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宮崎県国富町/地域資源を活かした取り組み 「フィールドミュージアム創生事業」

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年1月27日

 

法華嶽公園(法華嶽薬師寺境内)からの初日の出

法華嶽公園(法華嶽薬師寺境内)からの初日の​出


宮崎県国富町

3107号(2020年1月27日) 国富町長 中別府 尚文


国富町の沿革

国富町は、宮崎県のほぼ中央部に位置し、宮崎市から北西約16kmに位置する豊かな緑に囲まれた田園都市です。

地形は、東西22km、南北18km、南東から北西にわたって本庄、飯盛、高田原、川上、薩摩原、六野原の台地が広がっています。それらの台地を縫って、本庄川、深年川、後川、三名川、北俣川の5つの河川が東流し、その流域の優良な農地では、温暖多雨の気候風土を生かした暖地農業が展開されています。

中でも本庄台地は、町の中心市街地を形成し、台地の上を東西に走る県道26号線沿いに、多くの住宅や店舗、学校、病院、行政機関などが立ち並んでいます。

また、令和元年10月6日には国富スマートインターチェンジが開設され、今後は高速移動の利便性が高まり、人流・物流の活性化が期待されています。

スマートインターチェンジ(令和元年10月6日開通)

スマートインターチェンジ(令和元年10月6日開通)

フィールドミュージアム構想

フィールドミュージアム構想とは、町全体を屋根のない博物館と捉え、地域に点在する歴史・文化・自然等の資源を来訪者が歩いて巡る博物館活動のことです。

地域住民自身が地域や自分たちの暮らしを知り、興味を持つことで、来訪者の参加を促し、まちづくりの核となる様々な取り組みによって、地域資源の整備・活用や地域の活性化、新たな環境保全の考え方に繋げることを目的としています。

人口減少問題と地方創生

国富町の人口は、少子高齢化の進展により、2000年(平成12年)の22、367人をピークに減少し始め、2014年(平成26年)には、19、900人となり、ピーク時と比較して2、467人(△11・03%)減少していました。

こうした中、平成28年3月に人口減少問題に対応すべく「国富町まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、政策目標や施策の基本的方向、具体的な施策をとりまとめました。また、隣接する宮崎市とも「広域連携中枢都市圏」を形成し、圏域全体の将来像を描き、経済・住民の暮らしの安定のため、構成する市町における役割分担を規定した連携協約を締結しました。

これらの中には、基本目標として「魅力ある価値の創出」を掲げ、交流人口の拡大や新たな観光回遊ルートづくりのため、地域資源を活かした観光開発、国富らしさを活かした取り組みを推進することとなりました。

フィールドミュージアム創生事業に取り組むきっかけ

「国富町まち・ひと・しごと創生総合戦略」や宮崎市との「広域連携中枢都市圏」構想に規定した「魅力ある価値の創出」を実現するためには何ができるかを考えたとき、国富町には、豊かな自然、そこで展開されてきた歴史、多様な農作物、特産品、工芸など、多様な産業が存在し、各集落単位においては、石碑や水神、田の神などの有形資源に加え、祭事、伝承といった無形資源が、国富を知るためのストーリーを形づくっていることに気づきました。

フィールドミュージアムは、こうした多様な資源で構築される「国富らしさを体験する」ための観光プログラムであり、受け継がれてきた国富の暮らしを通じ、その風景の中に「国富らしさ」という価値を見出していく取り組みです。

また、その主体は地域住民であり、ある時は風景の中の一部としてその暮らしぶりを表現し、またある時は語り部となって、ストーリーを町内外へと発信していくこととしてはどうかと考えました。

生産量日本一のせんぎり大根

生産量日本一のせんぎり大根

本庄稲荷神社夏祭りヨイマカ

​本庄稲荷神社夏祭りヨイマカ

具体的な取り組み

最初に取り組んだのは、推進協議体の設立でした。国富町の将来にわたって持続的な取り組みに仕上げるには、将来を担う若者世代の参加が不可欠であることから、町内の若手商工会会員、農業経営者などに呼びかけ、フィールドミュージアム構想を理解してもらうことからはじめました。

その後、町民のみなさんに呼びかけワークショップを開催、「あなたが思う国富町の魅力は」というテーマで意見交換したところ、予想をはるかに上回る数百にも及ぶ埋もれた地域資源が提案されました。これをもとにストーリーの設定を行い、回遊ルートづくりを開始するとともに、町の魅力や歴史などを紹介してもらう「くにとみ史跡ガイドの会」の発足にも着手しました。

フィールドミュージアム町民参加のワークショップ

フィールドミュージアム町民参加のワークショップ

古墳の点在する町並み

​古墳の点在する町並み

暮らしとともにある古墳群

国富町には、一般住宅や学校・神社の敷地内に県・町指定の古墳群が点在し、全国的にも珍しい市街地が形成されています。

これは、太古の昔から人々が古墳とともに暮らしてきた証しであり、史跡や歴史を丁重に守ってきた結果です。

しかし、町民の多くが日常生活の中に古墳が存在していることが当たり前で、その価値や意味に気づいていませんでした。

そのため、フィールドミュージアム推進会議では、平成29年3月、本庄稲荷神社に古くから伝わる伝統行事「初午大祭」に併せ、「国富体感ミステリーツアー(この町の謎を解き明かせ!)」を実施し、くにとみ史跡ガイドの会がメインキャストとなり、町内外の多くのみなさんに国富町の歴史や隠れた魅力、古墳に関する知識を広めるプログラムを実施しました。

はじめての取り組みであり、不安と期待の入り混じる中ではありましたが、予定していた参加者数を大きく上回り、途中で受付を終了するほどの大盛況で、参加者からも「国富に住んでいるが、初めて知った」、「国富町にとても興味を持った」、「またこのようなプログラムを開催してほしい」などの声が寄せられ、国富町の魅力の発信に大いに貢献しました。

住民主導のまちづくりの気運の高まり

「国富体感ミステリーツアー」に引き続き、平成31年2月には「法華嶽満喫ミステリーツアー」を実施し、町内にとどまらず、県外・海外のお客様にも訪れていただいたほか、中高校生や一般ボランティアなど多くのスタッフの参加も実現しました。

また、このプログラムの実施の背景には、日本三大薬師のひとつである法華嶽薬師寺開山1300年大祭の実行委員会との連携がありました。

この実行委員会は、法華嶽薬師寺を中心とした地域活性化と歴史と文化の伝承、観光資源の開発を目的に地元住民が自ら発足し、国富町のフィールドミュージアム構想にも賛同いただき、積極的な活動を行っておられます。

このように、個々の住民や団体が自ら地域を見直し、協力してまちづくりに参加する気運が高まってきました。

フィールドミュージアムミステリーツアー

フィールドミュージアムミステリーツアー

法華嶽薬師寺1300年大祭

法華嶽薬師寺1300年大祭

国文祭・芸文祭みやざき2020に向けて

現在国富町では、2020年11月に宮崎県で開催される第35回国民文化祭・みやざき2020に向け、国富町フィールドミュージアム創生事業を行うための準備作業を進めています。

本庄市街地に点在する古墳・史跡などを巡りながら、食や特産品にも触れていただき、国富町の魅力を満喫していただくプログラム構成を検討中です。

このプログラムでは、くにとみ史跡ガイドの会はもちろんですが、新たに国富町商工会にも加わっていただき、観光と物産、地域経済の活性化、交流人口の増加や関係人口創出に繋げられればと考えています。

この取り組みが完成すれば、定期的な観光プログラムの開発に繋がるとともに、町内各地での資源開発並びにこれに携わる町民の裾野が広がることが期待できるのではないかと考えています。

今後の展開

フィールドミュージアムの取り組みは、単なる観光プログラムの開発にとどまるものではなく、先人から受け継いできた地域資源を大切にしながら後世に継承していくという意義も含まれています。

国富町フィールドミュージアムのテーマは『“国富景”を訪ねて~想い出の風景を切り取るように~』です。そこで生まれ、そこに住む人たちにとっての想い出の風景こそが、町内外に発信していくべき国富の魅力であると考えています。

ホッケストックミュージックフェスティバル

ホッケストックミュージックフェスティバル

今後は、こうした魅力に、多くの町民が気づくためのインナープロモーション(内的な広報展開)が重要であり、これにより郷土に誇りをもつ意識を醸成するとともに、「国富ブランド」の確立と「稼ぐ力」を高めていきたいと思います。​