『シリーズ田園回帰』の第4巻は、「交響する都市と農山村」がタイトル。文字通り響き合い交わり合うことから生み出される新たな「対流」の形を描いている。
3つのパート―1「農山村が開く、都市が開く」、2「都市と農山村を往来する若者」、3「都市と農山村を取り結ぶ」が、「交響」することの意味を解きほぐす。
38年も前から秋田への「学習旅行」を続ける東京都の私立中学校。生徒の心を揺さぶる体験や真剣な大人との出会いは双方に何をもたらしたのか。 子宝日本一の町鹿児島県伊仙町で町役場職員となった東京出身の女性。子どもと帰省した際、小学生の娘から「なぜみんな挨拶しないのか」「なぜママが赤ちゃんを抱っこしているのに誰も席を譲らないのか」、 素直な疑問を突きつけられる事例を引き合いに、現代社会における子育ての価値と意味を問う。いくつかの地方で地域活動を経験し、東京の下町墨田区で青空市ヤッチャバを始めた若者。 東京にもあった限界集落や買物難民の姿に驚き、「かつてそこにあり、いま失われつつある暮らし」を取り戻そうと往来を続ける。このほか、愛媛県の離島でみかんを栽培しながらバンド活動をする若者、 農山村志向の若者を1年間、自治体を窓口に地域の集落でで活動する事業を20年以上も実施しているNPOなど、都市と農山村の関係を対立や対峙を乗り越え結び直そうと考え、行動する人々が登場する。
都市と農山村の連携は、自治体レベルでも様々な取組が行われているが、その多くは人の往来を通じた交流にとどまっており、モノ・カネ・情報の大きな「対流」は多くないとする。 必要なことは、多様な人が集う「場」と「関係」の構築だと指摘する。人間関係の希薄化や、社会の中でつながりを持てない人々が生み出される現代都市社会への素朴な疑問に対する、 局面打開の糸口が見えてくる。