第2 地方公共団体と国との関係
(地方公共団体と国の役割の基本的あり方)
 地方公共団体及び国は、それぞれの機能と責任を明確に分かちつつ、国は国際社会の中における主権国家としての一貫性を必要とする事務、全国的に統一して処理すべき事務及び生命、安全等の基準の設定に関する事務に専念し、地方公共団体はその他の国内の行政に関する全ての事務を所掌するものとする。


(地方公共団体及び国の事務の範囲等)

(1)国が所掌する事務は、原則として、次に掲げる範囲のものに限定するものとする。
  1. 天皇及び皇室に関すること。
  2. 外交、防衛及び安全保障に関すること。
  3. 司法に関すること。
  4. 国政選挙に関すること。
  5. 通貨、公定歩合、民事及び刑事に関する基本ルール、公正取引の確保、金融、資本市場、貿易、物価の統制、工業規格、度量衡、知的所有権並びに郵便に関すること。
  6. 国籍、税関、出入国管理及び旅券に関すること。
  7. 海難審判、海上保安、航空保安その他の全国的な治安の維持に関すること。
  8. 全国の総合開発計画及び経済計画の策定に関すること。
  9. 公的年金、公的保険、労働基準、基本食糧の確保、資源・エネルギーの確保等に関すること。
  10. 全国的な電波監理及び気象業務に関すること。
  11. 全国的に影響を有する特に高度で専門的な科学・技術、学術・文化、環境対策等に関すること。
  12. 伝染病予防、薬品の規制、医療従事者の資格その他の人の生命、健康及び安全に関する基準、生活保護に関する基準、義務教育に関する基準等の設定に関すること。
  13. 国勢調査等の全国的な統計調査に関すること。
  14. 全国を対象とする骨格的かつ基幹的な交通・通信基盤施設の整備及び管理に関すること。
  15. 地方制度及び国と地方公共団体との間の基本的ルールに関すること。
  16. 国の機関の組織(内部管理を含む。)及び税財政に関すること。
(2)現行の機関委任事務制度は廃止し、地方公共団体の事務とするものとする。ただし、上記@に掲げる事務のうち、国政選挙、旅券等国の事務で、地方公共団体において執行することが国民の利便及び行政効率の面から望ましいものについては、国が地方公共団体に対して財源を付与した上、委任するものとする。

(3)地方公共団体と国との事務配分の見直しに伴い、国の出先機関の整理・統合を推進し、地方事務官制度を廃止するものとする。


(地方公共団体に対する国の関与のあり方等)
(1)地方公共団体に対する国の行政機関の関与は、必要最小限度のものとし、かつ、法律の明文の規定によって認められている場合にのみこれを行うことができる。
 この場合を除き、国の行政機関は、直接、間接を問わず、地方公共団体に対して関与をしてはならない。
(2)国は、上記@の地方公共団体に対する国の行政機関の関与の基本原則に則し、現行の関与に関する法令を見直すこととし、国の行政機関は、現在、法律の明文の規定に基づくことなく、要綱等により地方公共団体に対して関与しているものについては、直ちにこれを廃止するものとする。
(3)前項2Aの規定により、国の事務で地方公共団体に委任したものに係る執行を確保するために必要な手続については、「地方分権の推進に関する法律」(後出第8参照)において一元的に規定するものとする。
(4)
地方公共団体は、国の行政機関から受けた関与の内容について異議がある場合には、第5に規定する地方分権委員会に対して不服の申出をすることができる。

-目次-