全国町村会

集落に蓄積する課題

法政大学教授 岡崎 昌之(第2992号・平成29年3月6日)

秋田県最北の藤里町は、世界自然遺産のブナの原生林が広がる白神山地の南麓に位置する。鉄道、国道、コンビニはないが、ブナ林に育まれた豊かな水、鮎、まいたけ、りんどうなど、土地の恵みは多い。この藤里町の社会福祉協議会の活動は、かねてから高く評価されている。

若者支援として始まった就労支援事業は、進めるうちに町内に多くの引きこもりの人がいることが分かり、その解決こそ社会福祉協議会が取り組むべき課題であるとした。しかし民生委員が各家庭を訪問しても、引きこもり者の把握ができない。そこで同窓会幹事などから声掛けをして貰うなど、実態把握に努めた結果、平成22年の引きこもり者等訪問対象者は、10代から50代に及ぶ113人いることが分かった。

早速、町内にお食事処「こみっと」を開設し、簡単な調理、配膳などの業務に就いて貰うことをきっかけに、家から地域社会に出る機会を提供した。名産のまいたけを使ったキッシュ製造は、町民もお土産等として購入するなど、600万円を超える売り上げとなった。引きこもり者もこうした経験を積む中から、町内のりんどうやまいたけ栽培農家、建設会社等への就職へ繋がり、平成26年の引きこもり者は25人と減ってきた。だが支援情報提供対象者は依然として町内に160人を超えている。

表面的には穏やかな日常が流れる集落や地域社会ではあるが、目を凝らしてその実態を見つめると、福祉、医療をはじめ、子育てやいじめなど教育の問題、若者の雇用、空き家や火災など防災、環境等、沢山の課題がそこには蓄積している。しかもその多くが、生活の身近なところに存在し、今すぐにでも解決が望まれる緊急の課題となっている。

藤里町では多くの引きこもり者の存在が明らかとなったが、それは社会福祉協議会が真摯に地域社会や集落と向き合った結果である。そのことが実態の把握に繋がり、引きこもりから就労へと繋がる具体的な取り組みとなった。今後は、集落に仕事をつくり、若者の暮らしやすいまちづくり、それらを支援する人財づくりなど、町民すべてが生涯現役を目指すまちづくりの展開へと進んでいる。まさに“福祉の・まちづくり”から“福祉で・まちづくり”の実践へと展開している。

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