〔解説〕平成15年度地方財政計画

地財規模2年連続の減少に


 政府は2月7日の閣議で平成15年度の地方財政計画を決めた。規模は総額86兆2,000億円で、前年度比1.5%減となった。厳しい財政状況を踏まえ歳出を抑制したためで、2年連続の前年度割れとなる。地方交付税も18兆600億円と、前年度比7.5%減となった。また、一般行政経費(単独)は11.1兆円と前年度比0.3%減に、投資的経費(単独)も14.8兆円、同5.5%減に抑制した。それでも財源不足は総額17.2兆円にのぼり、赤字地方債や減税補てん債などで補てん。この結果、平成15年度末の地方の借入金残高は199兆円に膨れ上がる。地方債依存度も17.5%(前年度14.4%)にアップする。一方、15年度の地方財政計画では、「三位一体の改革」の「芽出し」として、義務教育費国庫負担金(共済長期負担金等)や在宅福祉事業費補助金などが一般財源化され、その所要財源約2,300億円については8分の7を国が負担する暫定措置が盛り込まれた。市町村道整備の国庫補助負担金も原則廃止することとされ、その財源措置として自動車重量譲与税の譲与割合が引き上げられた。




 平成15年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状を踏まえ、歳出面では、歳出全般にわたる徹底した見直しで歳出総額の計画的な抑制を図る一方、当面の重要課題である@個性・工夫に満ちた魅力ある都市.地方の形成A循環型社会の構築.地球環境問題への対応B少子・高齢化対策ーなどに財源を重点的に配分。歳入面では、地方税負担の公平適正化の推進と地方交付税の所要額の確保を基本に、引き続き生じた大幅な財源不足については地方財政の運営に支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることを基本に策定した。
  この結果、地方財政計画の規模は総額86兆2,107億円、前年度比1.5%減となった。これまで増加を続けていた地財計画の規模は、平成1年度には0.0%増とするなど抑制基調に転換、14年度は1.9%減と初めて前年度割れとなり、2年連続のマイナス計画となった。財政健全化に向けて財源不足を圧縮するため歳出総額を抑制したのが要因。

◆「三位一体改革」の「芽出し」も

  財源不足は、@通常収支の不足13兆4,457億円A恒久的な減税実施に伴う減収額3兆2,437億円B先行減税に伴う減収額6,873億円−にのぼることになった。うち、通常収支の不足については、平成13年度の制度改正を踏まえて交付税特別会計借入金を廃止し、財源対策債(1兆8,400億円)を除く額は、国と地方が折半し、@国負担分は一般会計からの繰入れ5兆7、361億円、A地方負担分は臨時財政対策債(赤字地方債)5兆8,696億円−により補てんすることにした。
  恒久的な減税による地方税の減収については、@国のたばこ税の一部移譲1,250億円A法人税の交付税率の引き上げ3,463億円B地方特例交付金8,890億円ーで減収総額の4分の3を補てん、残る4分の1は減税補てん債4,534億円で補てんした。また、恒久的減税に伴う地方交付税の影響額1兆4,300億円については、交付税特別会計借入金で補てんし国.地方が折半で償還する。このほか、先行減税に伴う減収については、うち@地方税の減収2,410億円は減税補てん債で補てんし、後年度の地方税増収により償還A地方交付税の減収4,463億円は交付税特別会計借入金(地方負担)で補てんし、後年度の地方交付税原資の増収で償還−することにした。
  また、来年度の地方財政計画では、「三位一体の改革」の「芽出し」として義務教育費国庫負担金などの一般財源化が盛り込まれた。昨年6月に閣議決定された骨太方針第二弾に「国庫補助負担金と交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討し、改革案を今後1年を目途にとりまとめる」ことが盛り込まれたが、小泉首相が昨年夏、「来年度予算案に三位一体改革の芽出し」を盛り込むよう指示したことを受けて、具体化したもの。
  義務教育費国庫負担金については、教職員配置の弾力化など地方の自主性を拡大する措置と併せて共済長期負担金などの国庫負担(2,184億円)や、在宅福祉事業費補助金等(160億円)などを一般財源化。この国庫補助負担金の見直しに伴う所要財源2,344億円については、@地方特例交付金の増額(1,172億円)A地方交付税の増額(1,172億円)−で措置する。うち、地方交付税の増額は交付税特別会計借入金で措置し償還費の4分の3は国が負担する暫定措置を講じた。この結果、所要財源の8分の7は国が負担することになった。
  これまでの一般財源化については特段の財源措置は講じていないが、今回、「三位一体の改革」の「芽出し」として、新たな財源措置を講じたもの。総務省は、今後の本格的な「三位一体の改革」の入り口となる国庫補助負担金の削減についても、今回の暫定措置を基本スキームに対応していきたい考えだ。
  このほか、市町村道整備に係る国庫補助負担金の見直しなども盛り込まれた。具体的には、@市町村道整備に係る国庫補助負担金を縮減し補助負担対象範囲を限定(影響分450億円程度)A高速道路を整備するための国と地方の負担による新たな直轄事業の導入(同450億円)−については、自動車重量譲与税の譲与割合を現行の4分の1から3分の1に引き上げる税源移譲を行うほか、地方道路譲与税の都道府県・市町村間の配分を見直すことにした。

◆地方交付税は7.5%減に

  歳入の内訳をみると、地方税は32兆1,725億円で前年度比6.1%減となった。うち、市町村税は18兆7,386億円、前年度比4.9%減となっている。主な税目別の収入見込み額をみると、市町村民税は7兆3,977億円(前年度比6.8%減)、固定資産税は8兆7,610億円(同4.3%減)、軽自動車税1,415億円(同4.4%増)、市町村たばこ税8,689億円(同4.2%増)、入湯税266億円(同8.1%増)など。
  また、地方交付税は総額18兆693億円、前年度比7.5%減となった。法定率分10兆6,141億円に、一般会計の加算措置5兆7,785億円、交付税特別会計借入金(新規増)1兆9,515億円に交付税特会借入金支払利子分6,150億円などを差し引いたものだが、地方交付税と同様に使える臨時財政対策債(赤字地方債)を加えると、地方交付税総額は23兆9,389億円、前年度比5.1%増となる。
  このほか、地方特例交付金を1兆62億円、前年度比11.4%増を計上した。今回、同交付金を新たに第一種と第二種に分けた。第一種交付金は恒久的な減税に伴う地方税減収を補てんするため、地方税の代替財源として全ての都道府県.市町村に減収見込額を基礎に交付する。第二種交付金は、「三位一体の改革」に伴う国庫補助負担金の見直しに対応する財源措置として交付するもの。国勢調査人口を基礎に全都道府県・市町村に交付する。総額は、見直される国庫補助負担金の対象事業のうち引き続き地方で実施する必要があるものの地方一般財源の所要額の2分の1相当額としている。
  地方債総額は15兆718億円、前年度比19.2%増の高い伸びとなった。財源不足補てんのための交付税特会借入金の全廃に伴い臨時財政対策債が5兆8,696億円に膨れ上がったほか、減税補てん債6,944億円、財源対策債1兆8,400億円を発行したためで、臨時財政対策債を除くと前年度比2.3%減となる。なお、過疎対策事業は3,130億円(前年度比3.7%減)、辺地対策事業は620億円(同4.6%減)を計上している。
  この結果、一般財源総額は51兆9,419億円、前年度比6.1%減となり、一般財源比率も60.2%と前年度(63.2%)より3.0ポイント低下した。なお、臨時財政対策債を加えると67.1%となり、前年度(66.9%)より0.2ポイント上昇する。また、地方債依存度も17.5%と前年度(14.4%)より3.1ポイント上昇するが、臨時財政対策債を除くと10.7%と前年度(10.8%)より0.1ポイント低下することになる。また、地方債残高(15年度末)は138兆円(前年度比3.7%増)にのぼる。さらに、交付税特会借入金残高(同)も32兆円(同31兆円)にふくらむ。

地方単独事業は5.5%削減

  歳出の内訳をみると、給与関係費は総額23兆4,383億円で前年度比1.1%減とした。地財計画上、職員定数を1万368人純減(警察官増員を除き1万4,368人削減)させた。また、一般行政経費は総額21兆263億円、前年度比1.1%増とした。うち、国庫負担金等を伴うものは9兆8,414億円(前年度比2.7%増)、国庫負担金を伴わない単独は11兆1,849億円(同0.3%減)となっている。既定の行政経費を縮減する一方、魅力ある都市.地方の形成や循環型社会の構築、少子・高齢化対策に重点配分した。投資的経費も23兆2,868億円、前年度比5.3%減とした。うち、補助事業は8兆4,068億円(同5.0%減)、単独事業は14兆8,800億円(同5.5%減)となっている。一方、公債費は13兆7,673億円、前年度比2.5%増加した。うち、元金償還金は10兆1,643億円、利払費3兆は6,030億円となっている。このほか、維持補修費は1兆68億円で、前年度より0.6%減少した。
  地方単独事業のうちソフト分の主な事業をみると、社会福祉関係経費は4兆6,185億円を計上。うち、社会福祉系統経費(国庫負担金の一般財源化を含む)は4兆3,087億円、少子・高齢化対策経費(健康づくり推進事業、子育て支援事業、国民健康保険関係事業など)は3,098億円を計上。このほか、@教育・人材育成対策経費(私学振興対策、青少年健全育成対策など)5,293億円A環境対策経費(リサイクル推進事業など)3,131億円B地方活性化・都市再生対策経費(わがまちづくり支援事業、共生のまちづくり推進事業、都市再生関連対策、地域文化振興対策、国土保全対策、農山漁村対策・森林山村対策、生活交通確保対策、市町村合併推進事業など)8,170億円C情報化.科学技術振興対策経費(地域情報化推進事業、教育情報化対策など)4,123億円―を計上した。
  また、地方単独事業のハード分の主な事業をみると、@地域活性化事業5,600億円A合併特例事業2,200億円B防災対策事業1,300億円−を計上した。うち、地域活性化事業の内訳は、循環型社会形成事業500億円、少子.高齢化対策事業1,100億円、地域資源活用促進事業500億円、都市再生事業2,000億円、地域情報通信基盤整備事業1,500億円となっている。
  なお、歳出に占める割合は、給与関係経費が27.2%で前年度より0.1ポイント上昇、一般行政経費も24.4%で同0.6ポイント上昇、公債費は16.0%で同0.7ポイント上昇。その中で、投資的経費だけが27.0%と前年度より1.1ポイント低下している。
  このほか、地方公営企業関係施策(公営企業繰出金)として3兆2、052億円(前年度比0.4%減)を計上。また、地方自治体の公債費負担軽減のため、@公営企業金融公庫資金の公営企業債の借換え700億円(対象500団体程度)A高利の地方債に対する特別交付税措置300億円(同2,500団体程度)−を計上したほか、公債費負担の計画的な適正化に係る特別交付税措置も行う。

(自治日報社  井田  正夫)