全国町村会と自由民主党は4月4日正午から、自由民主党本部において本会役員と同党幹部による懇談会を開催しました。
この懇談会は、地方分権や市町村合併など町村をとりまく行財政課題や現下の政治経済情勢などについて意見交換を行うため、去る2月20日についで開かれたものです。懇談会では地方分権、市町村合併、地方税財源、介護保険制度など町村が抱えている課題について2時間にわたり活発な意見交換が行われました。
自民党古賀幹事長、亀井政調会長、野中行革本部長および山本全国町村会長のあいさつの要旨と本会から出席した役員の主な意見は次のとおりです。
日頃から、町村の代表としてふるさとのまちづくりに努力されていることに感謝いたします。本日は、町村が抱える諸問題について忌憚のないご意見をいただきますようお願いいたします。地方の発展のため自民党が解決していくために結束していきたいと考えております。
市町村合併については、行革として取り組んでまいりますが、将来的には町村の合併というだけでなく、都道府県の再編成も視野におくべきだと考えております。行政効率から考えれば町村をくっつければ良いと、特に県はこのような考え方であると感じております。しかし町村をくっつければ住民は幸福になれるのかというと、これは疑問であります地域のことについては市町村長が一番よく分かっているので、市町村長が住民の幸福を考えて進めるべきであり、合併は上から強制すべきものではありません。
地方分権については、財源が伴わなければならないので市町村が自主的に使える財源を考えていかなければならないし、交付税についても皆さんの忌憚のないご意見を伺いたいと思います。
介護保険制度については施行後1年が経過しましたが保険料について混乱しているようであります。当初私が6ヶ月間の慣らし運転が必要だと言ったときは厳しい批判を受けまた市町村長は厚生省の原案どおりに行ってほしいと要望されました。今後は財政面での問題も出てこようかと思います。
2月20日に引き続き、今回改めて懇談の機会を設けていただき感謝しております。 国土面積の七割強を占める2,554町村は、食料の供給、自然環境の保全、水資源の涵養、都市に対する労働力の供給等の国家的役割を果たしてきました。しかしながら町村の現状は、過疎化、高齢化の進行、担い手の減少等大変厳しく、このままでは、国土の維持管理機能の低下を招き、国家の将来に重大な影響を及ぼしかねないと危惧しております。
食料の問題をちょっと取り上げてみますと、東京の自給率は1%、大阪は2%、神奈川は3%であります。一方、地方の一番高いところは179%もあります。また水の問題をみますと、東京の都心部に水源はないと思います。この水源地のほとんどは町村部にあると思います。
我が国の繁栄の基礎を築いてきたのは我々町村であると自負していますが、最近の動きをみると、町村に対して大変厳しいものがあります。最近、自民党が都市政策の強化方針を打ち出していますが、農山村が衰退すると都市は滅びることとなります。町村の役割の重要性について再度認識してもらい、そして都市とのバランスをとった施策を講じるべきであります。本年7月の地方分権推進法の失効に伴い、地方分権委員会はその存立の根拠を失うこととなりますが、地方分権の一層の推進を実現していくためには、政府の他の機関から独立した中立的な権威ある機関が依然として必要であり、本年7月以降も引き続き、このような地方分権推進体制を維持することが重要であります。
中央省庁再編に伴い審議会も再編されましたが、例えば、国土交通省の国土審議会及び社会資本整備審議会、また、環境省の中央環境審議会といった極めて町村行政と関わりの深い審議会について、委員選任にあたり町村がはずされている状況にあります。町村の意見を国政にもっと反映させるべきだと思っております。
介護保険制度は制度がスタートして1年、今なお解決すべき課題が山積しております。特に、本年10から保険料が現在の半額から通常の額になると、被保険者の関心度が高まり、様々な意見、要望が提起されてくると思います。その際、制度の抜本的見直しを行う等、万全の措置を講じて頂くようお願いいたします。先般、公務員制度改革について、人事院制度及び地方公務員制度の見直し、労働基本権付与の検討等を含めた大枠が示されたところでありますが、今後、6月の基本設計取りまとめにあたっては、我々町村の場合は、国の物差しでは測れない特殊性もあることから、地方公務員制度のあり方の検討に際しては、町村の意見を十分聴取していただきますようお願いいたします。本日、それぞれの重要課題について意見を述べさせていただきますが、ご理解・ご指導を賜りますようお願いいたします。
阪神淡路大震災を契機とした住宅問題・被災者住宅再建支援制度を議員連盟で検討しているが、固定資産税に上乗せして掛け金を徴収することについて、全国町村会、全国市長会から反対との意見があった。四月中あるいは五月上旬までに詳しくお話しを伺いたい。
地域に根ざした自主・自立の行政を進めていくためには権限と財源が必要であり、地方に権限と財源を移譲してもらうことが住民の幸せにつながる。今回の分権改革による町村の権限移譲は微々たるもので、財源については全く見えてきていない。本年7月に失効する地方分権推進法については法期限の延長をお願いしたい。
道路等の整備にあたり保安林の解除の許可が大変遅くなることがある。国の権限を知事の権限とすることでスムーズに運ぶようにしていただきたい。
省庁再編に伴い、国土審議会、中央環境審議会、社会資本整備審議会など三つの審議会の委員について町村長の席が無くなったことについて再検討をお願いしたい。
平成13年度地方交付税額は前年度に比べ5%減となり、その分の手当は地方債発行によるものとなるが、これも借金である。このように財政の硬直化が非常に進んでいる。市町村決算では公債費負担率16%以上の町村が多く、財政的に大変厳しい状況にあるので、交付税の補正係数により補てんしていくことは今後とも必要である。
道路は町村にとっては重要な社会資本であり住民のニーズがもっとも高いため、道路財源について特定財源の堅持が今後においても重要である。
ペイオフ凍結解除後における公金預金を保護することは重要な問題であるので、是非対処していただきたい。
町村財政は四苦八苦しているのが現状で、地方交付税制度は是非堅持していただきたい。
農村の水田所得は、1町歩当たり37万円、1反3万7千円にすぎない。農村地帯の財政は大変厳しい状況にあり、地方自治が進まないことにつながっている。
人口3千、4千人の町村では、地方交付税が占める収入割合は30,40%を占めているが、税の実力は10%以下しかない。交付税制度の見直しは、国の財政赤字の対応の一環とうかがえるが、町村は税収力がないため都市部より交付税が必要であり、交付税こそ都市と町村の均衡ある発展の根幹である。
森林については、交付税の算出方法が不明確であり、森林面積に比重を置く、等中味を吟味していただきたい。
地方交付税は、人口10万人の都市をベースに算定しているため、人口の少ない町村では、人件費などで実際に支出する額と補正のかかった算定上の額とが実態に合わないので調べていただきたい。
市町村合併については、まず合併しやすい体制を整えて進めていくべきである。
昭和28年の大合併で市町村数の減少率は72.2%であったが、現実の姿を見ずに合併が進められたため弊害が出ている市が見受けられる。
総務省の先の通達では合併についても知事の勧告が出来るとされているが、これでは対等・協力の関係が崩れていくのではないか。国の指導は合併に対する理念に欠けており、もっと地域の住民意思を尊重していくべきである。
日清、日露の戦争を経て我が国が生きながらえてこられたのは農村によるところが大きく、兵隊、食糧の供給をしたのは農村である。そういった農村の功績を忘れてはならない。
景気浮揚の点からも人口を減らさないための政策を進めていただくようお願いしたい。
過去の大合併は、国の財政が困難になったときに行われている。今なぜ合併を行うのか、住民の利益に本当になるのかをよく考えるべきである。財政状況が悪いから合併するというのではいけない。
現在行われている市町村合併の議論は合併のための合併であって住民のことを考えていない。これでは地域住民が苦しくなり過疎が過疎を呼ぶことになる。合併については自主的に進められる環境づくりが大切である。
市町村合併について現状では政府と地方の意見に食い違いがある。合併はさけて通れない問題と認識しているが、国と党はもっと指導力を発揮してもよいのではないか。
介護保険制度の低所得者対策として、減免や財政補てんすることは重要であるが、制度外ですべきかどうか難しい。また介護には身体介護と家事介護があるが、両者を区別することは難しく、例えば、一時間の介護サービスの範囲内で総括した介護が出来るようにすれば、利用しやすくなる。施行後一年が経過したが、財政上の圧迫とならないよう、調整財源を国庫負担25%の外枠化とすることを要望する。
家族介護を認めてほしいということを審議会において要請している。私の町では家族介護(1日3時間限定)を中心にとらえ、三級ヘルパーを数多く養成している。
介護認定は六段階制にすべきである。
医療と福祉の両方から給付があれば公費の二重払いの問題となり、これは行政訴訟につながるおそれがある。
国民健康保険について高所得や定所得がある人たちはおのおのの健康保険に加入し、そこからはみ出た人が国保の加入者となっている。国保の市町村決算は、数字のうえでは上手く整っているが、実際は6千億円の赤字がある。この矛盾を十分検討していただき、医療保険の一本化を進めていただきたい。
政権党として自民党がしっかりしなければ無党派層が増えていくと思われる。国のあるべき21世紀の姿を描きながら施策を組み立てていただきたい。
KSDの事件や外交機密費の問題など政治スキャンダルにより都市の若者や女性が政治に失望しているため、都市には無党派層が蔓延している。
国土保全、とりわけ森林保全が最重要である。針葉樹(杉、檜)については、外材の影響により自給率は16%程度と低迷が続いており、また素材価格も極端に低く、例えば3mの柱材は、1立米当たり2万円しなければ採算はとれないといわれているが、実情は1万6千円と厳しい状況である。後継者問題も大きな課題である。これらの問題に対して、価格補償制度を創設していただく等、対策を講じていただきたい。
家電リサイクル法の廃家電の問題については、62社で価格統一したことは、独占禁止法に抵触するのではないか。また廃家電の処理が有料になることにより農村部へ不法投棄される可能性が十分にあると思われる。メーカーが責任を持って回収するなり、買ったときに消費者に負担させるなりの方法にすべきであるいずれにしても国が責任を持って対処すべきであると考える。
若者の定住化のためにも光ファイバーの整備等を進めていただき、せめて携帯電話とパソコンが使える環境にしていただきたい。
現在、私の町では出生に伴う一時金の給付を行っているが、少子化対策については抜本的に検討しなければならないと思う。
郵政三事業の民営化には反対である。過疎地域の郵便局は特定局だが、住民の暮らしに役立つように努力している。民営化すれば、営利追求の下、過疎地域の住民の郵便物について、集配が困難になり、住民が郵便局に郵便物を取りに来るというような対応にならざるを得なくなることが危惧される。
家電、産業廃棄物は地域にとって大きな問題であるため国において検討されるよう望む。
長時間にわたり意見交換をしていただいたことにつきまして感謝申し上げます。私が出席した別の会議で、過疎町村の老人に対して面倒を見る必要はないという「町村無用論」を主張する人もいましたが、これには断固反対いたします。我々町村も甘えるつもりはなく、自立することは大前提であり、自己の力で進めていくことは当然でありますが、力不足のある場合もありますので、その場合は是非お手伝いをお願いいたします。
当面する課題、町村が抱える深刻な課題についてお聞きしました。合併につきましては、私も昭和の大合併を町長として経験したところで、当時の合併によって3千6百団体となり、これが進んでいない現状であります。情報通信が発達してきだと考えております。町村が持つ今日的課題をどのように対処していくか考えていかなければなりません。またそのための環境整備が必要であると思います。総務省と郵政省が合併したことは大きな意味があり、郵便局がいかにして住民サービスをしてゆくか、いままでのように郵便局が単にそれをサービスとしてやるのではなく、住民票一通世話をすればそれの手数料をもらい、そして対価としてやっていけるような状況を作っていかなければならないと思います。そういう意味でこの両省の合併を十分にいかしていかなければならないと思います。したがってその様な問題に我々も配慮していかなければならないと考えております。少子化対策、老人問題等については、老人対策にかけているお金は日本は世界一でありますが少子化対策については世界最低であります。若い人のニーズが変わってきたとはいえ子供を生みやすい環境作りに対し日本は長い間手を抜いてきたのではないでしょうか。全体のバランスを我々は考えていかなければならないと思います。交付税制度の改正により、これからの地方財政はより厳しい状況になります。首長の財政に対する調査を見ておりますと、多くの方が一括補助金を交付してほしいという意見でありました。また20%ほどの方が地方の自主的税源を欲しいということでありました。悪く考えれば税金は集めてもらい、そしてあまり色のつかない自由に使えるお金は交付して欲しいということになるのでしょうか。集めにくい税を地方が持ってでも地方が税源を持つ、その上で財政のアンバランスを解消するために交付税制度を堅持していくということを地方自治体経営者は考えて交付税制度だけに安易に頼ったり、補助金の一括交付だけを考えていたのでは道を誤るのではないかという感じがしております。合併については国が強力に言っているという印象をお持ちかと思いますが、この40数年間で合併した町村数が二百数十団体より増えなかったという現実について、我々としても深刻に受け止めて、そして合併できる条件作りをしていく必要があると考えております。十町村が合併して、その首長になったからといって十倍の給与をとるわけではないので、そういうところから自らスリム化して自分たちの手で本当の地方分権を進めていくよう我々も努力していかなければならないと思います。今後も全国町村会等と一緒になって地方自治の発展のために努力してまいりたいと思います。
会長 山本文男 (福岡県添田町長)
副会長 佐々木隆人 (北海道えりも町長)
西田耕豊 (石川県川北町長)
宇都宮象一 (愛媛県宇和町長)
理事 菊池繁安 (青森県川内町長)
高橋 伝 (福島県北塩原村長)
齋藤和夫 (茨城県関城町長)
伊藤孝二郎 (新潟県黒川村長)
塚田武士 (愛知県旭町長)
野中一二三 (京都府園部町長)
江原 清 (山口県日置町長)
八木壮一郎 (香川県池田町長)
松本和夫 (佐賀県北方町長)
冨永清次 (熊本県菊陽町長)
林田 敦 (宮崎県西郷村長)