全国町村会

解答よりも解法

福島大学教授 生源寺 眞一(第3035号・平成30年4月2日)

愛知県出身ということもあって、地元の中日新聞社が主催する農業賞の審査委員長を仰せつかっている。今年度で77回を数える歴史ある表彰イベントなのだが、時代の推移とともに審査の着眼点も変化してきた。現在の最大の特徴は、対象を40歳以下に絞り込んでいるところにある。伸び盛りの青年農業者を応援しようというわけだ。

東海・北陸を中心に9県から推薦される候補者の品目は実に多彩である。米麦作をはじめ、野菜や花や果樹も常連だ。酪農や養豚などの畜産分野で頑張る農業者もいる。加えて、自分で農産物を販売するケースや加工に取り組む事例も増えている。最前線を走る農業経営について、一律の基準で順位を決めることは不可能だと言ってよい。審査の難しさを毎年のように痛感している。

同時に、数多くの青年農業者に接することで、今日の農業経営にとって大切な要素を改めて認識させられたと感じている。すなわち、それぞれが置かれた異なる条件のもとで、いかにして最善の道筋を探り出し、その実現に向けてどんな手段を講じていくかという点に、経営の成功の鍵がある。単純で共通の道筋が与えられるわけではない。画一的な解答はないと言い換えてもよい。

農家の子弟か否かの違い。就農までの教育歴や職歴の違い。地域の立地環境の違い。こうした固有の条件のもとで、自分自身で答えを探求していくところに農業経営者としての醍醐味がある。解法こそが大切なのである。そして、解き方のレベルを左右するのは的確な情報源の確保であり、先入観を排した思考の一貫性である。むろん、順風満帆に進まないこともある。多様な選択肢を視野に入れた軌道修正も、解法の大切なパーツだと言ってよい。

優れた経営成果が受賞の前提条件である。けれども強調されるべきは、その成果に辿り着くまでの道筋である。受賞者は問題の解き方のモデルなのである。だからこそ、品目の異なる農業者はむろんのこと、農業を支える現場の関係者にも参考になるわけである。

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