岩手県住田町
2889号(2014年08月11日)
2011年5月初旬、住田町内に完成した木造の仮設住宅に、続々と入居者が引っ越してきました。東日本大震災後、およそ20日間ほどで着工された仮設住宅には、 同じ気仙地域の大船渡市や陸前高田市から避難してきた方々が多く見られました。震災前から農林水産業で連携を図ってきた両市が、津波の被害により壊滅的な状況だったため、 故郷から遠く離れずに避難生活を送ってもらおうと、住田町は仮設住宅の建設を決めたのでした。
木のぬくもりのある戸建ての仮設住宅
△上に戻る
震災以前から、町は国に対して、パネル工法による木造仮設住宅のための備蓄を進言していました。東日本大震災に於いて、津波の被害がなかった内陸の町は、 仮設住宅を建設しやすい状況だったため、国からの指示を待つことなく、町の独断でこの事業に着手したのです。これまでに実証された詳細なデータや設計図を元に、 約1カ月で90棟ほどの戸建ての木造仮設住宅が完成しました。木のぬくもりのある住まいに、入居した方々からお礼の言葉と笑顔をいただくたびに、 建設に携わった者たちは誇りと自信を持つことができました。このことがあり、町が提案する木造住宅に対して興味を持ってくださる方が増えたことも、町にとっては大きなことでした。 斜陽産業と言われて久しい林業に光が射したようにさえ思えました。
△上に戻る
町は以前から、森林エネルギーとして燃料となる、端材や木屑などを圧縮して作る木質ペレットの製造に力を入れてきました。震災当時、 それまで製材をお願いしていた町外の工場が被災したため、出荷のできる木材が限られてしまい、あらためて木質バイオマスへの取り組み強化に乗り出すことになりました。 山林の伐採の際に放置されていた利用価値の低い木材などを活用する方法とその需要拡大の取り組みを始めたのです。有効な森林エネルギーも消費できる場所がなければ、発展しません。 木質ペレットストーブの認知度アップや大きなボイラーを使用する施設への営業など、あらゆる可能性を求めて、できることから始めていきました。 木質バイオマスを活用する設備の初期投資がまだまだ高価なため、爆発的な好展開は望めませんが、将来性を信じて、町はこれからも取り組んでいきます。
仮設ではなく、本住まいとしての木造住宅の魅力を知ってもらう見学会も開きました
△上に戻る
老朽化を理由に、より防災に強い施設をと計画され、まもなく完成となる町の新庁舎。全体の約80%を町産材や町内の業者が製造、加工したもので占めています。 木造2階建ての新庁舎には、有事の際にすぐに対策を取ったり、避難所として場所を提供できるようにと様々な工夫を凝らしました。あれほどの大きな震災がなければ、町の大切な宝、 財産である森林の利用価値に幅広く、深く気づき、積極的な取り組みに着手するのに、もう少し時間がかかったかもしれません。今は、新事業や新たな人材雇用に発展できるよう、そして、 後世に残していけるよう、模索しながらも進んでいこうと考えています。
新庁舎の4隅に使われる「象徴木」となる地元産スギは、
たくさんの方々に磨いていただきました
△上に戻る