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児玉副会長が地方分権改革推進会議地方団体ヒアリングで意見陳述 ~事務事業の在り方に関する中間報告について~

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年9月3日
意見陳述する児玉副会長の写真

△意見陳述する児玉副会長(中央)

地方分権改革推進会議(議長・西室泰三東芝会長)は9月3日、全国町村会、全国知事会全国市長会の代表者から同会議が6月17日に公表した「事務事業の在り方に関する中間報告」に対する意見のヒアリングを行いました。
 全国町村会から出席した児玉更太郎副会長(広島県高宮町長)は、地方分権改革についての基本的な考え方、事務事業の分野別の基本的な見直し方針、税財源配分の在り方、新しい行政体制の在り方等について意見陳述を行いました。
 児玉副会長の発言要旨は次のとおりです。

 本日は、発言の機会を与えて頂きまして、誠にありがとうございます。
 去る6月17日に「事務事業の在り方に関する中間報告」が、発表されておりますが、ここに至るまでの、皆様方のご努力に対し、心から敬意を表しますとともに、中間報告で示された、基本的な改革の方向につきましては、地方分権の更なる推進という観点から、基本的に評価できるものと考えております。
 重要な内容を持つ「中間報告」でありますので、私どもも役員の町村長さん方にアンケート調査を通して、その受け止め方なり、感想を伺ってみたところでありますが、当然のことながら各分野あるいは個別事項につきましては、様々な考え方があり、一概に集約はできない状況にあります。
 従いまして、本日は、私見を交えながら「中間報告」に対する意見や要望を中心に、お話をさせていただきたいと存じます。
 まず、第一の「地方分権改革の基本的考え方等」についてであります。ここで述べられている、地方分権改革の基本的考え方なり、その方向につきまして、概ね異存はありませんし、基本的に評価するものでありますが、2点について意見を申し上げたいと存じます。

1.「地方分権改革の基本的考え方等」について

ローカルオプティマムの実現

 その第1点目は「改革の方向」の1番目に述べられている「ナショナル・ミニマムの達成からローカル・オプティマムの実現へ」という点であります。「改革の方向」で述べられている「地域における行政の総合化の推進」等4点については、まさにそのとおりでありまして、是非そうした方向で改革を進めていただきたいと考えておりますが、「ローカル・オプティマム」という考え方を、実際の町村行政との関係でどう観念したらよいのか、明確なイメージが湧いてこないのであります。
 即ち「既に多くの分野でいわゆるナショナル・ミニマムを達成している前提に立ち」と言われ、しかもナショナル・ミニマムの対象となる行政分野が具体的に示されておりません。
 例えば上水道の普及率を例にあげれば、確かに町村においても90%を超えている状況にある一方、私の地元広島県の町村においては、未だ50%に満たないところがいくつもあります。また下水道について言えば、平成13年度末で、東京都の特別区を含む指定都市ではほぼ100%に近い普及率となっていますが、町村では25%ほどにとどまっているのが現状です。現在、各地域で汚水の衛生処理率の向上等を目指し、懸命の努力をしている状況下であり
まして、行政の目標をナショナル・ミニマムの達成からローカル・オプティマムの実現へと転換されるべきと言われても、多くの町村ではとまどいを覚えるのではないかと思います。国の地方への関与・規制をできるだけ排したいという考え方はわかりますが、この点については、より具体的にわかりやすく述べていただきたいと思います。

社会資本整備の役割分担の見直し

 申し上げたい第2点目も、「ローカル・オプティマム」に関連すると思いますが、「事務事業の見直しに当たっての一般的な指針」の中で、述べられている「社会資本整備の役割分担の見直し」についてであります。
 「同種の事務事業の統合化等」他の五点については、異存はないわけでありますが、「社会資本整備に関しては、制度創設時の目的を相当程度達成したもの」とされている点については、私ども町村における各種社会資本の整備状況を考えれば、そのように認識をされることは、いかがなものかという思いを持っている町村長が多いということを申し上げておきたいと存じます。

2.「事務事業の分野別の基本的な見直し方針」について

 次に、第二の「事務事業の分野別の基本的な見直し方針」について申し上げます。

社会保障(介護保険制度、医療保険制度等)

 最初に、社会保障分野の介護保険制度についてでございますが、町村は介護保険制度施行以来、高齢者に対する必要かつ十分な介護の提供に懸命の努力を傾注しているところであります。制度も3年目を迎え大筋で順調な船出をしたものの、来年度からの保険料改定に関する新聞報道等では、平均で保険料が1割程度上昇し、最も高額な市町村では9,000円程度にまで達するという報道等もなされております。
 現実問題としてあまり保険料が高額となると、保険料収納率の低下による歳入欠陥が生じ、第二の国保となることが危惧されております。初の保険料改定に際しては、特別の財政補填を行うなどの対応が必要であると考えています。
 また、制度を安定的に運営するためにも、現在の施設介護への依存から居宅介護主体へ移行するよう、例えば家族介護に対する現金給付の制度化等を検討するとともに、療養型病床群については、全て医療保険の適用とすることが必要であると考えています。
 次に、医療保険制度についてでございますが、我が国は国民皆保険制度を採用しており、将来に亘って堅持することが国民の総意であります。
 しかしながら、人口の4割弱が加入している国保は、平成12年度決算で法定分の一般会計繰入金3,953億円の他、法定外の繰入金として3,197億円もの巨額を投入しているにもかかわらず、1,029億円の赤字となっております。この一般会計からの多額の繰り入れが、毎年恒常化している現状を考察いたしますと、国保制度は破綻している状況にあります。
 国民皆保険制度を将来に亘って堅持するためにも、国民が安心して医療を享受できる体制を整えていくことが必要であると思います。我々がかねてから主張している医療保険制度の一本化を実現することにより、負担の公平化及び財政基盤の強化が図られることになると考えております。
 また、児童虐待等についての市町村の役割の強化につきましては、児童相談所や警察等との連携は必要と考えますが、市町村行政が介入する範囲や、専門職員の配置の問題等があることから、慎重な対応を求める意見が多くございました。仕組み等を改められる場合には、移譲を受ける町村側の意思をまず優先していただきたいと存じます。当然なことながら、事務移譲をする場合には、これに伴う財源等の的確な措置を講じていただきたいと思います。
 また、幼保一元化につきましては、推進を図ることについて賛意を示し、資格の一元化等についても検討を進めるべきとの意見も多いわけですが、その場合には経験年数を考慮する等、現職員への配慮を考えて欲しいとの意見もございました。

教育(義務教育国庫負担制度等)

 教育関係では、初等中等教育に関する国の関与の見直しを図り、画一的な教育を変革し、地域や学校が創意工夫を凝らすことが可能となるよう自由裁量の範囲を高めるとともに、個性あふれる多様な教育の実現を目指すべきであると思いますが、教育は国家の基盤でもあり、国と地方が責任を分担しあい、一定の内容、水準を保つべきでもあると考えております。
 義務教育国庫補助負担制度につきましては、町村の財政支出とは直接関係ありませんが、町村の立場から申し上げますと、今後の改革見通しや、制度、内容などがまだ示されていないこともございまして、教育水準が低下するのではないか、町村に財政負担が跳ね返ってくるのではないか、といった懸念を持っておられる町村長が多くいらっしゃいます。従って教育水準の維持、財源の確保については、特に留意して検討していただきますようお願い申し上げます。
 また、中間報告に記述はございませんが、この機会に事務移譲と国の関与に関する一事例を申し上げ、ご検討をお願いできればと存じます。
 本年4月より市町村の小中学校等の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償につきましては、関係法律の改正により、市町村が条例を定めて、行うこととなりましたが、補償基礎額の金額等は、政令に定める基準に従うこととされており、地方の裁量で行うことができない状況にあります。このように法律によって事務移譲をされても、政令等により実質的な地方の裁量を認めないといった関与につきましては、是非とも見直しを図っていただきたいと存じます。

公共事業(国庫補助負担金事業の廃止・縮減、農地等の土地利用制度)

 公共事業関係につきましては、事業主体としての国と地方の役割分担を明確にするとともに、国直轄事業の実施に係る地方公共団体との事前協議制度の導入及びその内容拡充については、基本的には賛同するものであります。
 しかし国庫補助負担金事業の廃止・縮減につきましては、地方の主体性を活かした社会資本の整備を推進する視点からは理解できますが、補助金に替わる財源措置が不明確な段階ではにわかには賛同しがたいところであります。この点について、財政力の脆弱な町村の実情やニーズも踏まえ、十分なご検討をお願い申し上げます。
 個別課題の中で都市計画、農地等の土地利用制度についてでありますが、市町村への権限移譲について「特別市等一定の規模、能力のある市町村への権限移譲を検討すべき」という指摘がなされておりますが、意欲と能力のある全ての市町村を対象とすべきであり、いやしくも市町村の規模によって画一的に行われるべきではないと考えます。
 農林水産省においては、農山村固有の魅力の維持向上と農業・農地への多様な参画の促進が図られるよう、法律による諸規制から市町村の土地利用調整条例を基本とした新たな枠組みへの移行を検討し、来年の通常国会に所要の法案を提出すると聞いておりますが、私どもとしては大いに期待しているところであります。
 なお、森林管理の在り方については、中間報告にご指摘はございませんが、保安林の指定・解除に係る市町村長の権限の強化を求める声が、強いことを申し添えておきます。
 また、廃棄物対策については、不法投棄に対する法的規制の一層の強化等が必要であると考えます。

産業振興(農林水産業振興政策、農業委員会制度)

 次に、産業振興関係についてでございますが、全国の町村長は、地域の農林水産業や商工業をめぐる環境が一段と厳しくなる中で、できる限りの知恵と工夫により、特色ある産業づくりと地域の活性化のため、努力を重ねているところであります。こうした中で、農業改良普及制度は県の事業でございますが、町村の立場で申し上げますと、地域農業の維持発展に貢献しているものの、地域の実情にあった弾力的な方向での見直しが必要であるという意見がありました。
 また、農業委員会のあり方につきましては、その果たす役割を考えれば、見直しは慎重にすべきとの意見がある一方、制度を廃止し、市町村長部局に権限を移譲すべきであるという、意見を持つ町村もありますので、地域の実態を十分に踏まえた検討をお願い申し上げます。
 なお、農業委員会交付金の一般財源化につきまして、市町村が所要の財源を確実に確保することが出来るようお願い致します。

治安その他(市町村消防の充実強化等)

 消防分野では、中間報告にもございますように、近年、多様化、大規模化する火災、地震、風水害等災害に対応し、地域住民の生命を守り、安全を確保するため、消防力の充実、大規模災害対策の推進や救急業務の充実を図ることが必要であると考えております。
 消防行政は市町村消防を基本とし、大規模・特殊災害等に対応するための広域的な体制を構築することも、今後の消防防災の方向性であると思います。
 具体的には、市町村の消防防災力の自主的整備を図るため、常備消防の義務設置・救急業務の実施義務に係る政令指定を廃止する一方で、地域の防災力の総合的な向上を目指して、減少傾向にある消防団員の充実確保や自主防災組織の育成のための国の支援を強化することが必要であります。
 また、大規模災害の対策として、ヘリコプターの確保・計画的配置の推進を図るほか、広域化や緊急消防援助隊の整備のため、国の役割の充実強化、責任に応じた国の財政負担の導入が必要と思われます。

3.税財源配分の在り方について

 次に、税財源配分の在り方等について、私どもの考え方や要望を申し上げたいと存じます。
 中間報告では、「事務事業の見直しを踏まえ、地方における自立的な財政運営が可能なシステムの構築に向けて、今後検討を進める」というにとどまっておりますが、小泉総理からの指示もあった旨報ぜられており、これから鋭意検討が進められるものと存じます。

国庫補助負担金について

 まず国庫補助負担金の整理合理化についてでありますが、当会議の見直し方針については、事務事業の分野別にそれぞれ示されており、私どもとしては、その整理合理化が単に国の負担軽減に止まり、また、地方への負担転嫁をもたらすようなものであっては断じてならないと考えております。
 必要とされる事務事業である限り、その国庫補助負担金の整理合理化を行うに当たっては、一般財源化を行う等、明確な代替措置を必ず行っていただくよう、強くお願いしておきます。

税源移譲について

 次に税源移譲についてであります。私どもはかねてから、地方分権をより実効あるものとするためには、税財源の移譲を早急かつ積極的に行う必要がある旨、機会ある毎に要望してまいりました。既にその具体的なプロセスを示したいわゆる片山試案も出されております。国から地方への税源移譲により、地方の歳出規模と地方税収入の大幅な乖離を縮小し、地方税の拡充を図っていただきたいと存じます。
 片山試案では、所得税と消費税とが対象税目とされておりますが、今後、具体的な税源移譲の検討に当たっては、是非とも人口が少なく課税客体に乏しいという町村の実情をおくみ取りいただき、町村の自主的、自立的な行財政運営に支障が生じないよう、十分なご配慮をお願いいたします。

地方交付税について

 次に地方交付税について申し上げます。
 先ほど申し上げた税源移譲に際し、例えば人口と従業者数に着目した現行地方消費税の配分基準の見直し等を行っていただいたとしても、やはり税源偏在の問題は残ると思われます。その意味で地方交付税のもつ財政調整機能、財源保障機能は、私ども町村にとりましては、むしろ一層重要なものになってくると思っております。
 ご存じの通り農山村といわれる地域の大部分は、町村に所在しております。この農山村の果たす公益的機能については、前回の機会に私ども山本会長から縷々申し上げたところであり、あえて繰り返しませんが、地方交付税制度の在り方について検討される場合には、町村が人口割合に較べて広い面積を有していること、そして、国土保全等に重要な役割を果たしていることなどを十分考慮し、実態を的確に反映した財政需要の算定が図られるよう、特段のご配慮をお願いいたします。

4.新しい行政体制の在り方について

 最後に、「新しい行政体制の在り方」について申し上げます。
 この点も「中間報告」では今後の検討課題とされておりますが、まず、現在進められている市町村合併について申し上げます。このことも、前回の機会に山本会長から申し上げておりますが、それぞれの町村は歴史的な経緯、文化、風土や地理的条件などが異なっており、合併は、将来に亘る地域の在り方や、住民生活に大きな影響を及ぼすものであります。従って、合併が一面では地方における行政改革という観点から、また、一面では地方分権の受け皿の整備として進められているとしても、合併の是非の判断は、あくまでも関係市町村の自主性に委ねられるべきものであると考えます。私ども町村会は、一貫してこのように申し上げてまいりましたが、現在の進め方は、様々な財政措置を背景に、半ば強制的だと感じている町村長さん方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 合併をしないところ、そして合併が出来ないところもあることを十分ご理解いただき、前回、山本会長が申しました広域連合制度の改善・改良等につきまして、真剣にご検討いただきますようお願い致します。
 また、地方制度調査会では、「基礎的自治体論」や「小規模市町村論」等について、議論が行われていると承知しておりますが、小規模市町村の権限を縮小・制限し、都道府県が行ったり(垂直補完)、近隣の大都市等が行う(水平補完)といったようなことは、自治の精神から考えても、地方自治の仕組みとしても、うまく機能するとは思えません。小規模市町村の権限を制限・縮小する方向ではなくて、市町村が主体的な立場で地域の実情に応じて、事務の委託ができる現在の方式の改善等を中心に、ご検討いただきたいと存じます。
 以上、意見を申し述べさせていただきましたが、若干補足して申し述べさせていただきます。
 現段階では実際に合併がかなり進んでおりまして、広島県では70%が合併の協議に入っています。合併はあくまで住民自身が結論を出す問題ですが、このまま合併が進むと住民自治が損なわれる恐れがあると心配しております。
 私の地域では一郡で平成16年3月に人口3万5千の市を目標に合併を進めているところですが、面積が530平方kmと非常に広大になります。一番心配なのは今まであった住民の自治が壊れてしまう恐れがあることです。昨年12月に出された中間論点整理に「公共サービスの多様化と住民自治の強化」という項目があり意を強くしたところですが、今の合併推進の中で地方自治が弱くなって、グローバル化の流れの中で経済一辺倒の合併を進めると、本来の日本の自治が失われてしまうのではないかと大変心配しています。それをなくしたら何のための合併か分からなくなります。地域で支え合うのではなく、何もかも行政でやってしまえという姿勢が、介護保険の保険料の問題にも繋がってまいります。
 合併には地域審議会という制度があり、私どもも合併協議の中で地域審議会を作るかどうか議論しましたが、やはりこれは決まりどおりのものになってしまって自治にはならないだろうということで、あえて小学校区単位、大字単位という今ある自治の根っこをうまく育てていこうということになりました。私の町は過去20年このような自治組織を作ってきておりまして、これを全郡に広めることが合併最大の問題として取り上げていただきました。これがない合併は本当の合併ではないと考えています。この辺を今後の合併の中で十分に反映していただく政策を考えていただければと思います。
 以上で意見陳述を終わります。ありがとうございました。