被災者住宅再建支援制度について意見書を提出

 全国町村会は、全国市長会と共同でとりまとめた「被災者住宅再建支援制度(案)における『負担金』徴収に関する意見」を平成12年10月25日に自由民主党災害対策特別委員会・地震対策特別委員会合同会議へ提出するとともに、衆・参両院全議員に配布しました。
 この被災者住宅再建支援制度案については、超党派の国会議員による「自然災害から国民を守る国会議員の会」(=自然災害議連、原田昇左右会長)が、地震などで全半壊した住宅の再建を支援する制度を創設しようとするもので、去る10月19日に「被災者住宅再建支援法案」(仮称)の骨子が決定されたが、市町村にとって困難な問題を含んでいることから市長会と共同で意見書として提出したものです。
 なお、同法案の骨子によると再建支援に必要な財源は、全住宅所有者から固定資産税に上乗せして集める基金と国費で半分ずつ調達し、支援金は最高850万円まで支給するなどの内容となっています。


被災者住宅再建支援制度(案)における「負担金」徴収に関する意見

 市町村は直接住民と接触する最も身近な行政主体として、万一、自然災害が発生した場合にも、あらゆる分野で住民の生活を守らなければならない立場にあり、被災者の住宅再建も重要な問題であると考えている。
 しかしながら、今回「自然災害から国民を守る国会議員の会」で了承された被災者住宅再建支援法案(仮称)骨子(案)では、具体的な給付の制度や運用方法、膨大な事務費の負担方法など重要な事項でまだ明らかでないものが少なくない。
 特に問題なのは、支援金の財源とする「負担金」を市町村が固定資産税と併せて徴収するとしていることである。基本的な問題として固定資産税と異質のものを併せて徴収することの是非ということがあるが、実務上からも次のような重大な問題がある。地価下落の傾向の中で固定資産税の収入確保に苦心を重ねているのが市町村現場の実情であり、このことについて十分ご理解いただき、別途の方法について再検討されるよう要請する。

1.税か掛金かという「負担金」の基本的な性格が明らかではないが、給付制度の財源とする以上、「負担金」は給付に見合うものとなるようにしなければ国民の納得を得ることは難しい。
 そのためには、固定資産税が免税点未満となるため課税事務を要しない老朽または狭小の住宅にまで「負担金」を徴収すること、すべての家屋につき住宅部分の有無や面積を確認すること、支援金の給付制限の要件となる「負担金」の滞納等の収納状況を把握することなど、新たな事務が必要となる。これは固定資産税の事務とは全く別個の事務であり、大幅な増員など膨大な経費が必要となる。それは「負担金」の収入額に比し極めて大きなものとなる。

2.固定資産税については、近来、滞納の増加などのため、市町村税の中でも特に運営に苦心しているが、これに「負担金」を併せて徴収することになると、トラブルや滞納が一層増加し、一段と苦しい運営を強いられることが予想される。

3.仮に、給付制度との関連を考慮しないこととし、したがって前記一のような事務を行うことなく、例えば固定資産税の家屋分に一戸当たりの定額を上乗せするなどの単純な方法によって「負担金」を算出し、固定資産税と併せて徴収するとしても、国民からは固定資産税の増税と受けとめられ、納税者の理解協力を得ることが極めて難しく、本体の固定資産税の運営そのものにも大きな障害となる。財源確保という点からみれば、負担金をこのような固定資産税と併せて徴収する方法にこだわる必要はなく、むしろ相互扶助の観点に立って幅広く国民の負担を求める別途の方法を検討する方が適当であると考えられる。

4.市町村の歳入として「負担金」を徴収するためには、各市町村において関係条例を制定する必要があるかどうかの問題があると考えられるが、すべての市町村において条例制定を実現することは、現実問題として大きな困難がある。