15. 介護保険制度の円滑な実施


 高齢化が著しく進行する我が国において、高齢者介護は現下の最大の課題であり、国、都道府県、市町村が一丸となって取り組むことが何よりも重要である。こうした中、町村においては昨年4月の介護保険制度施行以来、高齢者に対する必要かつ十分な介護の提供に懸命の努力を傾注しているところである。

 しかしながら、本来在宅介護中心であるべき制度が施設介護中心に傾斜するなど、今なお解決すべき課題が山積している。同制度を円滑かつ安定的に運営するためには、町村の意見を十分尊重することはもとより、国、都道府県がその役割を十分に果たすことが必要である。
 よって、国は次の事項を実現されたい。

1. 保険者について
(1) 保険給付について施設サービスが中心となっているが、介護保険制度本来の主旨のとおり、被保険者が要介護状態になった場合においても可能な限り居宅サービスが提供できるよう支援すること。

(2) 市町村が保険者となっているが、市町村が希望する場合には公平、公正かつ、より効果的な制度運営のため、都道府県単位の広域連合組織等での運営を推進すること。

2. 保険料について
(1) 低所得者に対する保険料については減免措置を講じるとともに、同措置にかかる国、都道府県による財政補填制度を創設すること。また、保険者の責に帰さない事由により高額な保険料となる場合については、実態に即した適切な措置を講じること。

(2) 保険料6段階制の周知をはかること。

(3) 事務の効率化のため、第1号保険料にかかる特別徴収の対象範囲を拡大すること。

(4) 介護保険料の上乗せ賦課にともなう、国民健康保険料(税)の収納率低下により生じる歳入欠陥については、全額国費により補填すること。

3. 財政調整について
(1) 国の負担25%のうち5%が調整財源とされているが、調整財源については25%の外枠とするとともに、算定基準に介護保険施設の病床数を加味すること。

(2) 財政安定化基金にかかる財源は国および都道府県の負担とすること。

4. 要介護認定について
(1) 公平、公正かつ迅速な認定を確実なものとするため、都道府県の責任において審査基準や不服に対する統一見解の提示および連絡調整を行う本部ならびに生活圏域を単位として審査判定を行う支部を設置すること。

(2) 認定審査会委員の研修および訪問調査員等の研修を充実すること。

(3) 認定審査会委員報酬および調査業務委託料については、実勢に応じた基準額を設定すること。

(4) 一次判定に用いるコンピューターソフトの精度向上をはかるとともに、痴呆症状の実態に即したソフト開発を行うこと。
 
(5) 認定更新の際、状態に変化が生じていない者については認定期間の有効期限を延長する等手続きの簡素化をはかること。

5. 介護報酬について
(1) 介護報酬の特別地域加算に係る影響額については、利用者負担を含め財政措置を講じること。

(2) 住宅改修等の申請を介護支援専門員が代行する場合の介護報酬を定めること。

6. 利用者負担について
 低所得者に対する利用料負担については減免措置を講じるとともに、同措置にかかる国、都道府県による財政補填制度を創設すること。

7. 家族介護に対する評価について
(1) 町村においては家族介護に依存する度合いが高いという現状に鑑み、現金給付の制度化を含め支援策を充実すること。

(2) 同居家族に対する訪問介護に係る基準について、時間規制の2分の1要件は削除すること。

8. サービス提供事業体等について
(1) 市町村において行う苦情処理事務については、円滑に処理できるよう支援体制を強化するとともに、十分な財政措置を講じること。

(2) 市町村特別給付については法律、政省令等によって関与しないこと。

9. 介護基盤の整備について
(1) 市町村介護保険事業計画に基づき介護サービスが適切に提供できるよう、介護基盤整備については人材の育成・確保等にかかる支援策を含め十分な財政措置を講じること。

(2) 介護療養型医療施設の入所定員数が町村の保険料水準に及ぼす影響が大きいことに鑑み、(療養型病床群は)全て医療保険の適用とすることを含め、その位置づけを基本的に見直すこと。また、見直しにあたっては町村の意見を十分尊重すること。

(3) 施設サービス対象者については要介護1から5までが対象とされているが、真に施設サービスが必要な者が入所可能となるよう、要介護4,5のみを対象とし、要介護1から3については家族構成等考慮の上、特に必要と認められる場合のみ入所可能とすること。

(4) 介護支援専門員の地域的偏在等についての対応策を講じるとともに、研修を充実すること。

10. 事務費について
 市町村における介護保険の事務の執行については、十分な財政措置を講じること。

11. その他
(1) 養護老人ホームおよびグループホーム等の施設入所者に対して、住所地特例を適用すること。

(2) 介護保険制度に関する国民の理解と協力を得るため、的確な広報を行うこと。