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「第32次地方制度調査会第2回総会」に荒木会長が出席

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年12月18日

 12月18日(火)、第32次地方制度調査会(会長 市川晃・住友林業(株)代表取締役社長)の第2回総会が開催され、 本会からは荒木泰臣会長(熊本県嘉島町長)が委員として出席しました。

第32次地方制度調査会の第2回総会

 総会は、7月5日に開催された第1回総会以降、有識者委員で構成する専門小委員会におけるこれまでの議論経過の報告および今後の審議の進め方(案)について議論するために開催されました。

 はじめに石田総務大臣が挨拶に立ち、「現在、日本は大きな変わり目に差し掛かっており、東京一極集中のリスクが顕在化し始め、地方の疲弊も限界に達している。このような変化の中で、持続可能な地域社会をどのようにして築いていくかがこれからの大きな課題であると考えている。持続可能な社会を作るためには、ソサエティ5.0(注1)に象徴される様々な技術革新の中で、今までとは違う形で、就業の場、生活サービスの支援をどのように確保していくかが重要である。大臣就任後、奈良県の川上村に行かせていただき、地域おこし協力隊の皆さまと話をした際に実感したが、今、若い人たちの意識が大きく変わりつつある。このような方々に上手く地方へ来ていただいて、担い手の役割を果たしていただくことも重要ではないかと思う。そうすれば就業の場、生活支援の場、そして担い手の確保、この3つが一体となって、持続可能な地域社会を作っていけるのでなはないかと考えている。委員の皆さまにおかれては、これらの観点を踏まえ、人口減少が深刻化し、高齢者人口がピークを迎える2040年頃から逆算し、顕在化する諸課題に対応するため、幅広い見地から、調査審議いただくようお願いする」と述べました。

挨拶に立つ石田総務大臣

▲挨拶に立つ石田総務大臣

 その後、これまでの専門小委員会における議論経過が報告され、「今後の審議について(案)」の具体的な検討項目として、

①「人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを迎える2040年頃から逆算し顕在化する諸課題」として、どういったものが考えられるか。また、これにどのように対応することが求められるか、

②「人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを迎える2040年頃から逆算し顕在化する諸課題」に対応する観点から、○圏域における地方公共団体の協力関係として、どのようなことが考えられるか、○公・共・私のベストミックスとして、どのようなことが考えられるか、○その他の地方行政体制のあり方として、どのようなものが求められることとなるか-の2案が示されました。(別紙参照)

 今後の審議について、荒木会長からは、
①今回扱うテーマは、極めて多面的な視点があり、様々な課題も相互に複雑に関連し合い、かつ時間とともに状況が変化していく。だからこそ、地域に暮らす住民や基礎自治体である市町村にとってどうかという、住民自治、団体自治の現場目線で見ていただきたい。

②先入観なく、現場の声に耳を傾け、理解を深め、議論をしていただくことを強く望む。各委員の先生方の熱心なご議論を議事録等で拝見し、なるほどと思う意見が数多く出されていることは大変うれしく思う。一方で、これは、大変不幸なことであるが、自治体戦略2040構想に対する強い違和感があるなかで、地制調がスタートした。圏域マネジメントと行政のスタンダード化、二層制の柔軟化、スマート自治体への転換などには懸念も多く、上からの一方的な押し付けには強い警戒感を持つ。我々町村長の中には、大変失礼な言い方になるかもしれないが、霞が関や東京をベースにする方々に、果たして地方の本当の現場が皮膚感覚で分かるのだろうかと厳しく指摘する声もある。奈良県川上村の栗山村長のヒアリングがあったかと思うが、例えば、公・共・私のベストミックスなども、町村では当たり前の日常である。地域地域で多様に展開されている取組を制度の枠にはめるのは本末転倒である。

③無理やり、何か成果を出さなくては、制度をつくらなくてはという姿勢はぜひとらないでいただきたい。今まさに、地方創生や地域の再生・活性化に町村は懸命に取り組んでいる。2040年が2年後、3年後に来るわけではない。あたりまえであるが、2040年がゴールではなく、その先も地域の未来は続いていく。東日本大震災や熊本地震、各地の大規模災害で被災した市町村も、人口減少はじめ、暮らし・地域産業に関わる課題が山積しているが、自分たちは希望と目標があるから頑張れるのである。国からの押し付け、法律による強制では自治の現場は機能しない。市町村の行政運営について、画一的な制度への誘導は論外であり、むしろ大いに議論したうえで、「制度づくりはもう少し時間をかけて様子を見よう」となってもいいと考える。もちろん、今回のテーマは、各省庁の制度にも大きく関わり、地方創生をはじめとする地域政策の分野も大変重要である。各省庁に関わる様々な制度や規制を地域の現場目線で柔軟で使い勝手の良いものにしていくことは望んでいる。

④本質的に重要なことであるが、我々町村は、これからの国のあり方、地方のあり方として、地域地域の多様性を大切にし、分散しながらも、それぞれが多面的に連携協力し、新しい価値を生み出せる地域社会が豊かな国づくりだと考える。これは、私たちがかねてから主張する都市と農山漁村が共生する社会の実現、田園回帰や交流人口・関係人口への着目にも共通する理念である。我々町村は、人口規模万能主義、人口が大きければ行政運営も効率的でいいという考え方とは違う立場であることも強調しておく。大都市や拠点都市、圏域の中心都市への人・モノ・カネ・情報が集中する国土構造、効率化・標準化された仕組みやシステムを重視して、これからの地域社会を構築していこうとすることには反対する。これは、平成の大合併からの教訓でもある。-の4点の意見を述べました。

 また、併せて、「今後の審議について(案)」において「合併しなかった地域における行政サービスをどう持続可能なものとするのか」と記載されていることに対し、「非合併の地域のみ特出しした表現は何か意図があるのか。例えば、小規模自治体・条件不利地域自治体などの言い方でもいいのではないか」との指摘もしました。

意見を述べる荒木会長

▲意見を述べる荒木会長

 その他の地方六団体側委員や国会議員の委員からは、「合併しなかった地域ほど、住民が自らの地域をどう元気にするか、地域の将来を自分達の子供にどう引き継ぐのか、自分達が今果たすべき役割について、真剣に議論している。その結果、活性化した地域が沢山ある。一方、合併で行政サービスが大きく低下し、人口減少は止まらず、周辺地域が疲弊しているという話も聞く。あらためて平成の大合併の検証が必要なのではないか」、「連携においても自治体の自主性を尊重し、各々の自治体間で協議して作り上げたオーダーメイドに応えられる制度設計が必要なのではないか」、「行政サービスを自主的・総合的に実施する主体として市町村制度を維持すべきであり、広域連携においても、行政サービスの設計と実施方法の決定権は各自治体に残すべき」、「自治体のあり方を画一的に圏域スキームの中に当てはめていくのは望ましくない」、「東京一極集中だけでなく、地方におけるミニ一極集中も問題となっている」等の意見が出されました。

 さらに、荒木会長は、「町村は、人口4万人超から数百人まである。国全体では2040年が高齢者人口のピークとなるが、全国の多くの町村では人口減少、そして少子高齢化をはじめとする課題が何年も先行している。そのような課題先進地の町村が、どうやって課題を解決していくのか、後で2040年問題を抱える大都市の先例になる。小規模町村がどのような現状で、どうやって地域運営を行っているのか、現地をしっかりと見て頂いて、2040年問題について考えていただきたい」と強調しました。

 各委員からの意見を受け、市川会長は、「今後も常に現場・住民目線を大切にしながら議論していく。市町村合併についても、上手くいった所、そうでない所を我々は十分に認識しており、そのうえで検証も必要となってくる。今日の意見を踏まえ、まずは2040年から逆算する諸課題について、現状の課題と併せてもう一度深く追求し、その対応について審議を進めていきたい。その後に、圏域における地方公共団体のあり方、公・共・私のベストミックス、その他の必要な地方行政のあり方等について、諸課題を明確にした上で議論していく」と述べ、総会を閉会しました。

 

(注1)政府の第5期科学技術基本計画において提唱された、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」を指す

【参考資料】

資料 今後の審議について(案) [PDFファイル/155KB]

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