりも大切にしてきた人間力にあるのかもしれない。

日之影神楽

神楽を継承していくうえで、もう1つ大切なことがある。それは、冬場に限られていた地域の宝を広く紹介するために、発表の機会を作りながら、保存継承の力をいかに結束していくかであった。

雲下ろし
雲下ろし

町では、町全域に伝承する神楽の全てを無形民族文化財に指定、神楽伝承の中心となる町営の神楽殿を昭和60年に設け、毎年4月下旬の連休前を開催日と定め、日之影神楽まつり(21回)を開催してきた。

実行から運営は、日之影町神楽保存会が中心となって行うが、この日ばかりは、朝から夕方まで笛太鼓の音色に誘われ、たくさんの観光客が訪れ、参座の人々に「煮しめ」や「かっぽ酒」などを振る舞い、親交を深め神人合一の場を現出している。

また、熟練の奉仕者(ほしゃどん)達による神楽の競演は、それぞれの神楽の系統の違いが調子や面や舞に表れ、神楽ファンにとっては興味深いものとなっている。

町には他に、子供達が文化芸能に親しみを持つようにと、14の文化財愛護少年団が結成されている。その内の11団体が地区神楽であるが、文化財愛護少年団にとって神楽を習うことは、文化伝統の後継者としての義務ではなく、子々孫々受け継がれてきた魂の継承であり、郷土への愛着、そこに住む誇りを教わっているといっても過言ではない。

日之影神楽まつり

現在、日之影町には4つの小学校と1つの中学校があり、それぞれの校区に馴染みのある郷土芸能を児童・生徒の健全育成教育としてとりあげ、全員で運動会や文化祭等で披露している。400人の児童生徒のうち約3割の子供達が地域の郷土芸能の伝承に取り組んでいる。 夜間に地元の公民館へ集まり神楽や歌舞伎、団七踊り、棒術、田植え踊りなどの稽古に汗を流している。指導する古老、父母、青年らとの世代を超えた交流は「地域の教育力」へと繋がり、人前で舞い、踊る楽しさや喜んでもらえる感動が、伝承持続の力を生んできたと言えるかもしれない。

第21回日之影神楽まつり
第21回日之影神楽まつり

毎年、夏休みが明けてすぐに、青少年伝統芸能発表大会(第6回)を開催している。その場は、夏休み中に練習した技の披露の場でもあり、指導にあたった保存会や父母や学校、行政にとってもその成功は何ものにも代えられない喜びであり、住民に活力を与え地域おこしの原動力となってきた。

青少年伝統芸能発表大会

現在、日之影町には4つの小学校と1つの中学校があり、それぞれの校区に馴染みのある郷土芸能を児童・生徒の健全育成教育としてとりあげ、全員で運動会や文化祭等で披露している。400人の児童生徒のうち約3割の子供達が地域の郷土芸能の伝承に取り組んでいる。夜間に地元の公民館へ集まり神楽や歌舞伎、団七踊り、棒術、田植え踊りなどの稽古に汗を流している。

指導する古老、父母、青年らとの世代を超えた交流は「地域の教育力」へと繋がり、人前で舞い、踊る楽しさや喜んでもらえる感動が、伝承持続の力を生んできたと言えるかもしれない。

田植え踊り
田植え踊り

毎年、夏休みが明けてすぐに、青少年伝統芸能発表大会(第6回)を開催している。その場は、夏休み中に練習した技の披露の場でもあり、指導にあたった保存会や父母や学校、行政にとってもその成功は何ものにも代えられない喜びであり、住民に活力を与え地域おこしの原動力となってきた。

伝統継承と人間力形成

人間関係が希薄化してゆく傾向にある時代の中で、地域の伝統芸能を媒体として、地域の児童生徒、青年、壮年、お年寄りとが関わり合っていくことにより、地域の長い歴史の中で生まれ育った独自の文化や伝統芸能を学び、すたれがちになる感謝や礼儀といった素朴で純真な人間力の醸成が保てているのかもしれない。

地域づくりの今後の課題

本町では、豊かな森林資源を基盤とする独自の地域づくりを進めるため、基幹産業である農林業や継承されてきた地域の宝を魅力の1つに、森林セラピー基地「日之影」として発信していきたいと考えている。

森林セラピーロード男淵
森林セラピーロード男淵

四季折々の森林景観の中、リフレッシュ効果が実証された「癒しの森」の中で、自然が彩なす風景や香り、音色や肌触りなど、森の命や力を感じることによって、心身に元気を取り戻していただきたい。

5年前から取り組んできた「一地区・一資源・一宝づくり」事業は、様々な形で地域の宝を発掘し、住民自ら進んで事を為す「協働事業」として進み始めたところである。

19年度の新規採択事業として認定された農山漁村活性化プロジェクト支援事業を、千載一遇のチャンスと考えている。 日本一の高千穂牛やひのかげ栗といったブランド農産品の更なる確立、魅力あふれる森林セラピー基地であるため、大切に継承されてきた伝統芸能を積極的にPR発信していくことで、都市部から訪れる人達との心の交流が繰り広げられるようになり、地域の宝が町の誇りと魅力に発展していくと考える。町民、職員一致協力し、さらに魅力を発進していける町となれるよう頑張っていきたいと考える。

最後に神楽せり歌で結ぶ。

今宵さ 夜神楽にゃ 競ろとて来たがサイナー)

競らにゃ そこのけ わしが競る(ノンノコサイサイ)

今宵さ 夜神楽は 十二の干支で(以下、はやしことば省略)

飾りたてたる 神かぐら

神楽舞う者の所作のよさよ
うれしかろぞや親たちは

さまは三夜の三日月さまよ
宵にちらりと見たばかり

さんざ競ろ競ろ肌寒夜寒む
競れば熱つなる恋となる

一夜なれなれ背戸屋のなすび
ならにゃ背戸屋の恥となる