本書は、一貫して東日本大震災から立ち上がる地域の姿を捉え続けている「震災復興と地域産業」シリーズの第5弾。
今回のテーマは岩手県南三陸町。壊滅的な被害を蒙った同町では、被災からわずか1ヶ月半後には、「復興市」が立ち上がった。
本書は、地域産業研究の第一人者の手による実態調査報告であるが、漁師や水産加工業経営者、女性グループ、農家の人々などが写真と共に実名で登場する。 それぞれの取組が、時折震災前の様子を振り返りながら、課題や展望とともに丁寧に、そして生き生きと描かれている。ただし、本書は南三陸町の特別なモデルを綴っているのではない。 壊滅的な震災被害から立ち上がる、小さなまちに暮らす人々の懸命の取組と各々の生き様を通して、小規模自治体の未来像の構想を試みている。 平時からの地域活性を意識した活動の継続が、非常事態後の素早い対応につながったという分析は、南三陸町にとどまらない、今回の震災から学ぶ最大の教訓であろう。 手に取った読者が、自らの地域と重ね合わせるとき、本書は、いかなる困難も乗り越えられる勇気と底力が、地域には宿っていることを教えてくれるであろう。