全国町村会

人生に旅を! ―節目旅行のススメと地域の振興

公益財団法人日本交通公社理事 立教大学観光学部特任教授  梅川 智也
(第3038号・平成30年4月23日)

政府が観光立国から「観光先進国」への高みを目指そうとしている。「観光先進国」とは決して外国人旅行者を年間四千万人、六千万人にすることだけではない。海外を含めて多くの町や村を旅し、異なる地域の文化や伝統を理解した上で成立する“高いホスピタリティを持った国民”が多数存在する、そんな成熟した国、国民のことを意味するのではないか。インバウンドだけに偏ることなく、日本人の旅行と地域の振興に繋がるバランスの取れた観光政策が求められる。

人口減少・少子高齢社会のわが国では、旅行需要は増加しないと言われるが、人生100年時代、長い人生には山あり谷あり、楽しいこと苦しいこと、幸せなこと不幸なこと様々なことが起こりうる。そんな人生そのものが古くから旅に例えられてきた。また、可愛い子には旅をさせよ、と言われるように、人の成長と旅は密接な関係性が認められる。人は成長するために旅に出るのか、旅に出ることによって人は成長するのか、旅の意義はどちらも真なりであろう。

旅に出るきっかけを入学、卒業、就職、結婚、転職、退職、誕生日など人生の“節目”に求めるのは日本人だけではない。しかし、旧暦にみられるように季節の変化がはっきりし、伊勢詣でのように本音(自由な観光の旅)と建前(堅い参詣の旅)を使い分ける日本人には節目をいわば言い訳のようにして旅に出る傾向が極めて強い。

近年、若者の間では、“節目に旅に出る”から“旅に出ることで人生に節目を作る”、つまり希薄になった地縁、血縁など人間関係を円滑にするため、仲間と一緒に旅に出かけることで節目を作るという新たな知恵が生み出されているとも言われている。節目旅行の意味が大きく変わろうとしているとみることもでき、地域がこうした新たな需要に対応していくことも一考に値するのではないか。

既に地域では四国のお遍路さんや出雲の縁結び、“旬香周島”キャンペーンなどで節目旅行を取り込む沖縄など様々な工夫が進められている。平成を超えて次の時代に節目旅行は地域に何をもたらすのであろうか、そのキーワードは“豊かさ”であると期待したい。

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