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北海道当麻町/食育・木育・花育からつながる心育へ

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年1月7日

「とうま蟠龍まつり」の龍おどり

「とうま蟠龍まつり」の龍おどり


北海道当麻町

3065号(2019年1月7日)  当麻町長 菊川 健一


 

当麻町の概要

当麻町は、北海道の穀倉地帯といわれる上川振興局管内のほぼ中央、“北海道の屋根”大雪山連峰の麓に位置します。屯田兵により開拓の鍬が降ろされたのは明治26年。今年で開拓126年を迎えました。山と河川に囲まれ、肥沃で自然に恵まれた大地で農林業を中心に発展した町です。

農産物では“高級すいか”として全国に名高い「でんすけすいか」(今年の初競りでは55万円)をはじめ、近年、全国的に高い評価を受けている北海道米の中でも良食味米として知られる「当麻米」を筆頭に、北海道内トップクラスの生産量と販売額を誇るキュウリ、高品質なミニトマトなどが栽培されています。花卉では北海道特有の寒暖の差を生かし“夏バラ日本一”と市場の高い評価を受ける「大雪の薔薇」、町花であり長い歴史の中で技術を培ってきた「菊」の栽培が盛んです。

当麻町の特産品「でんすけすいか」

当麻町の特産品「でんすけすいか」

観光においては、龍伝説が眠り、世界的に珍しい管状鍾乳石(マカロニ鍾乳石)を見ることができる北海道指定天然記念物「当麻鐘乳洞」が有名です。また、市街中心部からさほど離れていない場所にある当麻山には、フィールドアスレチックをはじめキャンプ場、世界の昆虫館「パピヨンシャトー」など一日楽しめる施設が充実しています。さらに当麻山麓ではスポーツ設備が充実。球場、多目的グラウンド、テニスコート、パークゴルフ場、当麻発祥の競技「フィールドボール場」(ゴルフのピッチングウェッヂで公式テニスボールを打つゴルフルールのスポーツ)があり、休日には大会などで多くの人が訪れます。温浴施設「ヘルシーシャトー」も併設しており、スポーツで汗を流した人、キャンプ客など多くの人にご利用頂いています。

北海道指定天然記念物「当麻鐘乳洞」

北海道指定天然記念物「当麻鐘乳洞」

特産品では農産物の他に、冬期閉鎖中の当麻鐘乳道内で熟成させた日本酒「龍乃泉」を旭川市にある高砂酒造とともに開発。毎年4月末に販売を開始する同商品は、町内販売とふるさと納税返礼品という限定した販路にもかかわらず、8月には完売という好調な売れ行きを見せています。

イベントでは、8月上旬に「とうま蟠龍まつり」が行われます。龍伝説にちなんで、長崎くんちの蛇おどりからヒントを得た「龍おどり」や郷土芸能「蟠龍太鼓」をはじめとした様々な催し物で来場者を楽しませています。10月上旬には当麻産のそば粉を使用した新そばや新鮮な野菜が味わえる「新米・新そばまつり」、11月3日には町民が作り上げる文化の祭典「生涯学習フェスティバル」、2月上旬には町内の青年が行う「アイスキャンドルライトフェスティバル」など、町民の手による四季折々のイベントが見物です。

食育、木育、花育

当麻町では大自然の恵みを生かしたまちづくりを進めています。それが「食育、木育、花育からつながる心育」です。

当麻町の考える「食育」とは、我々が生きるためには“懸命に生きてきた大切な食の命を頂いている”ということを知り、食の大切さを学ぶこと。町が所有する総面積1.9haの圃場「田んぼの学校」では毎年、町内の小中学生が田植え、稲刈りを行っています。収穫したお米は子どもたちが1年間食べる給食米に全量充てられます。泥だらけになり腰の痛みを感じ、時には悪天候の中、田植え、稲刈りを行い、苦労して育てたお米を口にする。食の命を育てることで、食の大切さを学んでいます。

食育拠点「田んぼの学校」での田植えの様子

食育拠点「田んぼの学校」での田植えの様子

「木育」とは、北海道の厳しい環境の中を生き抜く樹木の命のたくましさを感じるとともに、我々の生活を豊かにする木に触れ、命の温もりを感じること。当麻山には約3kmの遊歩道「くるみなの散歩道」があり、誰もが気軽に樹木をはじめとした豊かな自然に触れることができ、森林浴を楽しめます。また、構造材に町産木材を100%活用した木育拠点施設「くるみなの木遊館」には、子どもたちが木製のおもちゃで遊べる木育広場があり、毎日多くの家族連れでにぎわっています。さらには木材加工機能も備わっており、来館者は木育広場からガラス越しに木材加工の様子を見学したり、実際に木工体験をすることができます。木育を具現化する取組として、中学生が町産木材を使用した学習机を自ら製作し、3年間の中学校生活で使用する活動も今年度スタートしました。

木育の拠点「くるみなの散歩道」

木育の拠点「くるみなの散歩道」

木育の拠点「くるみなの木遊館」

木育の拠点「くるみなの木遊館」

「花育」とは、可憐に咲き誇る花の鮮やかな彩りから花の命を感じ、その姿に心癒され、命の優しさに触れること。当麻山にある花育の拠点「くるみなの庭」には、100種以上の花と自然の地形を生かした遊具が設置され、大人も子どもも自然と触れ合うことのできるスペースとなっています。植えられている植物は全て多年草。芽が出て、花が咲き、枯れ、翌年にまた芽が出て…四季を通じて違った表情を見せる植物を目にすることで植物の命を感じ取ることができます。また、果物や野菜も植えられており、利用者は花を摘んだり、味を楽しんだり、自由に過ごせます。目で自然の美しさを感じ、耳で自然のささやきを聞き、肌で自然に触れ、鼻で自然の香りを感じ、口で自然の恵みを味わう。五感を生かして自然を感じる場所でもあります。

花育の拠点「くるみなの庭」

花育の拠点「くるみなの庭」

食育、木育、花育を通じて自然界に生きるものの生命を感じ、命を学ぶことで心を豊かに育てる「心育」。町ではさらに、自然の恵みあふれる当麻町に生まれたことを誇りに持つ“郷土愛”を育むことが大切であると考えます。

各拠点施設の名称に使用されている“くるみな”とはアイヌ語の「クル(人)」と「ミナ(笑う)」を組み合わせたもの。人を笑顔にする場所であり、“みんな(ミナ)が来る(クル)”場所であってほしいという願いを込めています。

町産木材の活用

当麻町の面積の約65%は山林。その中で民有林の約半分が人工林であり、その8割が林齢40年生となり伐期を迎えています。計画的に木を伐り、植栽と保育を行うことで“未来へ残す”山づくりを続けています。

伐期を迎えた木を有効に活用するために当麻町が行うのは町産木材の有効活用。一つは住宅への町産木材活用です。当麻町産の木材を使用して住宅を新築する場合に、最大250万円の補助をする「町産材活用促進事業補助金」や、元当麻町民が、町内の親族を支援するために当麻に戻り住宅を新築する場合に、最大450万円(町産木材を使用した場合)の補助をする「おかえりふるさと応援事業」、さらに、町内の企業はもとより新規で当麻町に出店しようとする起業者のために、店舗の新築・増改築費用最大450万円(町産木材を使用した場合)を補助する「とうまのお店元気事業」を行っています。

もう一つは公共施設への町産木材活用。公営住宅、子育て総合支援センターにはほぼ100%、公民館「まとまーる」、くるみなの木遊館、さらに今年完全完成を迎える役場新庁舎には町産木材を100%活用しています。

我々の生活に息づき、生活を豊かにしている木に触れることで命の温もりを感じる「木育」の理念が町産木材活用にも生かされています。

町産木材を100%使用した木造の「役場新庁舎」

町産木材を100%使用した木造の「役場新庁舎」

子育て環境の充実

当麻町では子育て環境の充実化にも力を入れています。中学生までの医療費無料化や一部予防接種の無料化、乳幼児健康診査の充実などに取り組む他、小中学生の修学旅行費全額補助や高校生への就学補助などオリジナルの支援策を行っています。また1歳から15歳の誕生日には毎年、図書をプレゼント。さらに1歳の誕生日には図書とともにバラの花束とお子さんのイラストが入った木製フレームを町長が直接お届けしています。

町産木材の補助や「食育、木育、花育」の推進により、着実に移住者が増えており、昨年販売を開始した造成宅地「ハートフルタウンとうま」は好調な売れ行きを見せています。

未来へのまちづくり

平成30年4月末の人口は6、537人。昭和30年当時の人口14、000人と比べると大幅に減少していますが、町産木材活用など定住促進の施策により、町外からの移住者も増えています。また「とうまのお店元気事業」など新規出店者を応援する事業により、町外から移住し起業する事業者も増加しています。

「食育、木育、花育」をはじめとした“人に優しいまちづくり”とともに、未来への資源づくりを進め、誰もが住みやすく、次代を担う子どもたちが夢を持てる町「当麻町」をこれからも作り続けます。