東洋大学国際学部国際地域学科教授 沼尾 波子(第3374号 令和8年9月28日)
人口約300人の東京都利島村には、村立の義務教育学校(小中学校)が1校あるが、高校はない。その義務教育学校で2026年度から、従来の固定担任制が廃止され、複数担任制、チーム担任制とメンター制が導入された。
1年生には安心できる大人との関係を重視して2名による担任を置き、2~5年生では複数の教員が関わる「チーム担任制」と「学年担当制」を採用する。そして6~9(中3)年生では、「チーム担任制」に加えて「メンター制」が導入された。
これまで一人の学級担任が担ってきた役割を、学校は二つに分けた。朝夕の学活や生活上の見守りなどは教員がチームで担う。一方、生活や学習、進路について個人として伴走するのがメンターである。重要なのは、そのメンターを学校が割り当てるのではなく、こども自身が選ぶことだ。安心して話せる、勉強について相談したい、進路や挑戦について話したい。何を重視するかも含めて自分で考え、選択する。メンターは学期ごとに替えることもできる。
大人が先回りして決めるのではなく、こども自身が「誰に相談するか」を選び、考え、必要なら選び直す。従来の担任との「縦」の関係だけでなく、自ら選んだ大人との「斜め」の関係をつくる試みでもあるという。そこには、村の教育大綱が掲げる「当事者意識」「自立」「一体感」を、日々の生活のなかで育てようという考えがある。
これは教員同士の関わり方も変えていく。担任だけが「自分のクラスの子」を抱えるのではなく、学校全体でこどもを見る。そこでは、教師も多様であり、「チーム学校」として、みんなでこどもを育てる仕組みづくりの模索がある。
小規模町村の学校は、児童生徒数が少ないからといって、教育の選択肢が限られるとはいえない。むしろ少人数だからこそ、一人ひとりの発達や希望に応じて、関わる大人や学びの形を柔軟に見直すこともできる。島ぐるみでこどもを見守り、互いに育ち学びあう利島の暮らしのなかで、学校や地域がこどもを育む環境を模索する。
村では、留学や島外との交流、デジタル機器を活用した学びの機会も手厚く用意される。その取組は、島を離れる選択となる「15の春」にむけて、自分で考え、決める力を育てることにも資する。こうした生きる力を育む学びの場づくりは、AI時代の教育を考えるうえでも示唆に富む。