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北海道本別町/日本一の巨大迷路 「とうもろこし3万坪迷路」で地域づくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年5月26日
空からみた巨大迷路の全景の写真

空からみた巨大迷路の全景


北海道本別町

2440号(2003年5月26日)  北海道本別町長 高橋 正夫


はじめに

本別町は北海道の東部、十勝川の支流、利別川沿いの沖積土地帯に広がる肥沃な土地に恵まれ、良質な豆を特産品とした畑作と酪農が調和した農業を基幹産業として発展してきました。

地理的には、十勝支庁管内の東北部に位置し、東は浦幌町・釧路管内白糠町に、西は士幌町・上士幌町に、南は池田町、北は足寄町にそれぞれ隣接しています。

本別町は東西に31.8km、南北は16.5kmの広がりを持ち、総面積は391.99平方kmに及んでいます。東部と南部は標高200m前後の丘陵、西部・北部は50mから300mの段丘地となっており、一級河川十勝川水系の利別川と美里別川の両河川に沿って平地が形成されています。

気候は、内陸性気候を呈し、夏期の気温はやや高いが気温格差が大きく、冬期の乾燥が著しい状況となっています。気温は9月上旬から急に下がりはじめ、平均気温5.8℃、年間降水量712㎜、降雪量は92cmと少ないものの、年間の寒暖の差が大きく、最高・最低値で約60℃となります。年間日照時間は1,722時間と北海道的にみても多い状況となっています。

巨大迷路の誕生

「とうもろこし3万坪迷路」は、昭和63年より毎年8月中旬、10ha(3万坪)の緑肥用デントコーン畑に、子供たちから公募した図案を参考にして、幅3m総延長約8kmの迷路を作り上げます。

会場には展望台、お祭り広場、麦束ピラミッド、特産品コーナー等を設置し、一日中グリーンジャングルで楽しめるものであり、開催期間中、じゃがいも・とうもろこしの収穫祭を始め、麦わらプール宝さがしゲーム等各種ミニイベントを開催しており、来場者と地元の人々との交流が、大空と緑のもと自由に繰り広げられます。来場者は全国各地より訪れており、毎年、一万人以上の方が日本一大きい巨大迷路に挑戦しています。

人口一万人程度の町において、事業費一千万円を超えるイベントは平均入場者数15,000人とともに、基幹産業である農業、更には観光産業の地域経済に及ぼす効果は甚大なものがあります。加えて、未来に大きな夢を描く子供たちが、畑の中で泥んこになって遊ぶことにより、土との触れ合いの大切さと土の温もりを知ることにより地域の大切さを知る良い教室になっています。

タイムトライアルに初挑戦の写真

タイムトライアルに初挑戦

麦束ピラミッドの写真

麦束ピラミッド

迷路の様子の写真

迷路の様子

土づくり

安全で活力のある農産品を生産するためには、畑の「土」が肥えていなければ良い農産品が生産出来ません。化学肥料等に頼らず、デントコーンを畑にすき込むことにより「土づくり」を行っています。

この「土づくり」が迷路の始まりです。緑肥用として植えるデントコーンを単にほ場にすき込むだけでなく、ほ場いっぱいに子供たちの描いた絵を参考に迷路として遊ぼうと考え『とうもろこし3万坪迷路』を実施しています。地域住民と都市住民が実際にそのほ場に立つことにより、農業の現状を知りそして理解を深めてもらう、更に子供たちと大人が一緒になり、土の温もりと泥んこになって遊ぶ喜びを伝えることにより、本町の基幹産業である農業の振興と観光産業の振興を図るものです。

地域づくりにおける意義と効果

農業を基幹産業としている本町にとって、地力回復による有機農法・減農薬の実施による安全な食料生産はガット合意後の日本の農業にとって最も重要な課題であり、消費者に安全な食料を提供することが、日本の食糧基地十勝の農業振興に必要であります。

このイベントは北海道・十勝の広大な畑を利用しなければ出来ないイベントであり、平成9年3月にホクレンが主催するホクレン夢大賞「農業応援部門」の大賞を受賞したことは、この事業が単なるイベントではなく、農業の基本である「土づくり」を通した農業の確立を目指した、「とうもろこし3万坪迷路」の当初の目的を確認することが出来ました。

さらに、今、クリーンな農業が全国的に叫ばれており、本当に「土づくり」を考え、人にやさしい農業をめざしている本町にとって「とうもろこし3万坪迷路」はクリーン農業のアドバルーンであり、全国へ本別町の農業を発信するものであります。

「とうもろこし3万坪迷路」は全国で始めての試みであり、日本一面積の大きい迷路と言えます。タイムカード提出者によると、全国各地からの入場者がおり北海道においては百以上の市町村からの入場があり、広く他の地域との交流が推進され、知名度の向上、地域経済の活性化と観光産業の振興に貢献しています。さらに、迷路の空撮を利用した、テレフォンカード、文(ふみ)カード、とうもろこしのオリジナル缶詰等、各種グッズも販売しており「とうもろこし3万坪迷路の町」本別町は、クリーンな農産物を全国へ向け、発信をしています。

また、このイベントをきっかけに町内の異業種の青年達が集まり、一つの目的に共に苦労する中で、強い連帯感を持ち、その後の町内の他の催しに協力する等、まちおこしの起爆剤になっており、新しい地域おこしグループも設立し、迷路を通して地域の活性化が図られています。

「とうもろこし3万坪迷路」の企画・運営は、町内の各種団体による実行委員会方式で行われており、町民手づくりのイベントであり、町民の自主性と行政のバックアップにより本年度も8月9日から15日までの7日間開催されます。

麦わらプール宝さがしの写真

麦わらプール宝さがし

主体性・地域性

「とうもろこし3万坪迷路」は、異業種の仲間たちが集まり始めたイベントであり、農業者・商業者・建設業者・自営業・公務員等多くの町民の手づくりにより開催されています。第4回目からは、実行委員会体制を確立し、企画・運営されています。

町内の各種団体や個人会員がそれぞれの立場で出来ることを実施し、町民と行政が一体となったイベントを開催しており、これからのまちづくりにも応用できるものであります。実行委員会への加入は、団体加入及び個人加入で、参加・脱退ともに自由であります。特に、第1回目から携わっているメンバーや一線を退いた個人も迷路OBとして忙しい開催期間中は、手伝いとして運営に当たっています。

「継続は力なり」とのことわざのとおり、本年で16回目を迎える「とうもろこし3万坪迷路」は、名実ともに十勝を代表する夏のイベントであり、全国各地から多くのファンが日本一大きな迷路に挑戦しています。

終わりに

「とうもろこし3万坪迷路」は、昭和63年、異業種の仲間たちが集まり始めたイベントで民間人自らが企画・計画したものであり、行政的な発想では開催することは出来なかったと考えます。

平成3年度より本別町・JA本別町・商工会等15団体で実行委員会体制を組織し、現在の形となり地域住民全体で迷路を運営しており、地域住民が一体となって地域づくりに取り組んでいます。

迷路の当初の目的である「土づくり」は、現在の厳しい農業情勢の中でも重要なポイントであり、消費者が安心して食べられる農産物を生産することが、日本の食料基地北海道の使命であり農業を基幹産業とする本町の使命と考えます。

また、過疎地である本町にとって「とうもろこし3万坪迷路」開催による、交流人口の増加は観光客の増加にもつながり、観光産業の振興にも寄与しています。 

「人にやさしい一万人家族のまちづくり」をキャッチフレーズにまちづくりを進めている本町は、迷路を通じ、自然にも、環境にもやさしい取組みを展開しております。

是非、一度、日本一大きい迷路に挑戦してみてください。お待ちしております。