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神奈川県大井町/地域福祉の担い手となるヘルパーの養成

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年12月18日
富士とひょうたん池

神奈川県大井町

2583号(2006年12月18日付号掲載)
主幹 小島淑子


町の紹介

大井町は、神奈川県の西部に位置し、東西5.62㎞、南北5.18㎞、総面積14.41平方kmを有する町です。南は小田原市、西は酒匂川を境として開成町に、北は松田町と秦野市に、東は中井町にそれぞれに接しており、横浜からは約50㎞、東京都心からは約70㎞の距離にあります。

大井松田インターチェンジを擁する東名高速道路が町の北部を東西に走り、国道255号が東名高速と西湘地域を南北につなぎます。そのほか5本の県道と都市計画道路が町の交通網を形成しています。

鉄道は、国府津と沼津間を結ぶJR御殿場線が国道とほぼ平走し、上大井駅と相模金子駅があります。

地勢的に見ると、西は豊かな水を湛えた水田の向こうに霊峰富士を望み、東は酒匂川を経て箱根連山に達し、北は丹沢山塊、南は小田原市を経て相模湾を望み、晴天時には、横浜のみなとみらい地区のランドマークタワー等の高層ビル、大島をはじめとする伊豆諸島も見渡すことができます。

動機

地域の介護力の向上を図るために、地域の介護人材育成に係る支援事業を積極的に推し進める施策をとっている大井町。県西地区で唯一の福祉科目設置校として、地域の期待に応えるために即戦力となる介護人材の育成をめざす大井高校。その両者の意向が一致して地域協働の形での訪問介護員(ホームヘルパー)育成の取り組みを実現しました。

取組みの具体的なねらい

大井町では、地域に還元できる介護人材の育成を通した地域の介護力の向上をめざしています。

すでに大井高校との間で看護・福祉教育に係る職員交流を実施している医療法人同愛会主催の訪問介護員(ホームヘルパー)養成プログラムに、大井高校の生徒と地域住民が参加。大井高校では、介護関連資格の取得を通じた福祉科目受講者の進路実現の支援、同愛会では介護、看護、医療分野にわたる長年の経験とスキルの地域還元を目的としたものです。大井町は広報活動や補助金の支給などでこの取組みを全面的にバックアップし、今後は行政・教育・医療3機関の今回の協働を軸に、介護、看護、医療分野の人材育成を通して地域力の向上をはかるための広範な地域ネットワークづくりをめざしました。

ホームヘルパー養成講座の様子
ホームヘルパー養成講座の様子

平成16年4月当時、大井町の高齢化率は15.6%で、さほど高くはありませんでしたが、高齢者時代を目前にして地域福祉を考えてみると、担い手となる住民ボランティアや専門職であるヘルパーは必要不可欠です。是非町内にヘルパーが点在することを望み、ヘルパー養成を希望しました。

訪問介護員(ホームヘルパー)2級養成講座の概要

期間は平成17年8月20日~平成18年1月14日の毎週土曜日。講習の実施場所として、実習にあしがら広域福祉センター「ひかりの里」の外各事業施設、講義に小澤高等看護学院や大井高校の教室等を提供していただきました。対象者は、大井高校生および大井町をはじめとする地域住民で、定員は30名としました。

経過

この事業は、大井高校校長より2級ホームヘルパー養成講座の共催が提案され、町が地域福祉充実の意向に沿った事業と賛同したのがきっかけです。その後、平成17年度事業として医療法人同愛会の協賛により実施の方向に計画を進め、神奈川県知事の認可が降りたことにより一般に周知し、受講生募集となりました。経過については次に示します。

事業計画参加者は大井高校校長・教諭、小澤高等看護学院事務長・講師及び大井町役場福祉課事務担当。第1回目の事業計画打合せ会を平成16年11月16日、大井町保健福祉センターにおいて開催しました。

打合せ会では、福祉課が事業について大井高校からの相談を受けた後、大井高校・小澤高等看護学院が町長へ事業計画の提案をし、大井町賛同の意思表示がされました。

そして、大井高校・大井町・小澤高等看護学院の三者が、平成16年12月あしがら広域福祉センター施設長へ、事業内容の説明と実習現場提供の要請をしました。その結果、あしがら広域福祉センターから高校生のみ受け入れ可能との回答があり、一般受講者の実習施設は近隣市町の各施設、特別養護老人ホーム・中井町「富士白苑」、山北町「バーデンライフ中川」、小田原市「陽光の園」、介護事業者山北町「エニー介護サービス」と決定されました。

足浴の様子
足浴の様子

そして、平成17年3月大井町保健福祉センターにおいて、4月下旬の大井町長記者会見のためのスケジュール確認と、2月の事業指定通知を受けた広報「おおい5月号」での受講生募集広告の掲載について打合せを行い、ついに4月、小田原市庁舎内記者クラブにおいて三者による記者発表をしました。 その結果、あしがら広域福祉センターから高校生のみ受け入れ可能との回答があり、一般受講者の実習施設は近隣市町村の各施設、特別養護老人ホーム、中井町「富士白苑」、山北町「バーデンライフ中川」、小田原市「陽光の園」、介護事業者山北町「エニー介護サービス」と決定されました。

翌年1月には、小澤高等看護学院より町長へ事業概要説明があり、講義会場・実習施設の決定後、神奈川県へ認可申請提出。認定時期は2月下旬を予定しているとのことでした。

そして、平成17年3月大井町保険福祉センターにおいて、4月下旬の大井町長記者会見のためのスケジュール確認と、2月の事業指定通知を受けた広報「おおい 5月号」での受講生募集広告の掲載について打合せを行い、ついに4月、小田原市庁舎内記者クラブおいて三者による記者発表をしました。

翌5月には、広報「おおい5月号」とホームページへの募集開始を掲示、5月28日に大井町保健福祉センターにおいて受講説明会を開催した後、町補助金受講者へ決定を通知し、平成17年8月20日開校となりました。

平成18年1月14日までに研修期間終了・閉校式を迎え、町補助金交付申請締め切り。2月に修了者事業参加調整会議を開催し、3月補助金を交付、事業修了となりました。

苦心した点

フルタイム勤務者やパートに従事する方もいた受講生は、土曜日の座学と平日も数日混じった研修を、看護学校の完全なる補習授業等もあり一人の欠落者もなく修了することができました。しかし、家庭事情で欠席する受講者の対応には苦慮したようです。

事業への参加については、一部調整がつかない方もおられましたが、参加を募る際には事業のメニューを増やして選択してもらうなど工夫したり、会議の開催日程についても、参加者の意向を聞いたりして補助金対象者へのボランティア参加を促しました。

食事介助
食事介助

10名の町補助金対象者へのボランティア活動の支援を呼びかける際に、社会福祉協議会と町へのホームヘルパー事業については、介護保険の改正時期と重なって町の事業内容が明確に確定していかったため、ボランティアの期間・作業内容等具体的な事業内容を示すことができないということもありました。

補助金対象者には社会福祉協議会への登録も呼びかけましたが、登録者は数名にすぎず補助金受給の義務的な町事業参加のみに留まってしまう状況でした。

地域福祉の担い手を養成する事を目的としたホームへルーパー養成でありましたが、資格収得者はボランティアのみに留まらず実益を兼ねた事業参加を希望しています。町としては、将来有償で対応する事も検討する意向もあると伝え、この段階では要望のみの聞き入れとなりました。

今後の課題

第2回目となる今年度は、大井町社会福祉協議会への委託事業として開催することになり、昨年の事業展開と同様に募集が開始されましたが、補助金対象者としての応募者が7名しかおらず、10名の定員を割ってしまいました。

一般応募者は増加し高校生も昨年同様の人数確保はできたものの、事業の狙いとした地域福祉の担い手となる補助金対象者が集まらないということは、金額的補助による縛りがあることが問題と考えられます。自由に活動することが望まれているのであれば一般参加で良いのですが、地域に貢献していただくことが第一の目標であるためには参加事業の内容検討も必要と思われます。

また、参加者のボランティア意識のレベルにも格差があります。義務的な事業参加が見受けられ、他のボランティアとの温度差がでてしまうのが現場の状況です。開講時に明確に説明することにしていますが、町として事業の目的をどこにおいているか、どのような成果を狙っているか、受講者に望むものが何であるのかを十分解していただくことが必要です。

しかし、参加者にとって事業の魅力がどこにあるのかも考慮するべきであり、一人でも多くの参加者を募ることに重点を置くべきなのかと思案しています。

今年度事業の受講生にはこの点の理解を得ていただくこと、ホームヘルパー資格習得後の町ボランティア参加事業の充実等、地域福祉の担い手の養成を目標とする事業であることの再認識が必要と考えられますが、趣旨の理解を得るための手段に欠けているのではなかったかなど課題が残っています。

地域福祉の向上を目指し社会福祉協議会の事業活性化の手助けをも考慮し、今後町の補助金対象事業から社会福祉協議会単独事業に移行し、住民に対する地域福祉の意識付けを図って生きたいと考えています。

現在資格取得者は、町・社会福祉協議会へのボランティア事業参加以外に民間事業にも従事される方もおり活発な活動をされています。

こうした方々の福祉事業への多数の参加を希望し、確実に訪れる高齢化社会に対処していく基盤づくりの整備をし、介護予防事業に力を注ぎ健康で明るい地域社会を作ることに今後とも尽力していく所存でおります。