私たち日本人には耳慣れないかもしれないアグロエコロジーという言葉。いのちと生態系を守る農業・社会運動・哲学として、急速に世界の注目を集めている。その第一人者であるピエール・ラビ氏の語りおろしである。
本書は、「第1章 種を蒔く人の生涯」「第2章 エコロジーの深い考察」「第3章 現代と向き合う」「第4章 希望の種を蒔く」で構成されている。第3章にある一文を紹介しよう。「今日、多くの人が想像するのとは逆に、都市は農村にとても依存しています。(中略)都市と農村という二つの空間の有機的な結びつきをトータルに見直さなければ、巨大な都市地域が食料不足や深刻な状態に陥ることは、十分にあり得るでしょう。物質的な過剰は私たちを安心させてくれますが、それが継続するという現実的な根拠はありません。」
ラビ氏の言葉は、物質文明につかった私たちに警鐘を鳴らしはするが、決して批判一辺倒ではない。自然と向き合い、耕し、簡素に生き、地球の未来のために働きかける生き方は、時に温かく、時にユーモアを交え、私たちの心に響く。
本書は単なる農業や環境問題をテーマにした書籍ではない。「農の営み」から発せられるメッセージには、心豊かに暮らすヒントがつまっている。