吉田隆行会長(広島県坂町長)をはじめとする地方三団体代表は11月26日、政府が開催した「こども政策に関する国と地方の協議の場(令和6年度第2回)」に出席しました。今回の会合は、①こども・若者を守る取組について②保育政策について等のこども政策に関する意見交換が行われました。
政府からは、三原じゅん子内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画、共生・共助)、辻󠄀清人内閣府副大臣、友納理緒内閣府大臣政務官、仁木博文厚生労働省副大臣、金城泰邦文部科学省大臣政務官等が出席しました。
▲発言する三原大臣
開会にあたり、三原こども政策担当大臣がいじめや不登校、自殺をめぐる現状は大変憂慮すべき状況にあり、スピード感をもって対応すべき問題であるとの認識を示したうえで、「いじめの背景には、さまざまな事情が複雑に関係しており、こども・若者を守るためには、首長の皆さまの強いリーダーシップのもと、学校だけではなく、地域全体でこどもへの支援を進めることが重要である。こども家庭庁は、常にこどもの立場に立ち、本日ご出席の関係省庁とともに、地方の皆さまと連携して取組を進めていく」と述べました。保育政策については、「『こども誰でも通園制度』を来年度に制度化し、令和8年度から本格実施することとしている。また、本年度を最終年度とする「新子育て安心プラン」後の保育提供体制についても、総合的に検討していく。『地域少子化対策重点推進交付金』については、中間報告も踏まえ、要件を簡素化し、使い勝手を大幅に改善する。皆さまには、改善した交付金をぜひご活用いただき、地域における結婚やライフデザイン等の取組を積極的に実施していただきたい」と挨拶しました。
▲出席する吉田会長
続いて、地方三団体の会長が挨拶に立ち、吉田会長からは、少子化の問題は、地域の持続可能性や我が国の将来に大きく関わる極めて重要な課題であり、地域づくりにおいては人材の育成や教育が重要としたうえで、「町村では、お互いに顔が見える強みを生かしながら、地域と一体となり、生まれてくるこどもたちが地域の未来を担う人材となることを願い、こどもを地域の宝として大切に育てている。地域の未来を担うこどもが健やかに育つためには、生まれ育った地域や郷土を愛し、伝統と文化を尊重することを学校教育とともに、地域や家庭の中で育んでいくことが何よりも大切であると考えている。今後の政策を進める際、このような視点にもご配慮をいただき、少子化克服に向けた実行ある政策を力強く牽引していただくよう、お願いを申し上げる」と述べました。
その後、意見交換において吉田会長は、こどものいじめ防止・不登校対策について、学校における「いじめ」の認知件数と自ら死を選択せざるを得ない深刻な被害が生じる恐れのある「重大事件」が増加している状況については、「『こどもは地域の宝』であることを日々実感しながら子育て支援に取り組んでいる私たち町村長にとって、極めて憂慮する事態である。教育委員会や学校のみで実施するのではなく、被害に遭われている当事者やその保護者に寄り添うなどの対策を地域全体で講じる体制づくりが非常に重要ではないかと考えている。また、学校外からのアプローチによるいじめ解消の仕組みづくりに向けた手法の開発・実証が複数自治体で行われている。今後、実証自治体での成果・課題を検証することで、いじめ防止における多様な取組をモデル化し、町村が地域の実情に応じた取組を実施できるよう、関係者にお示しをいただきたい」と述べました。
また、令和7年度から不登校総括支援員(仮称)を新たに配置し、こどもや保護者の悩みやニーズに応じたサポートを行うために関係行政機関・医療機関・民間施設等へのつなぎ・働きかけを行う「不登校のこどもへの包括的で切れ目ない支援モデル事業」の実施について、自治体が円滑に取り組めるよう、多様な支援モデルの創出・提示を要望しました。
次いで、「新子育て安心プラン」終了後の提供体制について、「地域のニーズに応じた質の高い教育・保育の確保」の実現に向けて、保育現場を支える保育人材の確保が不可欠としたうえで、「我が国の人口減少・少子高齢化や東京圏への一極集中などの流れが変わらない現状の中、地方部においては保育士不足がより深刻な状況にあるので、保育士の養成や処遇改善の充実等、一層の人材確保に国として取り組むようお願いする」と求めました。
併せて、こども誰でも通園制度の制度化、本格実施に向けた検討状況については、「『こども誰でも通園制度』の開始により、保育需要が増加して人材確保がますます難しくなることが予想される。本制度の実施にあたっては、モデル事業等の実施状況等を踏まえるとともに、人材の確保を含め、地域の実情に合わせて円滑に実施できる制度としていただきたい。また、令和7年4月からの制度化にあたり、各自治体では、今年度中に議会に条例案を上程する必要がある。条例の制定作業等に滞りなく取りかかることができるよう、人員配置、施設運営基準等の発令を速やかにお願いする」と要望しました。
最後に、こども誰でも通園制度総合支援システムについて、運用・保守は国が行うとあるが、実際に使用するのは、制度利用者である住民と自治体、事業所であるとしたうえで、住民が容易に使用でき、自治体等には現行事務の変更や、新たに事務が生じるものも少なからずあると思われるが、過度な事務負担とならないようなシステム構築を要望しました。
そのほか、地方側からは、こども政策DXの推進にあたっては、都市自治体や保育施設等におけるDXの取組の実情を十分に踏まえ必要な支援策を講じていただきたい―等の意見がありました。
吉田会長の発言を受け、オンライン出席した金城文科政務官からは、「今後とも、学校が福祉や地域等と連携しつつ、こども家庭庁等の関係省庁とも協力しながら、不登校児童生徒への支援や、いじめ、自殺の防止等に必要な取組を進めていく」、友納政務官からは「いじめと自殺の問題について、自殺に関しても早い時点で捕捉することを考えると、こどもの声をどうやったら早い時点で聞き取れるかがポイントとなる。そこを皆さまとともに考え、早い段階でこどもの問題に介入していきたい」と発言がありました。
最後に、三原こども政策担当大臣から、「いじめ、不登校、自殺、そして、保育政策全般について、地域のさまざまな声を聴くことができた。これについては、地方と国の連携が大変重要だと思っている。今後も定期的にこのような場を設けて積極的に意見交換することをさらに強化をしていく」と挨拶があり、閉会しました。