『シリーズ田園回帰』の第5巻は、地域をベースに活躍する「新しい仕事を創る若者たち」に焦点を当てる。千葉で古民家のリノベーションにかかわる大学関係者や建築家、 島根の過疎地域でビジネスコンテストを実施する中間支援団体、和歌山で本屋とカフェとパン屋を山村の廃校で始めた若者、岡山の山村で単身者を受け入れるシェアハウスを開設した若者など十数人の書き手が登場、 人口や財政・経済指標では表せない、生き生きとしたいまの地域の動きを取り上げている。多彩な事例に共通するのは、柔軟性と多様性に根ざした地域との関わりである。 その関わりを「なりわい」へと変換する過程を読み進めていると、都市の否定でもない、表層的な農山村称賛でもない、自己実現と地域の課題解決を重ね合わせる、新たなライフスタイルの提案集になっていることに気づく。
若者たちの活躍に焦点を当てるその先に像を結ぶのは、ローカルに生き、ソーシャルに働く場所を提供する地域の新たな可能性である。こんなやり方、視点もあるのかと目から鱗が落ちること請け合いである。