14.介護保険制度の円滑な実施

 

高齢化が著しく進行する我が国において、高齢者介護は現下の最大の課題であり、国、都道府県、市町村が一丸となって取り組むことが何よりも重要である。こうした中、介護保険制度が本年4月から施行され、町村においては高齢者に対する必要かつ十分な介護の提供に懸命の努力を傾注しているところである。しかしながら、今なお解決すべき課題が山積している。同制度を円滑かつ安定的に運営するためには、町村の意見を尊重することはもとより、国、都道府県がその役割を十分に果たすことが必要である。よって、国は次の事項を実現されたい。

1.保険者について

市町村が保険者となっているが、市町村が希望する場合には、公平、公正かつ、より効果的な制度運営のため、都道府県単位の広域連合組織等での運営を推進すること。

2.保険料について

(1)低所得者に対する保険料については、減免措置を講じるとともに、同措置にかかる国、都道府県による財政補填制度を創設すること。また、保険者の責に帰さない事由により高額な保険料となる場合については、実態に即した適切な措置を講じること。

(2)事務の効率化のため、第1号保険料にかかる特別徴収の対象範囲を拡大すること。

(3)介護保険料の上乗せ賦課に伴う、国民健康保険の収納低下により生じる歳入欠陥については、全額国費により補填すること。

3.財政調整について

(1)国の負担25%のうち5%が調整財源とされているが、調整財源については25%の外枠とし、必要額を措置すること。

(2)財政安定化基金にかかる財源は、国及び都道府県の負担とすること。

4.要介護認定について

(1)公平、公正かつ迅速な認定を確実なものとするため、都道府県の責任において審査基準や不服に対する統一見解の提示及び連絡調整を行う本部ならびに生活圏域を単位として審査判定を行う支部を設置すること。

(2)認定審査会委員の研修及び訪問調査員等の研修を充実すること。

(3)認定審査会委員報酬及び調査業務委託料については、実勢に応じた基準額を設定すること。

(4)一次判定に用いるコンピューターソフトの精度向上をはかるとともに、痴呆症状の実態に即したソフト開発を行うこと。

(5)認定更新の際、状態に変化が生じていない者については、認定期間の有効期限を延長する等手続きの簡素化を図ること。

5.介護報酬について

(1)介護報酬の特別地域加算に係る影響額については、利用者負担を含め財政措置を講じること。

(22)住宅改修等の申請を介護支援専門員が代行する場合の介護報酬を定めること。

6.利用者負担について

低所得者に対する利用料負担については、減免措置を講じるとともに、同措置にかかる国、都道府県による財政補填制度を創設すること。

7.家族介護に対する評価について

(1)町村においては家族介護に依存する度合いが高いという現状に鑑み、現金給付の制度化を含め、支援策を充実すること。

(2)同居家族に対する訪問介護に係る基準について、時間規制の2分の1要件は削除すること。

8.サービス提供事業体等について

(1)市町村において行う苦情処理事務については、円滑に処理できるよう支援体制を強化するとともに、十分な財政措置を講じること。

(2)市町村特別給付については、法律、政省令等によって関与しないこと。

9.介護基盤の整備について

(1)市町村介護保険事業計画に基づき、介護サービスが適切に提供できるよう、介護基盤整備については、人材の育成・確保等にかかる支援策を含め十分な財政措置を講じること。

(2)介護療養型医療施設の入所定員数が、市町村の保険料水準に及ぼす影響が大きいことに鑑み、都道府県が行う同医療施設の指定にあたっては、市町村介護保険事業計画が十分反映されるよう措置すること。

(3)介護支援専門員の地域的偏在等についての対応策を講じるとともに、研修を充実すること。

10.事務費について

市町村における介護保険の事務の執行については、十分な財政措置を講じること。

11.その他

(1)養護老人ホーム及びグループホーム等の施設入所者に対して、住所地特例を適用すること。

(2)訪問通所及び短期入所サービスの支給限度額一本化のシステム改修費用については、過重な負担とならないよう十分な財政措置を講じること。

(3)介護保険制度に関する国民の理解と協力を得るため、的確な広報を行うこと。

(4)第1号保険料の算定にあたっては、税情報等が必要となるため、関係法令において情報提供が可能となるよう対処すること。