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『明るい公務員講座』

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年3月21日

『明るい公務員講座』

時事通信社刊 岡本 全勝 著
定価(1500円+税)

明るい公務員

 職場でスリッパをはいているのはおかしい。役所ではお客さんをエレベーターホールまで送っていかない。  

 本書は基本に立ち返り、「役人の作法」を徹底的に説いている。総務省キャリア官僚で、県庁事務員から事務次官(復興庁)まで務めた著者が、公務員生活38年の体験を基に書き上げた「仕事の本」だ。 

 本書には徹底した「合理主義」と、暖かな「人情」が同居する。

 まず、「合理主義」。  

 著者は会議が嫌いだという。「仕事場の敵だとさえ思っています」「時間の浪費である会議が多い…」。資料配布とメールでの意見交換で済む会議、目的が不明確な会議がたくさんある。意思決定なのか、意見交換なのか目的をはっきりする。終わりの時間を決める。 

 超勤問題については「手を抜く」ことも提示する。「100点満点を目指すのをやめましょう。80点を目指してください。多くの仕事で、残り20点を取ろうとすると、80点を取ることに費やした以上の労力が必要になるのです」。

 文書作成術は出色だ。報告書は1枚にまとめる。項目は3つまで。人間の脳は1、2、3の次は「たくさん」。4つ以上書くと上司の頭には何も残らない。書いた文をいちど英語に訳してみる。主語、目的語を考えることになる。  

 「人情」では、若い職員の悩みについて強い思い入れを示す。 

 「あなたは仕事に悩んでいると思っていますが、実は人間関係で悩んでいるのです」。

 若い日に「仕事恐怖症」になった自らの体験を打ち明ける。報告書をまとめて上司に提出したが、何度説明しても了解してもらえない。先輩が心配して飲み屋に呼び出してくれ、話したことで前に進めた。「特効薬は相談すること。常備薬は友人や先輩です」。

 「(上司とうまくいかない職員の話を)よくよく聞くと『上司が間違っているのでしょうか、私が正しいのでしょうか、どちらなのでしょう』と言っているように聞こえる」。  

 「(若い時は)話を聞きながら腹が立って、目の前の茶わんを投げつけたいと思ったことが、たびたびありました。その時は、ぐっとこらえて、テーブルの下で指を折って10数えました」。

 本書の明るい筆致とユーモアからは、仕事や人生を楽しむ著者の生き方が伝わってくる。