おしえて!いなかビジネス ほんとのところ
地方は仕事がない?どんなスキルが必要?そんな「いなかビジネス」にまつわる疑問を高知県を拠点に活動する「いなかパイプ」の佐々倉玲於さんにぶつけてみました。インターンシップ事業で培ったノウハウはまさに金言!
いなかパイプとは
地方はほんとうに仕事がないの?
選り好みしなければ意外とある。ただし、マッチングが課題
「田舎は仕事がない」とよく言われますが、そんなことはありません。農林漁業をはじめ土木系、介護系、事務系など、一次産業やニ次産業を問わず探せば意外とあるものです。ただ、そういった都会でもできる仕事は、田舎暮らしにあこがれている人にとっては、対象外なのかもしれません。
事業主の求人情報が発信されず移住希望者にとどいてないことも多く、そのいきちがいの解消を「いなかパイプ」としても取り組んでいきたいです。
やっぱり副業をしなくてはダメ?
就農するなら、副業があると安心。「不安定」ではなく、リスクヘッジと考える。
新規就農の場合、農業収入だけではすぐに生計を立てられません。農業が軌道にのるまで、ほかの農家の仕事を手伝うこともめずらしくありません。そうなると、人手が必要なときにアルバイトで呼ばれたりするので、季節によって複数の副業をもつことも。それが毎年恒例になるので安定します。
また副業が多ければ、仕事が1つなくなっても打撃が少ない。リスク分散にもなるんです。
田舎の仕事のいいところとは?
日本をささえているという充実感!キーパーソンともつながりやすい。
月並みですが、身近に山、海、川といった自然があること。山や川など自然が日常にある。都会ではまず味わえません。
あとは仕事での充実感でしょうか。第一次産業に従事する人はいわば日本の「食」の担い手。都会に対して、もっと自信をもっていいのですが、現実は買いたたかれている生産者が多いですね。
人と人との距離が近いので、おもしろいキーパーソンともつながりやすい。つながった人と、新しいビジネスをつくりだすこともできます。
田舎の仕事のわるいところとは?
都会の消費者と物理的距離がある。田舎ならではの排他性も。
地理的な問題で、都会の市場と距離があり不便です。クルマで何時間もかけて商談の場に向かうということもざらにある。ただ、それも慣れてしまえばどうということはありません。
地域によっては排他的なのも事実。その土地になじむまでは、地元民からきびしい言葉をもらうこともあるでしょう。場合によっては都会以上に強い精神力が必要かも。
都会で習得したスキルは役に立つ?
特技や趣味が役に立つことも。スキル以上に、対話力が重要
役に立ちます! とくに地域資源を活用する企画力やマネジメント能力のある人は重宝されると思います。パソコンやイラストなどの趣味や特技が役に立ったりしますね。
スキルも大事ですが、いちばん必要なのは人間性やコミュニケーション能力です。田舎の生活は「信用第一」。深い人間関係を築けなくては、仕事は生まれません。
田舎の仕事にむいている人とは?
失敗してもへこたれない強い精神力をもっている人材
精神的に自立している人です。仕事も縁故もない土地でやっていくわけですから、中途半端な志では、心が折れてしまいます。移住一年目はまず地元になじむだけで精一杯。二、三年もすれば地域の一員として認められ、仕事をいろいろ任されるようになる。
起業もいっしょです。一度や二度の失敗は必ずあります。そのとき、あきらめるのではなく、次のステップに生かせるかどうかが肝要です。
田舎で新事業に取り組むとき誰を頼る?
地元で力をもつ企業をパートナーに!地元民からも信頼されて仕事もスムーズ
私の場合、地域資源を生かした商品開発で注目されている地元企業「四万十ドラマ」の仕事を手伝っていたのですが、ときには社名を使わせていただいて、仕事を取ってくることがありました。雇用関係はありませんでしたが、「四万十ドラマ」の名刺を持つことで、地元の人からも信頼され、スムーズに仕事ができるようになりました。
いまでは「いなかパイプ」の名前だけで仕事ができるようになってきています。もし、誰も頼らなかったら、いまの事業規模になるまでに10年はかかっていたでしょう。
田舎で起業するのに、おすすめの事業はある?
どんな起業も可能。ただし、事業規模はこじんまり
成功する事業、起業しやすい事業といった必勝法はありません。都会、田舎にかかわらず、どんな事業にもリスクがともなうもの。甘い考えでは、起業してもすぐにいきづまります。起業したい、という強い思いと覚悟が大切です。
それをふまえると、どんな起業も可能といっていいでしょう。事業にもよりますが、IT系のベンチャー企業なら、億単位の稼ぎも可能かもしれません。しかし、田舎に暮らす人を対象にする事業なら、その規模は自分の生計が立てられる程度のものになると思います。