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福岡県筑前町/合併自治体の使命と課題~住み良い町から、住みたい町へ、さらに住み続けたい町へ~

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年9月11日
筑前町風景(ひまわり)

福岡県筑前町

2573号(2006年9月11日)  総務課長 堤 正治


はじめに~基本方針~

筑前町は、平成17年3月22日、2町(旧夜須町16,708人45.47平方kmと旧三輪町12,681人21.71平方km)の合併により誕生した人口29,389人、面積67.18平方kmの町で、福岡県のほぼ中央に位置しています。

これまで両町は地縁血縁も多く、以前から各種団体の懇談や懇親があり、合併協議が始まってからはスムーズに進んだ方でないかと思っています。しかし、2つの合併のデメリットも顕著でした。旧両町長が選挙に出馬、激しい選挙戦になったこと、そして何より驚いたのは、行政運営の違いや町民・職員の気質の違いがあったことです。当初、「こんなに違っていたのか」「こんな筈ではなかった」などの囁きや不満、戸惑いが聞こえ始めました。就任した旧三輪の手柴町長は、選挙公約でもあった「協調融和・一体感」「バランスのとれた行政運営」さらに「両町の良かとこ取り」を強く指示しました。

そして、『開かれた行政運営』を実践するために行うべき具体的な事柄を次のとおり確認したのです。

  1. 基本的な方針=信頼される役所を目指して
    「役場は住民の役に立つところ~日本一の窓口サービス」 (住民本位、情報公開、情報・課題共有、ガラス張り・スピード)
    1. お客様優先:挨拶・わかりやすい説明・相談力
    2. 報告・連絡・相談:上下双方向・一人で悩まない
    3. 係、課の壁をなくす:仕事はチームで
    4. 無理、無駄を無くし節約を心がける
  2. 四役会=重要会議として随時開催
  3. 定例拡大四役会=月1回定例庁議前に開催(四役+総務課長・企画政策課長・総合支所長・財政課長・教育課長・総務課課長補佐)・庁議事前協議・調整、政策会議、情報交換、意見交換を行う
  4. 臨時拡大四役会=随時開催(定例拡大四役回メンバーと担当課長、担当職員等)・企画調整会議と各種課題調整会議を開く
  5. 定例庁議=月1回 原則毎月初日に開催(課長以上全員) ★採鉱の意思決定機関として情報・課題の協議・提案と共有を図る
  6. 各課ミーティング=庁議報告等最低月1回開催
  7. 朝の会=本庁・総合支所別に毎月8時20分に開催
  8. 職員の礼儀・マナーの向上に努める。

行政改革~合併直後の取組み~

合併は最大の行政改革でありますが、国・総務省は平成17年3月29日付けで「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」を策定し、筑前町もタイムリーに、行政改革大綱策定に取り組む事になりました。

行政改革に取り組むにあたり、筑前町行政改革についての見解を示し、職員の理解と協力を得るために、平成17年8月1日、町長名で全職員に次のことを通知しました。

  1. 行政改革は、住民や納税者の信頼を得る行政運営のために、避けて通れないというよりは、積極的に取り組まなければならない。
  2. 計画的な行政改革推進と説明責任は、当然のことである。
  3. 行政改革の推進は、町行政における重要かつ緊急の課題である。
  4. 行政改革は全庁的取組で行うことに意義があり、実効性など結果が求められている。従って、管理職を筆頭に全職員の意識改革と参加を求め、行政運営を等しく担うということの大切さを自覚・意識しなければならない。また、率先すべきところは率先する。
  5. 先ずは全職員の自主的、主体的な危機意識と改革意欲に期待する。更には必要に応じて、第三者の評価・意見も取り入れ、信頼性・中立性や客観性のある改革をめざす。→基本的に行政評価を導入する。
  6. 職員の士気や慎重な姿勢・取組みも重要であり、急進的取組みと漸進的な取組みなど計画的な改革が重要である。
  7. 行政改革は、住民と議会と行政の三位一体改革であり、痛みも伴いそれを分かち合う必要がある。
  8. 行政改革は、改革・改善のみならず現行政運営やその目標の整理・確認のためにも必要である。
  9. 今回の行革の特徴について合併直後の行政改革である。漸く落ち着きつつある職場環境と思われるが、筑前町行政改革大綱策定をやり遂げ、改革を推進し、更に住民の信頼を得て、住み良いまちづくりを構築する責任が求められている。(合併はゴールではなくスタートである。) ※今回は、行政改革の内容について、特に住民の支持と理解が不可欠である。 ※国県の指摘のためにではなく、また、モデル市町村はあくまで参考であり、まさに地方分権の実践であり、筑前町の未来のための独自の行政改革である。

なお、筑前町行政改革大綱は、平成18年2月10日筑前町行政改革推進委員会の答申を受け、庁議で最終決定し、議会に報告し、住民に公表しました。

機構改革~継続的な検討課題として~

次に、筑前町行政改革推進本部の組織・機構改革について述べます。

合併時の組織・機構については、合併の目玉になった課に多小無理があったり、2町のバランス上、一部支課を作ったりと効率性に問題があり、大いに議論になりました。しかし、職員の考えはまとまりやすく、スムーズに進みました。その他の議論・意見については地域エゴも感じられたところです。

1.基本的な方針

合併時の方針『2町合併という大きな変化時のスタートであり、住民サービスの向上を求めていく必要から、毎年見直しの検討を行う。』また、緊急、重要かつ継続課題である行政改革推進による。

  1. 計画的な定員管理の適正化を図りつつ、「新町における組織・機構の整備方針」を実施する。
    1. 地方分権時代における各種行政課題に迅速かつ的確に対応できる組織・機構
    2. 町民の声を適正に反映することができる組織・機構
    3. 町民にとってわかりやすく、利用しやすい組織・機構
    4. 指揮命令系統及び責任の所在が明確な組織・機構
    5. 簡素で効率的な組織・機構
  2. 目標年次
    1. 緊急な課題の検討を行い、17年度中に実施する。
    2. 18年4月1日現在の組織・機構の検討を行う。
    3. その他、将来の組織・機構の在り方について検討する。
  3. 計画的な定員管理の適正化と住民サービスの向上、経費削減及び住民感情に配慮しつつ、より効率的・合理的な組織・機構を目指すために検討する。

2.具体的な方針

  1. 時間を掛けて、本庁中心への組織・機構にもっていく。
  2. 組織・機構だけでなく例外もあるが、2つのものは1つにする方向性で調整していく。
  3. 2つの町の合併ということで、最低のバランスは必要と考える。その際三輪地区は、「めくばーる」 (文化・健康・学習・福祉の要素をもつ町の複合施設)の活用を図る。
  4. (1)ではあるが総合支所は三輪地区住民サービスへの配慮から将来的にも維持する。なお、三輪地区の構想について、複合施設「めくばーる」を教育と健康・福祉の拠点とする。
  5. 不都合が多い組織の統合、簡素化の問題は、住民サービスの低下にならないよう、広報説明に配慮しつつ、合理性・効率性に留意して、18年4月に実施する。(健康福祉課・農林商工課の統合を実施)
  6. 全般的な役職者の適正配置については、合併時の配慮と年齢構成の偏り、絶対数の多さ、職員の士気などに問題があると思われる。係の数の検討も必要である。
  7. 管理職の人事管理上、副課長制を導入する。
  8. 一部課の再編を行い、まちづくり課、人権・同和対策室を設置する。
    1. コミュニティー、男女共同参画、安心・安全。
    2. 人権・同和対策室 ※ソフト事業とまちづくりの一本化、一体感、環境課の独立
  9. 一般非常勤(嘱託系)の配置は適宜行うが、極力最小限に止める。
    1. 雇用対策と言えなくもない。しかし、必要最低限が原則。
    2. 緊急時には臨時職員を配置する。
    3. 事務系には派遣職員は、原則配置しない。
  10. 一般非常勤、臨時職員のあり方・任用基準については内規を作る。
  11. 分掌事務の見直しも実施する。
  12. 民間委託の促進、民営化の導入を検討する。

まちづくり課新設のねらい~真に住み良い町の実現~

社会が荒んでおり、胸が痛む悲惨な現象や事件事故が多発しています。少子化・高齢化そして人口減少という時代の大きなうねりの中で、価値観の多様化という、一言では片付けられない深刻な問題が山積している状態です。そのような中で、

「暮らしを重要視している住民は、行政に何を求めているのか。」
「住民にとって一番必要なまちづくりとは何か。」
「行政は、住民のためにどんな施策を展開すべきか。」

を真剣に問わなくてはなりません。

行政の責任において、筑前町の住民にとっての生活や暮らしを考えてみた時に、そのポイントとなるイメージは、次のとおりです。

  • いのち輝く人権尊重の精神が行き届いた住み良いまちづくり推進
  • 生活に・暮らしにとって安心できる安全なまちづくり推進
  • ぬくもりのある 支え合う・住み良いまちづくり推進
  • 生活に魅力ある住み良いまちづくり推進
  • 男女共同により元気な活力のある住み良いまちづくり

支え合い・ぬくもりのある・安心安全な地域社会の構築。すなわち真に住み良い筑前町の実現のためには、ソフト面におけるまちづくりの充実・展開が必要であると考えました。「住み良い町から、住みたい町へ。さらに住み続けたい町へ。」の実現です。

そのため、ソフト面における重要な4つのまちづくり部門(人権、消防防犯、コミュニティー、男女共同参画推進)を一課にまとめ、質の高い住民サービスの向上と親身になって相談を受ける体制、わかりやすい施策の展開とスピードある対応をすべく、相乗効果や波及効果・一体感をねらい、住み良い町づくりを推進します。

人事改革と男女共同参画の推進~女性助役の誕生~

合併時の人事については、中途半端な部分、人事構造上の課題の克服や適材適所の人事ができていない点があり、憂慮すべき事態でした。

合併してからの諸課題山積の解決や合併の成果をあげる組織・人事のためには、「組織は人事で決まる」(「人事改革」)とも言える思い切った人事配置が必要と考え、18年4月、人事異動方針に基づき、職員数の約60%にあたる人事を行いました。

また、筑前町男女共同参画については、合併協議においても、男女共同参画社会の実現を新町の重要な政策課題であると位置づけ、合併協定項目の中に「男女共同参画社会に向けての条例制定、プランの策定あるいは推進体制を速やかに確立すること」を謳いました。

平成17年6月には、女性助役が誕生いたしました。

1.これまでの経過

  • 平成17年7月に「筑前町男女共同参画推進審議会」を設置し、『筑前町における男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的かつ総合的な施策及び重要事項の調査審議』の諮問をし、途中、中間報告会も開催し、条例案について、町民の方々に意見を求めました。
  • 平成18年1月、「筑前町男女共同参画推進条例案」の答申を受け、
    ①関係課との調整、②県の関係機関との調整を行い、その答申を尊重した『筑前町男女共同参画推進条例』を同年3月、町議会定例会に上程し、全会一致で可決、同年4月1日(一部10月1日)より施行しました。
  • 審議会は、本町初の公募による委員5名を含め14名全てを筑前町民で組織し、男女、旧町の比率をそれぞれ5:5の構成としました。条例案の審議は、本町に相応しい条例、町民にとって「わかりやすい」「実効性のある」条例を念頭に活発な意見交換がなされました。

国の男女共同参画社会基本法の趣旨や旧三輪町の条例を尊重し、旧町での取組みや課題、他の自治体を参考にするなど、様々な角度から審議していただきました。それぞれの委員の方が自分の想いを出し合い、一つ一つの「言葉」に議論しながら回を重ね、月1回だった会議は、月2回ペースの開催となり、時間(間隔)を空けずに次の会議となったので、より深い審議ができたように思います。

全審議委員が必ず発言され、住民の声が入った条例案が出来上がったと確信しています。住民の方への情報発信も兼ね、第2回の会議から公開としました。

筑前町風景(大藤)
筑前町風景(大藤)

中間報告会は「人権フェスタ」の中で開催したことにより多数の参加者を得ることができました。

2.筑前町男女共同参画推進条例の特色

  • 町の審議会等設置時のクオータ制の規定
  • 男女共同参画推進モデルの推奨
  • 指名競争入札参加資格申請時の男女共同参画推進状況の報告
  • 農業者、自営業者への支援
  • 苦情処理機関の設置

3.今後の展望

今後は、国の男女共同参画基本法及び町男女共同参画推進条例に基づいた「筑前町男女共同参画プラン」(平成18年3月策定)により、様々な施策を実施していきます。

総務課長 堤 正治