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「第32次地方制度調査会 第5回総会」に 荒木会長が出席

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年6月30日

内閣総理大臣の諮問機関である第32次地方制度調査会(会長 市川晃・住友林業(株)代表取締役会長)の第5回総会が、6月17日、WEB会議で開催され、本会から荒木泰臣会長(熊本県嘉島町長)が委員として出席しました。(最後の発言機会のため、会場へ直接参加)

会議の様子

総会では、高市早苗総務大臣の挨拶の後、「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申(案)」について審議し、とりまとめが行われました。

 

総会における荒木会長の発言概要は、以下のとおりです。

全国町村会長・熊本県嘉島町長の荒木です。

 市川会長、大山副会長、山本委員長をはじめ、各委員の皆様方におかれましては、これまで2年間にわたり大変ご熱心に議論を重ねられ、本日の総会に至ったことに敬意を表する次第であります。

 本日は、最後の機会でありますので、どうしても申し上げておきたい項目に絞って意見を申し上げます。

 

〇我が国が目指すべき国づくり、「自律・分散」と「多様な連携協力 」

 はじめに、この度の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京一極集中、大都市への過度の人口や経済活動の集中に伴うリスクを再認識しております。

 人口減少下で、東京の人口が1400万人を超え、合計特殊出生率が全国で1.36に下がり、東京は1.15です。

 我が国が目指すべき国づくりは、私どもがかねてから主張する、都市、農山漁村など多様な市町村が地域資源を活かし、個性を磨き、「自律・分散」しながらも、それぞれの地域が

「重層的につながり、交流する」国づくりだと改めて確信しております。

 国民の価値観・ライフスタイルの転換や、情報通信技術の進展と技術革新により、「自律・分散」と「多様な連携協力」が調和的に両立可能な時代が到来しております。

 その実現に向け、あらゆる機会をとらえ訴えてまいる所存です。

 もちろん「多様な連携協力」の中には、答申案にある「地方公共団体の広域連携」なども含まれてまいりますが、たとえどのような制度や政策を立案・推進するにあたっても、それぞれの自主性・自律性が十分に発揮され、「主従」ではなく「対等」な連携協力関係に立つことが大前提であり、これを堅持していただきたいと存じます。

荒木会長

▲総会に出席した荒木会長

〇地方公共団体の広域連携

 その上で、まず、答申案の「第3 地方公共団体の広域連携」について申し上げます。

 今回の答申案の中で、本会が最も強く反対を表明していた定住自立圏・連携中枢都市圏における「関係市町村の十分な参画を担保する仕組み」については、私どもの主張も一部記載し、「地方の実情も多様であること等から、その是非も含めて、関係者と十分な意見調整を図りつつ検討がなされる必要がある。」とされました。

 当事者そのものである私どもの声は十分に届いているものと思いますが、あらためて申し上げておきます。

 この仕組みは、「対等」であるはずの市町村間に、中心市を言い換えた「計画策定市町村」に対し、合意形成の主導権を付与するものであります。

 実質的に中心市による「圏域に対するマネジメント」の強化を図るものであり、結果、さらなる集約化、周辺部の衰退を招く恐れがあり、「法律による制度化」に断固反対であることは当然のこと、この仕組みそのものの土台となる定住自立圏等の要綱自体に看過できない問題があることを強く申し上げておきます。

 本会の意見書でも申し上げた、定住自立圏等がめざす目的・考え方が、定住自立圏は「集約とネットワーク」、連携中枢都市圏は「コンパクト化とネットワーク」であるなど、コロナ後の社会に合わないことは明白であります。

 時代の転換点を踏まえた見直しを行うべきであり、現行要綱のままでの改正であっても反対します。

 また、今回の答申案には、広域連携に対する財政措置について新たに記載が加わりました。

 そもそも数多くある連携の現行制度の中で、定住自立圏・連携中枢都市圏のみに財政措置があることが政策誘導ともいえるものですが、今回、圏域行政的な連携のみならず様々な連携について、当事者の市町村が自ら選択して取り組む際の支援について財政措置の必要性の提言がされたことは、一定の理解をしたいと思います。

 しかしながら、制度設計に当たっては、圏域行政を含む特定の広域連携への事実上の誘導とならないよう強く要請します。

 前回までの専門小委員会でも、何人もの委員の方々から「市町村が自ら選択したもの」として、このような懸念を生じないよう強調していただきましたが、私どもが過去に、自主的と称する市町村合併において、財政措置を動員して苦渋の選択を迫られた苦い経験をいまだに持ち続けており、町村の現場には、新たな圏域行政への布石ではないかとの強い懸念や根強い不信感が厳然としてあることは重ねて申し上げておきます。

 更に関連して、離島や中山間の条件不利地域など、連携が物理的に困難で、単独で懸命に頑張らなくてはならない町村も数多くあります。

 こうした町村の取組が、広域連携に容易に取り組むことのできる自治体と比較して、今回の提案で更なるハンディを負うことのないよう、地域振興施策の充実や国土の公益的機能の維持の観点も含めて、特段のご留意をお願いします。

 

〇地域の未来予測

 次に、「地域の未来予測」について申し上げます。

 今次の地制調は、「2040年頃から逆算」する手法に注目しています。

 本会はこれまで、「地域の未来予測」の全国一律の適用について、懸念を表明してきました。

 「20年後から現在を考えよう」という趣旨をもちろん全面的に否定するものではありませんが、私たちは、今日・明日の延長に今年があり、来年・再来年の先に、5年後10年後が続いていることを、地方自治の最前線で日々実感しています。

 子供や孫の世代にこの町・この村をどう残していけるか。何としても残さなくてはいけないとの思いで、必死に自治体経営に取り組んでおります。

 未来のことを考えていないのではない。

 町村長なら誰でも、昼夜を分かたず自治体の責任者として悩み抜き、都会に10年も20年も先行する課題解決に向けて奮闘しております。

 「あの家の子供が進学で都会に出て行った。」「集落のまとめ役が病気になった。」「都会から元気な若者がIターンしてきた。」などといった血の通った情報は、手に取るようにわかっております。

 その積み重ねが持続可能な地域づくりにつながるのです。

 比較しやすい客観的なデータを使って、外圧で小規模町村の持続可能性に疑問符をつけ、広域連携や垂直補完、そして究極的には市町村合併へと上からの政策誘導の手段に使うようなことは、けっしてないようにしていただきたい。

 私たちが主張しているのは、人口減少を前向きに捉えること、町村ならではの価値創生、豊かな自然や暮らしやすさ、コミュニティの絆、一人ひとりの地域における存在の大きさ、数字に表れない「価値」や「魅力」、幸福度といった、たとえ厳しい環境にあっても希望を捨てることなく行動することができる「未来予測」です。

 このような視点こそが、コロナ後の未来を見据えた新たな可能性を切り拓くものと考えますので、十分にご留意をいただくようお願いします。

 

〇地方行政のデジタル化

 次に、「第2 地方行政のデジタル化」については、本会の先の「意見書」で留意してもらいたい点について申し上げておりますので、よろしく

お願いします。

 ひとつだけ申し上げますが、これからの時代に、どこでも、だれでも、いつでも情報のやりとりやコミュニケーションに活用できるためには、まさにコロナ後を見据え、一段上の次元の違う取組が必要になってまいります。

 特に、情報インフラやシステムなどの社会共通基盤については、小規模自治体も含め個々の市町村の自己責任の分野ではなく、新しい国づくりのため、政府を挙げて国が責任を持って、条件不利地域等の地方部も含め推進していただくことが必須であることを申し上げておきます。

 

〇公共私の連携(地域における人材の確保・育成等)

 次に、「第3 公共私の連携」については、地域の内外に開かれた「ひとづくり」と「ネットワークづくり」なくして持続可能な地域づくりはありえませんので、本会の意見や思いも汲み取っていただきありがとうございます。

 書かれている内容は、総論的な面もございますので、地域における人材の確保・育成、官民交流や外部人材の活用なども、全国一律であったり、自治体の規模等による画一的な制度や仕組みであったりということではなく、地域事情に応じて課題解決のための思い切った取組みができるよう、これまでにとらわれない制度・政策をぜひご検討ください。 

 

〇おわりに~今後もしっかりと注視し必要な行動を起こす~

 最後に、繰り返し申し上げますが、地方自治の最前線の現場を大事にしていかないと、日本は本当にダメになってしまいます。

 団体自治・住民自治の現場において、小さかったり、ハンディを抱えながらも、それをお互いに認め合い、助け合い、あきらめずに努力を重ねていくことの中から、コロナ後の希望の灯(ともしび)が広がっていくものと確信しております。

 私たちは、その先頭で奮闘する一員であり続けたいと思います。

 本会として、この答申案を受けた国の今後の対応をしっかりと注視し、もし容認できない方針が打ち出されるならば、全国926の町村を挙げて断固阻止すべく行動を起こしていく決意であることを申し上げ、意見とさせていただきます。ありがとうございました。

 

このほか地方六団体から出席した各委員からは、「圏域スキーム」の考え方には、当初から反対であったという意見や、「定住自立圏」「連携中枢都市圏」の要綱の抜本的見直しの必要性の指摘など、圏域行政の法制度化に関わる論点について、否定的な見解が示されたところです。

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

地制調答申案は総会における本会等からの意見を踏まえ修正が行われ、最終答申として、6月26日、市川会長から安倍総理に手交されました。

これを受け、全国町村会では、以下のとおり会長コメントを公表しました。

第32次地方制度調査会最終答申について

第32次地方制度調査会の最終答申が取りまとめられ、本日、市川会長から安倍内閣総理大臣に手交されました。

 これまで2年間にわたり精力的に議論を重ねてこられた委員の皆様及び関係の方々に敬意を表する次第です。

 2年前には誰もが全く想定しなかった新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大する中で、我が国においても、東京一極集中をはじめとする様々な弊害が大きく顕れ、これから目指すべき国づくりが問われております。

 本会が主張する、都市・農山漁村など多様な市町村が地域資源を活かし、個性を磨き、「自律・分散」しながらも、それぞれの地域が「重層的につながり、交流する」国づくり、団体自治・住民自治の現場が大切にされる持続可能な地域づくりに向けて、今次答申の内容が活かされていくことを期待しております。

 このうち、本会が断固反対してきた「新たな圏域行政」とこれに関わる仕組みづくり等については、これまでの我々の主張を国においてしっかりと受け止め、町村はじめ地方団体側の意向を十分に尊重し、対応していただけるものと確信しております。

全国の町村は、国・地方を挙げて懸命に取り組む新型コロナ対策の先につながるコロナ後の社会を見据え、希望を持って子や孫の世代に継承できる国づくり・地域づくりに全力で取り組んでまいる決意です。

   令和2年6月26日

                                    全国町村会長 荒  木  泰  臣

 

【参考資料】

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