全国町村会

「地域の仕事」を担う営農組織

農業ジャーナリスト・明治大学客員教授 榊田 みどり(第3003号・平成29年6月19日)

昨年度から全国町村会が始めた「地域農政未来塾」の主任講師を務めているが、昨夏、塾生の研修旅行として訪れた山形県飯豊町で興味深い営農組織に出会った。その名は(有)中津川FF。2002年に設立された特定農業法人だが、「FF」の意味を聞くと、「フューチャー・ファームの略」という。

どこが興味深いかというと、会社概要の「営業の目的」に、農産物生産販売・農産加工販売だけでなく、実に多くの業種がずらりと並んでいるのだ。林産業、建築工事、建設工事、大工工事、左官工事、とび・コンクリート工事、屋根工事、電気工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、水道施設工事、消防施設工事の請負・施工・設計…、まだまだある。

実際、本社事務所の1階には、農業機械だけでなく鉄工所のような機械が数多く置かれていて、“農業法人”のイメージを覆される。もちろん、農業経営面でも、いちごやアスパラ菜・プチヴェールなどの新規品目を導入し直販に力を入れているが、注目すべきは、それだけでなく、地域住民に必要とされる仕事を請け負う“地域のよろず便利屋”的な存在になっているという点だ。

同社のある中津川地区は、地元の方たちに言わせると「ダムの上の集落」。つまり、町の中心部から離れた飯豊山麓、広大な山林に囲まれた山間地。薪炭業が盛んだった大正時代、中津川村時代から、この山林を村の共有資源「中津川財産区」として住民管理を続けてきた。実は、同社の社長の鈴木文雄さんは「中津川財産区」管理委員長も務める地域リーダーのひとりである。

近年、とくに中山間地で、同社と同様に“地域生活を維持するために必要な仕事”を担う営農組織に出会う。地域の課題解決を探る中で、「農業法人=農業の担い手」という枠を超えた新たな組織の形が各地で生まれつつあるということだ。その意味でも「フューチャー・ファーム」という命名は、実に的を射ていると感心させられた旅だった。

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