筑波書房 小田切 徳美 尾原 浩子 著
定価1400円(税別)
著者は研究者の小田切氏とジャーナリストの尾原氏。肩書も世代も異なるが、日々農山村を訪ね、地域の声を拾い上げる「歩き屋」という共通点を持つ両氏が、地域づくりのリアルな取り組みをとらえ、地域を諦めずに地道な取り組みを続けている人々に焦点を当てる。
バブル崩壊後の平成不況や少子高齢化、過疎化、市町村合併などにより、農山村はコミュニティと経済の危機に直面した。そのような中、現場では地域を諦めない人々による地域づくり活動が日々行われてきた。都市で語られる「失われた20年」は、農山村にとっては「希望に向けた20年」でもあったのだ。
しかしながら、こうした取り組みが、十分認識されないまま政策論議は進行し、「地方消滅」という強烈なインパクトが地域住民の気力を奪う実態もみられる。
このような状況に警鐘を鳴らしつつ、農業からコミュニティ、仕事、人材、学校、JAに至るまで、いくつかの具体的な政策を取り上げ、農山村が持つ諸課題に対し建設的な問題提起を行う。現場の実態を浮き彫りにする「歩き屋」によるルポルタージュは、政策を点検し、持続可能な地域の実現に向けた次の一手を考える大切な情報を提供してくれる。読みやすくコンパクトな体裁は、勉強会や座談会など様々な場面で活用できるであろう。