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第27次地方制度調査会で山本会長が意見陳述

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年7月1日

第27次地方制度調査会(首相の諮問機関、諸井虔会長)の総会が7月1日開催され、委員として出席した山本文男全国町村会長(福岡県添田町長)が、小規模市町村の権限見直しなどに言及した同調査会の「審議事項」「論点整理」について意見を述べました。
 「審議事項」は

  1. 1基礎的自治体のあり方
  2. 大都市のあり方
  3. 都道府県のあり方
  4. 地方税財政のあり方

など5項目。また審議の参考とするため同調査会の専門部会がとりまとめた「論点整理」ではこれらの審議事項について、小規模市町村が担う事務や組織のあり方や都道府県合併、道州制の導入―などの検討課題を提示しています。
 これらに対し山本会長は、「自治体の将来にとって重要な新しい制度をつくることを検討する場合は、その制度に深く関わりのある町村の意見を事前によく聞くべきである」と調査会の議論の仕方に対する意見を述べた上で、「小規模市町村から一定の事務をとりあげ、それを都道府県が行う垂直補完や近隣の大都市が行う水平補完などがうまく機能するとは思えない」と指摘、「個々の町村で対応できない事務事業については、現在の広域連合の制度の不備を解消して対応できる体制を整えた上で合併機運の醸成を図る」ことを提案しました。
 なお同調査会は、平成15年11月頃に答申をまとめる予定で審議を進めます。
 地方制度調査会の「審議事項」「論点整理」と山本全国町村会長の意見要旨は次のとおりです。

山本全国町村会長意見要旨

 まずはじめに申し上げさせていただくことは、今回の審議事項、論点整理については専門部会の方々が時間をかけてとりまとめたものであるが、このように自治体の将来にとって重要な新しい制度をつくることを検討する場合は、その制度に深く関わりのある我々町村の意見を事前によく聞いていただきたい。いまからではこの「論点整理」を大幅に変えるような議論はできないのではないでしょうか。国のやり方にのっとって決められているこれらのことと、私どもとの考えに隙間が生じており、今後はそのようなやり方を変えていただきたい。町村は力が弱いといわれていますが、やっていることは国と変わらない、ただ範囲が狭いというだけです。そういった町村に深く関わりのあることを議論される場合は、事前に私どもの考えもよく聞いていただくよう強くお願いします。
 以下順を追って意見を述べさせていただきますのでよろしくお願いします。

1.市町村合併について

 まず合併の問題ですが、平成17年3月の合併特例法の期限を控え、全国の町村では合併に積極的に取り組んでいるところがある一方、合併をしないと決めたところ、また合併をするかしないか、あるいは合併ができないのではないかということで思い悩んでいるところと様々であります。
合併の是否で思い悩んでいる町村はもちろん、合併に積極的に取り組んでいる町村でも不安を感じている最大の事柄は、合併後の町村の姿、合併をしなかった場合の町村の姿が明確に描ききれないということであります。税財源や地方交付税のことについても、合併後にどうなるのかはっきりとは分からない状況であり、不安に感じているところであります。
 全国町村会は合併を進めるにあたっては、まずあるべき地方自治のあり方、描くべき将来像といった理念を示す必要があると繰り返し主張してまいりました。
 専門部会でおとりまとめいただいた「論点整理」の説明を伺いま したが、このような議論は合併を選択した場合、あるいはしなかった場合の市町村の将来像の重要な手掛かりになるものであり、なぜこのような議論を合併推進に先立って行わなかったのか、順序が逆ではないかというのが率直な感想であります。
 これから、論点項目に沿って議論が本格的に行われることになるでしょうが、特に「基礎的自治体のあり方」を中心にいくつか考えを申し上げたいと思います。

2.基礎的自治体のあり方について

 現在の市町村は、市と町村、市の中でも政令市、中核市、特例市と一般の市とは、人口要件なり権限なりに違いがありますが、一律に基礎的自治体という位置づけがなされており、明確な論拠が示されておりません。
 「人口」という面から見れば、地方自治法では市は「5万人以上」となっておりますが、市制施行後に人口が減少し、それを下回る市が数多くあり、一番人口が少ない市は6千人程度であることはご承知だと思います。また、合併特例法により「4万人以上」更に「3万人以上」とされたことにより、3万人の市が誕生してしまいます。一方、5万人を上回る村もあり、3万人以上の町村もかなりの数がございます。この人口の問題は、市町村制の基本的な問題であり、整理する必要があるのではないでしょうか。
 この「論点整理」で言われている「基礎的自治体」とか「小規模市町村」とかのイメージをつかみかねております。なぜ「自治体」と「市町村」とを使いわける必要があるのでしょうか。どうもここでの「基礎的自治体論」は、現在のような仕組みを抜本的に見直して、市町村の規模に応じて仕事や責任を変えてしまい、一定の規模以上の市町村を「基礎的自治体」と位置づけ、それ以外を「小規模市町村」とするような方向での議論のように思えますが、小なりとはいえ、現に町村は住民生活にかかわる幅広い分野で様々な公共サービスを行っております。こうした町村行政の実態なり、町村が果たしている役割を十分認識していない議論のように思えてなりません。
 「基礎的自治体」と「小規模市町村」とを区分する基準や、両者の間の事務配分、財源配分のあり方等は今後議論されることになると思いますが、「自治体」の要素としては人口のほか、土地(面積)も重要でありますので、是非ご配慮いただくことをお願い申し上げておきます。
 「地方自治」は「団体自治」と「住民自治」が両輪であるといわれております。「基礎的」という言葉にとらわれるわけではありませんが、「基礎的自治体」と言えるためには、「団体自治」とともに「住民自治」が発揮されるようなものでなければなりません。その意味からは、小規模自治体こそ「基礎的自治体」と言うにふさわしいのではないかと思っております。
 現在の町村は、合併が進むことによって市になるところが出てくると同時に物理的、社会的要因等で合併が行えない町村、合併を行わない町村が明確になってきます。
 言葉の問題かもしれませんが、私はそのような町村も「基礎的自治体」として位置づけるべきと考えております。そしてこのような個々の町村で対応できない、あるいは広域的処理がより効率的であると思われる事務については、現在の広域行政の仕組みを再検討し、現行制度の不備や欠点の解消と同時に権限と責任の強化を図る法改正等を行い、当面の事務事業の実施に対応できる体制を整えた上で、将来的な合併気運の醸成をはかる、いわば緩やかな合併を進めるというのも一つの考え方ではないでしょうか。
 広域連合の見直しの具体案としては、①従来の市町村には窓口業務など固有的・基礎的な事務は残す、②広域連合の首長は公選制とする、③ハード事業等は広域連合で行う、④農業及び農村の持続的な発展のため、農業振興地域整備基本方針の作成や農業振興地域の指定、農用地区域内の開発許可、農地転用許可等の権限の移譲を行う、⑤その他、都市計画、保安林の解除等、土地利用規制に係る権限と財源について都道府県からの大幅な移譲を行う―といったことについての検討が必要であると考えます。
 以上のような既存の広域行政制度の拡充による、いわば緩やかな合併を目指すことについても広域体制整備の現実的対応として論じられるべきであると思われます。言い換えますと、これは二段階方式によって合併を促進する方策ではないかと考えているところでございます。
 また、広域連合にも加入できない町村も出てくると思われますので、そのような町村については、一定の事務処理を都道府県なり大都市へ委託する方式をいろいろ工夫することも検討する必要があろうかと思います。小規模市町村から一定の事務をとりあげ、それを都道府県が行う垂直補完とか近隣の大都市が行う水平補完とかが、うまく機能するとは思えません。仮に補完をしなければならない市町村があるならば、メニューを示してそれを選択するという方式、すなわち市町村が自ら決めて補完を受けるというやり方にするべきであると考えます。最初から補完を前提としたやり方は団体自治あるいは住民自治の侵害につながるのではないでしょうか。

3.地方税財政のあり方について

 関連して、地方税財政のあり方についてでございます。
 これからの町村の財源はどうなってゆくのでしょうか。もちろん地方税財源の移譲等については論理的に正しいものであるし、現実的でもあると思います。しかしいろいろな方策に対応するだけの要素が町村側には極めて少ないため、不要なものは削除するべきだと思いますが、その削除された後にどうしても処理しなくてはならない事務が残ってくるわけです。その事務処理に要する費用については、国も地方も一律に財源を削減することによって税収の不足をまかなうことができるのではないかと考える次第であります。今後の事務のやり方は簡略化するべきであり、そうすることがより現代的で、住民の皆さんに浸透して理解を得ることができると思います。
 国民はどこに住んでいても一定の等しい水準の行政サービスを享受できることが基本であり、これを損なうということは21世紀型の行政体制とはいえません。合併を行わない場合、合併ができない場合であっても町村が行う事務事業に見合った財源を保障するべきであります。
 さて町村は国家的な役割分担を担い、またそれを果たしながら都市との共存共栄を図っているところであります。すなわち自然を守り、水をつくり、食糧を供給していることはご存じのとおりです。そしてそれを受けた都市が生産した豊かさを町村に供給しているのです。このような相互扶助の精神が働いております。町村は人口は2割しか占めておりませんが、国土の70%を有しております。そしてここから水と自然と食料が生まれているのです。このことを是非お忘れないようにしていただきますようお願いいたします。
 また、地方分権をより実効あるものとするため、税財源の移譲は早急かつ積極的に行われるべきであるとかねてから要望してきたところでありますが、今後、具体的な税財源の移譲を行うにあたっては、人口が少なく、課税客体の乏しい町村の自主的・自立的な行財政運営に支障が生じないようにしていただくことを格別にお願いするとともに、移譲されることとなる税源の配分や地方交付税の確保等について十分配慮することが必要でありますので、ご配慮いただくことをお願いいたします。

4.大都市、都道府県のあり方について

 大都市のあり方等についても議論していく必要があると思います。私は政令市はその県から除外するべきだと思います。その方が県の事務がやりやすいのではないでしょうか。市町村の間に大きな格差が存するところがありますが、都道府県の中にも大きな格差がございます。これでは地方自治がうまくゆくとは思えません。都道府県を解体して道州制の採用も検討することが大事であると思います。いままではこういった格差を埋めるための努力をしてきたわけでありますが、今後はより効率的な地方自治の制度を考えてゆくことが必要であると考えます。
 以上町村の立場から意見を申し述べさせていただきましたが、ご配慮を賜りますようお願いいたします。