小田切 徳美 著
農山漁村文化協会・刊 2,420円(税込)
我が国の人口減少プロセスの中で、農山漁村(以下、農村)はその先頭に立つことから、しばしば「消滅」や「撤退」という議論の対象となる地域である。他方で、農村での「地域づくり」と呼ばれる内発的発展の取り組みは、「人口減少下でも地域で幸せに住み続ける」ための活動という意義があり、農村の後を追い人口減少が進む都市部のモデルともされている。
本書では、そのような危機と再生の両面で我が国の地域を代表する現代の農村における問題を、「課題地域」、「価値地域」、「隔絶地域」という3つの課題の重層化であると捉え、その課題を乗り越えることが農村の持続的な発展の条件として、そのために何をするべきか、先行する地域の事例を交えながら明らかにしている。
都市部に人が集まって暮らすことが人口減少に対する適応策であるという「多極集住論」や「農村たたみ論」に対抗し、「持続的低密度居住構想」の妥当性を複合的な視点から冷静に論じるとともに、「にぎやかな過疎」の実現を展望している。