全国町村会

「結い」の大切さ

民俗研究家 結城 登美雄(第3040号・平成30年5月21日)

経産省の調査によれば過疎化や高齢化を背景に商店の廃業が進み、七百万人もの買物弱者がいるという。私も15年ほど前、宮城県丸森町大張地区の人々から「不況のせいか村にあった最後の商店が廃業し、みんな買物難民になっちゃった。どうしたらよいか」と相談された。不安をかこつ住民に私が話したことは「沖縄には百年前から続く共同店という店がある。それは村民全員又は全戸が株を出資して設立した『みんなの店』である。価格は量販店のように安くはないが、共同店の利益は村民に還元される。例えば奨学金や医療費無利子融資制度、住民バス運行、製茶所・酒造工場、さらには発電所建設まで共同店の利益でまかなってきた。本土では行政がやるべき仕事を共同店の利潤で運営する、村民の、村民による、村民のための店である」などと話した。話を聞いた住民の反応は「お互い様の、結いの精神が店という形で今も生きてるなんて、沖縄の小さな村はたいしたもんだな」と感心しきりだった。そしてそれから1ヶ月後、住民8割が協力金を出資して、村民の期待にこたえる「なんでもや」という東北版共同店がオープンした。以来15年、地域の実情に応じて移動訪問販売を折り込みながら着実な活動を今も続けている。

私が沖縄から学んだものはそれだけではない。東日本大震災発生直後から復興支援に通ってくれている沖縄の友人が言う。「三陸沿岸の惨状は焦土と化した沖縄の戦後の風景とダブって見えます。ご承知の通り沖縄の歴史は近代になっても国家の光は当たらず、戦後は米軍に占領され、今でも基地の大半を押しつけられています。この苦難の道から沖縄が復興できた最大の力は政治や経済でなく、この土地をもう一度生きようとする住民の協同の力、すなわち互いに支え合う『ゆいまーる』の心と力です。東北の震災復興も同じではないか」と。私は今でもこの言葉を胸に刻み、ささやかながらも復興支援に関わっている。

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