全国町村会長あいさつ

 本日ここに、全国町村長大会を開催いたしましたところ、小泉内閣総理大臣、綿貫衆議院議長、井上参議院議長、片山総務大臣を始め関係大臣及び国会議員の諸先生方並びに、全国町村議会議長会会長におかれましては、政務極めてご多端の折にもかかわりませず御臨席を賜り、厚く御礼申し上げます。
 また、全国の町村長各位におかれましては、本大会のため遠路ご参集をいただき、心から感謝を申し上げます。
 始めに、本年九月に米国で発生した同時多発テロ事件において、日本人を含む多くの尊い人命が失われました。犠牲となられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げますとともに、小泉内閣総理大臣を始め政府におかれましては、一日も早い平和な国際社会の回復に、ご尽力頂きますようお願い申し上げます。
 私ども町村長といたしましても、惜しみない協力をする所存でございます。
 さて、二十一世紀の幕開けを迎えた本年、全国町村会は、お陰様をもちまして創立八十周年を迎えました。
 本会は、大正十年、全国の12,000余の町村長の代表600余名が参集して発足し、昭和二十二年の地方自治法の施行等を経て、戦後半世紀余りの年月を重ねて参りましたが、その間、町村自治をとりまく環境は、大きな変化を遂げ今日に至っております。
 申し上げるまでもなく、現在のわが国は、停滞を続ける経済や、深刻な雇用環境の悪化など先行きの不透明な状況が、人々の心にも暗い影を落とし、新世紀のスタートを弾みをもって駆け出したとは言えない状況にあります。
 さらに、国・地方を通ずる危機的な財政状況を背景とした地方歳出の抑制や、市町村合併にみられるような自治体の再編論議に接し、町村を取り巻く環境が、かつてないほど厳しい状況にあることを痛感せざるを得ません。
 このような状況の中、国土の七割を占める農山村地域に存在する2,552の町村は、食料の供給、人材の交流・輩出など、重要な国家的役割を果たしておりますが、その現状は、過疎・高齢化が進行し、このままでは国土の維持管理能力が低下し、国家の将来に重大な影響を及ぼすことが懸念されます。
 小泉総理大臣がおまとめになられた「骨太の方針」は、「地方活性化のため」として「都市と農山漁村の共生と対流」の重要性を掲げています。
 都市と地方を対立の構図で捉えるのではなく、それぞれが持たざる機能や果たし得ない役割を互いに補い、共生する関係を保ちつつ、対流を一層推進することが求められております。
 ところで、昨今、財政状況の著しい悪化等を背景に理念や目的を何ら示すことなく、市町村合併が強力に推進されております。それぞれの町村は、歴史的な経緯、文化、風土や自然的・地理的条件等が異なっており、合併は将来にわたる町村のあり方や住民生活に大きな影響を及ぼす事柄でありますので、関係町村の自主的な判断を尊重し、市町村合併を強制しないよう関係方面に強く要望しているところであります。「骨太の方針」が掲げる地方の「自立」と「活性化」を実現させるためには、都道府県も含めた地方全体の再編を検討し、国と地方のあるべきすがたを国民に示す必要があると考えます。
 一方、少子高齢化社会の到来は、膨らみ続ける老人医療費にみられるように、医療制度の将来に待ったなしの改革を迫っております。二十一世紀における安定的な医療の提供及び負担と給付の公平化のため、すべての国民に通じた医療制度の
一本化、段階的措置として財政の一本化を早急に実現させる必要があります。
 全国町村会では、このたび、「医療改革に関する意見」を日本医師会と連携してとりまとめたところであります。医療保険制度の健全な運営は、決して破綻させてはならないセーフティネットとして極めて重要であります。
 また現在、国会において審議されている地方自治法等の一部を改正する法律案には、住民監査請求制度の審査手続きの充実とともに、損害賠償等の被告を町村長や職員「個人」から「執行機関」にすることが含まれております。
 仄聞するところによりますと、本法律案は、今国会においてなお、成立の目処が立っていないとのことであります。我々町村長といたしましても一日も早い法案の成立を熱望するところであります。
 来月下旬には平成十四年度政府予算編成の時期を迎えることとなります。明年度の地方財政を巡る環境は、わが国経済の引き続く低迷等により、大変厳しい状況であり、地方税収が落ち込むことが予想されます。
 国から地方への税源移譲等による地方税源の強化と、町村にとってかけがえのない財源である地方交付税の総額確保を強く求めるものであります。
 我々町村長は、山積する困難な課題を真正面から受け止め、地方行政の最前線で地域社会の発展と住民の付託に応えるため、そして、何よりも地域を良くすることがこの国を良くするという信念に基づいて懸命に努力することをここに誓うものであります。
 終わりに臨み、本大会が所期の成果を収めますよう、皆様方の格別のご協力をお願い申し上げましてご挨拶といたします。
 

平成13年11月28日


全国町村会長 山本 文男