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和歌山県かつらぎ町/緑に囲まれた潤いと安らぎのふるさとづくり ~定住支援と住民が参画する協働のまちづくりの推進~

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年1月17日
かつらぎ町の町並みの写真

かつらぎ町の町並み


和歌山県かつらぎ町

2745号(2011年1月17日)  かつらぎ町長 山本 惠章


豊かな自然と歴史と文化

かつらぎ町は和歌山県北東部に位置し、人口1万9,065人(平成22年3月末)の行政規模となっています。また、平成17年10月1日に花園村と編入合併を行い、総面積151.73平方km、東西14.7㎞、南北29.3㎞と南北に長い町域となっています。また、町内の主要産業は、豊かな自然環境が整っていることから農林業、特に果樹栽培が主となっています。

紀の川周辺の市街地から果樹園が広がる丘陵地帯へ、さらに緑濃い山間部へと、本町の自然は多様で変化に富んでおり、そこに住む人々の生活を支えてきました。そして、それぞれの地域の自然に根ざした固有の歴史と文化を築いてきました。

本町は、世界遺産をはじめとした数多くの文化財を保有しています。また、四季折々の祭事、伝承文化も、その景観とともに保存されており、歴史的にも貴重な存在です。各地域の若者たちは、この伝承文化を積極的に継承し、そこに新しい命を吹き込んで発展させ、町おこしに取り組んでいます。町では、こうした活動を支援するとともに、その保存と継承に努めています。

『緑に囲まれた潤いと安らぎのふるさとづくり』の理念のもと、これらの資源を町の宝として、都市との交流、人と人とのふれあい、自然との調和の実現を目指しています。

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」へ

平成16年7月に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」である丹生都比売神社や高野山町石道は、特に歴史的に貴重な存在です。

丹生都比売神社は、高野山を含む紀伊山地北西部一帯の地主神を祀る神社であり、高野山との関係は深く、空海の金剛峯寺寺地選定にまつわる伝説の中に、丹生都比売神社の祭神である土地を譲った丹生明神、道案内をした高野明神が登場します。事実、金剛峯寺の壇上伽藍でも、丹生・高野両明神が地主神として祀られています。壮麗な朱塗りの楼門、きらびやかに装飾された本殿はいずれも国の重要文化財となっており、今年10月には、大正6年に焼失した中鳥居が再建され、より一層趣を増しました。

高野山町石道は、密教の仏尊を示す梵字と高野山に至る残りの町数が刻まれた町石が一町ごとに立ち並んでおり、信仰の道として多くの人が歩いています。また、町石道沿いにある丹生都比売神社への入口の一つである二ツ鳥居からは、のどかな田園風景を今に残す天野の里を望むことができます。

森林文化休養地域の写真

現代の桃源郷「森林文化休養地域」

丹生都比売神社の写真

世界遺産「丹生都比売神社」

天野の里の写真

二つの鳥居から望む「にほんの里100選」天野の里

400年の伝統「串柿の里四郷」を訪ねて

丹生都比売神社のある紀伊山地から、本町の中央を流れる紀の川を挟んだ向かい側に連なる和泉山脈には、400年も昔から串柿の特産地として現在に引き継がれている串柿の里四郷があります。

串柿は1本の細い竹串に10個の干し柿をさしたもので、三種の神器の一つである剣に見立てており、「新玉の年の初めに夫婦(2つずつ)揃って仲睦(6つ)まじく」と家族の和と幸を願い、お正月の縁起物とされています。

秋が深まり、串柿作りが始まると、農家の軒先や周囲の柿屋(干場)に柿の玉簾が一斉につるされ、山里は柿一色に染まります。その見事な風景は、晩秋の風物詩として全国に知られ、訪れる人々を楽しませています。

毎年11月に開催される串柿まつりでは、串柿生産量日本一である存在感をアピールし、郷土芸能である「四郷千両太鼓」も披露され、その伝統を後世に引き継いでいます。

四郷串柿の里四郷の写真

400年の伝統「四郷串柿の里四郷」

四郷千両太鼓の写真

胸に鳴り響く「四郷千両太鼓」

人口減少と地域活力の衰退

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」、400年の伝統「串柿の里四郷」、柿や桃、梨、ブドウ、リンゴなどの豊富なフルーツ、その他、豊かな自然と歴史と文化に恵まれた本町ですが、人口減少や少子高齢化が依然として進行しており、過疎地域自立促進特別措置法の改正に伴い平成22年4月に過疎の町として指定されました。最近3年間では年間300人(人口の約1.5%)を超えるペースで人口が減少しています。特に、21歳から39歳までの子どもを産み育てる世代が減少し、出生児数が減少する大きな要因となっています。働く場が町内に少ないため、農林業以外の大半は町外に働きに出ている状況で、より便利なところを求めて転出していく傾向にあると考えています。

このような状況により、本町の豊かな自然を守り育んでくれている農林業においては、農林産物の価格低迷や有害鳥獣の被害増加による収益性の低下、少子高齢化に伴う担い手の減少などにより、就業者が年々減少しています。就業者の減少により、耕作放棄地や荒廃した山林が増え地域活力が衰退する一因となっています。

人口減少と地域活力の衰退は、本町の将来に大きな影を落とすもので、重要な課題として解決に向かって対策を講じていかなくてはなりません。

キャラクターの画像

農林業振興とイメージキャラクター活用による地域活性化

本町の豊かな自然や農林業を守り育てていくためには、農林業所得の向上や安定化に取り組んでいく必要があります。その取り組みとして、友好提携都市の大阪府の守口市や和泉市と協力してアンテナショップの設置や観光情報の提供施設設置を行い、交流人口の増加を図っています。その他、地域産物直売所の設置や観光農園の推進、体験型観光の実施など観光と農業・林業の連携により農林業所得の向上や安定化に取り組んでいます。

また、町の活性化を図るため、平成19年に40歳以下の職員で構成する「次代のまちづくりプロジェクトチーム」を結成しました。そのプロジェクトチームから、町のPRやイメージアップを図るため、町のイメージキャラクターを作成したいと発案があり、平成20年に一般公募により町のイメージキャラクターが誕生しました。

町のイメージキャラクターは、四季折々に豊富な果物が生産されている本町のフルーツをモチーフとしていることから、特に農産物の販売促進に活用しており、各種イベント等では、着ぐるみを登場させることにより、集客効果を高めています。また、町内企業や町内団体等がイメージキャラクターを使用する際の利便性向上及びイメージキャラクターを総合的に活用した地域の活性化に努めています。

定住促進に向けて

人口減少に対し、若者の定住を促進するため、町では平成17年度より定住支援施策に取り組んでいます。平成17年度から平成21年度を第1期として取り組み、平成21年度に効果を省みて支援対象・支援期間を拡大し、平成22年度から平成26年度を第2期として取り組んでいます。取り組みとしては、主に若者を対象として、一定条件のもと賃貸住宅に入居したものに対して家賃を補助、3子以上の出産に対して奨励金を交付しています。平成17年から平成22年までの6年間の実績は、総申請世帯数115件、総世帯人口(定住人口)320名、内転入等による人口増加197名となっています。

平成21年には、独立行政法人雇用・能力開発機構より雇用促進住宅を購入し、定住促進住宅として再活用し、住居確保対策も行っています。

また、通勤圏の拡大を図るため、国道480号府県間トンネルや京奈和自動車道などの他市町村との連携道路の早急な整備を国・県に対し強く働きかけています。

その他、田舎暮らしや移住に対して県が主導する「田舎暮らし応援県わかやま推進会議」における市町村受け入れシステムを取り入れ、受入協議会及びワンストップパーソンを設置し、受け入れに向けた相談や情報提供の窓口を設置しています。

住民が参画する協働のまちづくり

まちづくりについて、様々なことに取り組んでいますが、町や地域が持続してあり続けるためには、住民が住み続けたい・住みたいと思う町であることが重要だと考えています。

平成16年の国と地方の三位一体の改革により、国庫補助金や地方交付税の削減が行われ、町財政は非常に厳しい状態になり、まず役場の中の無駄をなくすことから取り組みを始めました。限りある予算の中で、住民要望や行政課題の解消に取り組む必要性から、平成19年に行政の状況を説明し、住民の意見を聞くため行政懇談会を開催したところ、多くの厳しい意見を聴くこととなりました。

その様な中で、将来の町の活性化に向けた取り組みを求める意見を聞き、平成21年から自治区長をはじめとした住民の協力を得て住民が望んでいる地域の将来像や町の様々な活動について話し合いを開始する「住民が参画する協働のまちづくり」に取り組むこととしました。

その第一歩として、お互いに共通認識を持つことと住民が参加できる機会を作ることから取り組むため、平成21年度より行政と地域のパイプ役となる地区担当職員制度を導入し、全職員を町内会に配置しました。住民には一人ひとりがこれから5年後、10年後どのような生活を予定されているかを聞き、地域がどのような方向に進む傾向にあるのかを確認するため、住民アンケートを実施しました。今後、集計結果を基に住民が地域の現状に対しどのような考えを持っているのか、将来の地域の姿をどのように描いているのかを確認し、将来の地域づくりについて住民と職員が一緒になって考えていく取り組みを進めていきます。

「協働」という言葉は、様々な解釈や他市町村の取り組みがあり、わかりにくい部分がありますが、本町における「協働」は、あまり言葉にとらわれず、職員が行政として住民の思いや地域の思いを十分把握できるように、職員が積極的に地域に出向き、身近な問題として取り組むこととしています。

「住民が参画する協働のまちづくり」実現のためには、住民・行政双方とも意識改革が求められます。住民は行政運営に関心をもち、自らまちづくりに参加しようとする意識を、行政は協働のまちづくりを推進していくという意識が必要となります。住民から信頼される行政でなければ協働の関係は生まれません。まず、職員が意識を変えて、住民と行政のより良い協働関係を築いていかなければなりません。

本町が「住み続けたい町」、「住みたい町」になるよう住民が参画する協働のまちづくりを推進していきます。

 まちづくりのイメージ図の画像  

住民が参画する協働のまちづくり「イメージ図」