岐阜県の山村の役場に吏員として奉職し、助役を最後に退職した筆者の地方自治に携わった48年間を綴った本である。
昭和26年、中学を卒業した筆者の大道氏は、岐阜県大野郡丹生川村役場に就職。農林課長、税務課長、建設課長、総務課長などを歴任し、平成元年収入役に、翌年助役に就任する。以来平成11年に助役を退任するまで48年間、まさに山あり谷ありの人生が、時に緊迫感を伴い、時にユーモアを交えて語られていく。
また役場での仕事だけではなく、幼少時の想い出や退職後の充実した日々の生活にも触れており、読後ほのぼのとした気持ちになれる1冊である。
現在、丹生川村は「平成の合併」で高山市に編入されており、旧村の歩みを残す上でも貴重な資料となっている。
本書の帯に「日本のどこかで今日も奮闘を続ける、地方自治体の吏員に本書を捧げる」とある。時代の閉塞感と地方の疲弊の度合いが日々高まりつつある今日、少し目先を変えて、戦後日本の山村の近代化を担ってきた役場職員の人生に触れてみるのも良いかもしれない。